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公園に行かないか?火曜日に 柴崎友香

著者は、アイオワ大学で催されたインターナショナル・ライティング・プログラム(IWP)に招聘された。期間は2016年8月20日から10週間、参加した作家は33か国から37人。その約3か月間の滞在記を、エッセイ風の連作短編に仕上げた。
英語が堪能でない著者は、英語しか通用しない世界で、生活するだけで相当のエネルギーを費やす。ことさら言葉に思いがいき、英語と日本語の意味のギャップを掘り下げて考察する。

今までにIWPに参加した日本人は、中上健次(1982年、『アメリカ・アメリカ』)、水村美苗(2003年、『日本語が滅びる時』)、中島京子(2009年)、藤野可織(2017年)、そして著者。2018年には、滝口悠生が招聘され、『やがて忘れる過程の途中』というエッセイ集を書いている。(『』内はIWPについての著作)。
中上健次のなんでも吸収しようとする渇望感や、何かを発信しようするエネルギーは、本書にはない。そういう時代はとっくに終わったのだということを知らしめる。

Photo_20200623143801公園に行かないか?火曜日に

柴崎友香
新潮社
2018年

「公園に行かないか?火曜日に」
アメリカの町は自然に従うよりも合理性をとって碁盤の目のように道を通す。アイオワシティもその例に漏れず、急に登りになって直角に曲がったりする。
公園にいかないかと、ラインで誘いがあった。
ぬかるみもありけっこう長く歩いて森を抜けると、スキー場のようななだらかでのっぺりとした斜面に出た。終わりは見えないほど広かった。

「ホラー映画教室」
アイオワ大学は敷地の境界がない。大学が民間の家を買い上げて、町の中に大学の施設があったりする。デイ・ハウスの地下で『シャイニング』を上映するというので、香港から来たヴァージニアと出かけた。会場にたどり着く様子や、女性が夜道を歩くこと、ドアを開ける音など、タイトルらしい出来事が綴られる。

「It would be great!」
アイオワシティには鉄道の駅がないから町の中心をいつまでもつかめないという。
greatは、文脈によって微妙にニュアンスが違う。つまりgreatだけれど、ぜんぜんgreatじゃないことがある。

「とうもろこし畑の七面鳥」「ニューヨーク、2016年11月」「小さな町での暮らし/ここと、そこ」「1969年 1977年 1981年 1985年そして2016年」「ニューオリンズの幽霊たち」「わたしを野球に連れてって」「生存者たちと死者たちの名前」

「言葉 音楽 言葉」
ボブ・ディランのノーベル賞受賞が発表された。なんでボブ・ディラン? ほかにとるべき人がいるのにと、少し議論になった。
何かをするたびに、グレイト! パーフェクト! 大げさだと思っても、英語での生活に苦労している身にとっては、励まされるという奇妙な心境になる。→人気ブログランキング

やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記) /滝口悠生/NUMABOOKS/2019年
公園に行かないか?火曜日に/柴崎友香/新潮社/2018年
日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で/水村美苗/ちくま文庫/2015年
アメリカ・アメリカ/中上健次/角川文庫/1992年

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