アメリカ・アメリカ 中上健次
1982年秋、著者は、世界の36カ国から作家が集まって3か月を過ごすアイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラム(IWP)に招聘された。
レガノミックスの時代である。レバノンで大量虐殺があり、フォークランド紛争が勃発し、コロンビアのガルシア・マルケスがノーベル賞を受賞した。
![]() 中上健次 角川文庫 1992年 |
著者は、IWPのプログラムは大した実りがないと判断し、ブルドーザーのようにまわりを巻き込んで突き進む。
文学の討論をするわけでもなく、病院のようなアパートでなまった英語て取り止めのないことを話すのが目的だと知れた。ペチャクチャしゃべるだけだ。
著者は、意欲的に自ら朗読会を催すと、ペチャクチャグループも参加するという。
著者はIWP参加者にインタヴューをはじめた。
インタヴューには、ヨイショのインタヴューと相手を怒らせて腹の中を覗くという方法があるという。インタヴューが5人目になるころには、インタヴューを待ち受けるようになった。
ちょうど、ガルシア・マルケスがノーベル賞を受賞したニュースが飛び込んできて、ラテン・アメリカの参加者たちは、マルケスの受賞に戸惑ったようだった。大家ボルヘスが受賞しないのはなぜかと訝った。
プログラムの最後には、IWPが用意した旅費付きの国内旅行を、車でやってみようと著者は思いつき、中南部アメリカを一人で駆け抜けた。
後半は、20世紀文学の巨匠ホルヘ・ルイス・ボルヘス、ジャマイカ出身のレゲエの先駆者ボブ・マーリーらへのインタビューが掲載されている。
ボルヘスとの対談は、著者がボルヘスを持ち上げたり、何かを引き出そうとしたり、懸命に立ち向かうのだが、ボルヘスは核心をジョークで受け流す。ボルヘスが著者を軽くあしらっているという印象である。
「書くこと」に真正面から取り組もうとするエネルギッシュな中上の本領が垣間見える。→人気ブログランキング
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