ビール職人のレシピと推理 エリー・アレクザンダー
ビールの町ワシントン州レブンワースに映画クルーがやってきた。オクトーバー・フェストのドキュメンタリー映画を撮るという。オクトーバー・フェストには大勢の観光客が押し寄せる。およそ3週間にわたって、観光客は催し物に参加し、大いにビールを飲み、秋の恵みに舌鼓を打つのだ。
![]() エリー・アレクザンダー/越智睦 創元社推理文庫 2020年 |
オクトーバー・フェストの前日、ビール製造場兼パブ〈ニトロ〉の新作ビールの開栓記念パーティがはじまった。主人公のスローンは客の応対に余念がない。
俳優のミッチェルがマイクを持って客にインタヴューし、それをカメラマンに撮るように指示している。暴君のごとき振る舞いのミッチェルに映画クルーも周りの客たちも辟易としている。
スローンは里親の間を転々として育った。高校を卒業した後、アルバイトで生計を立ながらコミュニティ・ガレッジに通った。アルバイト先で出会ったのがクラウス夫妻。夫妻はスローンの鋭い味覚を見抜き、ビール醸造場の〈デア・ケラー〉で働かないかと誘った。スローンは〈デア・ケラー〉でその才能をいかんなく発揮した。やがて長男のマックと結婚し息子を生んだ。
ところが、最近マックが尻軽女と浮気をしたために、スローンはマックを家から追い出し、新興のナノブリュワリー〈ニトロ〉で、ギャレットの元で働いている(『ビール職人の醸造と推理』)。
夜になって、カメラクルーが〈ニトロ〉に再び現れた。
飲みすぎたミッチェルがロッジのオーナーのリサにクレームをつけた。
〈ニトロ〉を後にしたミッチェルが道で倒れて急死した。ミッチェルのファンクラブ会長だと名乗る若い女性のカットが、リサが殺したと叫ぶ。
検死の結果、デートレイプによく使われる薬が検出され、頭を強く打ったことが死因だという。
ミッチェルが予約したリサ所有のロッジは、めちゃくちゃに荒らされ異様な匂いがしていた。ミッチェル殺しの犯人捜査はマイヤーズ警察署長の手に委ねられたものの、スローンは独自に調べを進める。
本書にはミッチェル殺害の犯人探しとは別に、スローンの実の親探しのテーマがある。スローンの担当だったソーシャルワーカーの女性が現れ、スローンに関する資料から数百ページが消えていたと伝えた。こちらは次作に持ち越されるテーマだ。
前作と同様に本書では、ビール作りのノウハウが披露されている。ビールの製造過程で風味づけに、ポップ以外にもサクランボやリンゴやその他の素材が使われることを知った。→人気ブログランキング
【コージー・ミステリ】
ビール職人の醸造と推理/エリー・アレクザンダー(越智睦)/創元社推理文庫/2019年
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