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ウイルスは生きている 中屋敷 均

妊婦にとって異物である胎児は妊婦の免疫システムの攻撃対象とはならない。それを可能にしているのが、胎盤の絨毛を取り囲むように存在する合法体性栄養膜という特殊な膜構造である。合胞体性栄養膜の形成に重要な役割を果たすシンシチンというタンパク質が、人のゲノムに潜むウイルスが持つ遺伝子に由来するという。
そうした例は他の生物にもみられる。

人の遺伝子に入り込んだウイルスに触れる。インフルエンザ・ウイルスついて語り、ウイルスの基本構造や転写のメカニズム、さらに生物に有利に働くウイルスについて触れる。最後は、結晶化するウイルスが生きているかどうかについての著者の見解が示される。
Image_20200617111201 ウイルスは生きている

中屋敷 均
講談社現代新書
2016年

ウイルスの形態については、ウイルス粒子を包むエンベロープを含めて「ウイルス粒子」と呼ぶ。エンベロープタンパク質がエンベロープに突き刺さるように配置されている。これが宿主のレセプターと結合し、エンベロープは細胞膜と同じ構造であり、宿主細胞にスムーズに侵入することができる。エンベロープはリン脂質からなる細胞膜でできているから、石鹸が効果がある。
インフルエンザ・ウイルスに石鹸が効果があり、胃腸炎を起こすノロウイルスはエンベロープを持たないため石鹸の効果がない。

世界はウイルスだらけだ。地上も海中も、生物の中にも生物のゲノムの中にもウイルスの遺伝子が潜んでいる。
巨大化したウイルスも、ウイルスと呼んでいいのか迷う半端なものまで、ウイルスのスペクトラムは広い。

最後に、ウイルスが生きているかどうかについて、「ガイア仮説」と絡めて考察する。ガイア理論は、ジェームズ・ラブロックにより1960年代に提唱された。地球全体を地球と生物が相互に関係しあうある種の巨大な生命体とみなす。
結晶化するウイルスが提示されて以来、ウイルスには生きていないとされる論調が多数派を占めるようになった。
DNA情報からなる「ヒト」としての「生」と、脳情報からなる人格を有した「人」としての「生」を分けて考えるべきだという。ふたつは密接な関係にあるが別のものだという論理を展開する。→人気ブログランキング

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