女たちよ! 伊丹十三
男性優位の立ち位置から蘊蓄を披露する。アルコールの飲み方、食の様々、料理のノウハウ、車の運転、ファッション、男の生き様などについて、著者独特の視点で書かれている。
カバー装画、文中の差し込みイラストも著者が描いたもの。
1963年、単行本が出たときに買った。文庫になったときに再び買って、今、めくると黴臭くてくしゃみが立て続けに出た。それでもう一度買った。前の東京オリンピックの前年に刊行されたというのに、およそ時代の古さを感じさせない。
話の舞台は主にイギリスとフランスとイタリア、それから日本。アメリカはほぼ出てこない。英仏伊が礼賛され、アメリカは陽気だけれど大雑把というか雑、文化的に後進の国という位置づけだった。当時、アメリカはバカにされるようなネタが多い国だった。
女たちよ! 伊丹十三 新潮文庫 2005年 |
料理については、「男子厨房に入るべがらず」と男から料理を遠ざけ、またそれにあぐらをかいて家事の全般にわたり何もしなかった男どもを、料理への免罪符を与えた画期的な本だ。ならば、下働きから主役まで一切を本気で正統にやろうというのが本書のコンセプトだ。
例えば、超一流料理人にから伝授された包丁の持ち方、使い方を紹介する。
スパゲッティ・カルボナーラーはどこそこのスパゲッティ屋がうまいぞとかいう話は、日本におけるラーメン屋と同じで、労働者の食べ物であり、その調理法を紹介する。
イタリア料理は家庭料理の延長上にある。フランス料理や日本料理は家庭料理とのギャップがあると、比較料理論を披露する。いやー、納得する。
日本人の散髪したての頭はなぜみすぼらしのか。欧米人と後頭部の髪の生え方が違う。欧米人は後頭部の毛髪の生え際は高いが、日本人は低い。それで襟筋を刈り上げる。
軽妙洒脱、ユーモアがあって、えっそうなのなるほどと思わせる、何度読んでも面白い。→人気ブログランキング
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