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ペスト カミュ

ペストによってもたらされた不条理を目の当たりにした人びとはどう行動するのか。
1947年に発表されたカミュの第二作目である本書は、処女作『異邦人』や、カフカの『変身』や『審判』などとともに、不条理文学に分類される。

4月の朝、1匹の鼠の死から始まる。
やがて鼠の死体は町のそこら中で目につくようになり、鼠の死が収まると、高熱を発し鼠径部が腫れた病人が現れた。医師のリウーはアパートの門番が死ぬに至り、驚きが恐怖に変わった。そして惨劇が始まった。
最初は医師たちも市の執行者たちもペストと認めなかった。
しかし感染者と死者は増加の一途をたどり、ついには、人口20万人のアルジェリアの港町オランは封鎖された。

Image_20200613141901ペスト
アルベール・カミュ/宮崎峰雄
新潮文庫
1968年

患者は隔離するだけで、これといった治療法はない。累々と盛り上がった鼠径部のリンパ節を、除痛目的で切開するくらいだ。予防手段の血清は町に入ってこない。

6月には犠牲者が週1000名となった。
人びとはまったく妥協の余地のない状態のなかにあり、「折れ合う」とか「特典」とか「例外」とかいう言葉はまったく意味がなくなっていることを納得するまでには、多くの日数を要した。
人びとは多くの不都合を認めようとせず振る舞っていたが、やがて納得せざるをえないことに慣れていった。

埋葬は迅速に行われた。しかし、やがて食糧難の問題が起こってくると、人びとは作法通りに埋葬する要求すら考える暇がなくなっていった。そして最初は一人一人だったものが、やがて男用墓穴と女用墓穴が分かれていたが、ついには男も女も構わず折り重なるように投げ込まれ埋葬された。
8月には、埋葬場所が足りなくなった。
9月10月の2か月間、いつ果てるとも見えぬ状況が続いていた。

こうした先の見えない状況の中、疲れ切ったリウーは淡々と病人をトリアージし、鼠径部のリンパ節切開を行った。
牧師はペストが神の懲罰であり悔悛を説いた定形的なミサに見切りをつけ、病人の介護に手を貸す保健隊に入った。
町から脱出しようとあれこれ策略をめぐらしていた人物は、脱出を諦めた。
犯罪者はペスト禍にいれば、警察に逮捕されることもないと思った。

サッカー競技場の中は収容所になっていた。彼らは忘れ去られた人々であり、問題はそのことを彼らは知っていることだった。まるでそれは、死刑を待つ人びとの収容所の様相である。
こうして、常識が通用しない道理が通らない不条理が延々と続いたのである。→人気ブログランキング

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