パーキング・エリア テイラー・アダムス
読み出したら止まらない息つく暇がない本書のようなサスペンスを、和製英語でノンストップ・サスペンスというそうだ。本書は年末の翻訳ミステリ・ランキングでトップテンの上位にくい込むだろう。映画化も間違いなしだ。
クリスマスイブの前日、雪の降る中、母の膵臓癌の手術に駆けつけようと、女子大生のダービーが愛車のホンダ・シビックで、コロラドからユタに向った。途中、スリップしてボンネットから湯気が噴き出し、ワナパ・パーキング・エリアで足止めさせられた。パーキング・エリアの雪に埋もれたバンの中に、犬用ケージに少女が監禁されていた。ワナパとは小さい悪魔という意味だ。
パーキング・エリア テイラー・アダムス/東野さやか ハヤカワ・ミステリ文庫 2020年6月 ✳10 |
パーキング・エリアのビジターセンターに居合わせたのは、50代後半の獣医だというエド、その妻サンディ、ソルトレーク工科大学の学生だというアシュリー、それとイタチのような顔をした口呼吸のラーズの4名。
間の悪いことに、ダービーのiPhoneはメモリがあとわずかで、しかも山の中で電波環境が著しく悪いときている。
誰が誘拐犯なのか。パーキング・エリアに、除雪車がたどり着くまで6~8時間かかると、ラジオから途切れ途切れに聞こえた。新しい情報ではトレーラーが雪で滑って道路を塞ぐという事故が起こった。一晩、ビジターセンターに閉じ込められるということだ。
ダービーは両親の離婚が決まってから生まれた。母親との間は必ずしもうまくいっていない。それはさておき、ダービーはこうと決めたらいてもたってもいられない性分だ。
早とちりや、ドジを踏んだりして窮地に追い込まれることがあるけれども、ダービーは決意した。今夜のうちに、この場で、雪に閉ざされた小さなパーキング・エリアで、夜が明けて除雪車が到着する前に、自分の力でなんとかすると。
誰が何の目的で少女を監禁しているのか。次々に驚愕の真実が明らかになっていく。
撒き餌または布石あるいはマクガフィンが散りばめられている。そういうことだったのか、そう繋がっていたのか、そことそこが結びつくのか、死んだと思ったら死んでいなかったとか、ジェットコースターのようにストーリーが展開する。星10の面白さだ。→人気ブログランキング
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