ビール職人の醸造と推理 エリー・アレクザンダー
アメリカ・ワシントン州のレブンワースはビールの町。
1960年代に、レブンワースの主要な産業であった鉱業と材木産業が衰退したあと、町をクラフトビールの聖地にしようと町の人々が団結した。レブンワースを風光明媚な南ドイツのバイエルン地方の町に似せて再生するという考えを町民は受け入れた。
主人公のスローンは夫のマックとその両親とで、町で最大のビール製造場〈デア・ケラー〉を切盛りしていた。事務所のソファーで事務員の上に乗っかっているマックの裸の尻を目にしたスローンは、〈デア・ケラー〉の仕事から手を引き、夫を家から叩き出した。新規にオープンするビール製造所兼パブの〈ニトロ〉に勤めることにした。
〈ニトロ〉を始めようとするギャレットは、シアトルで会社勤めをしていて、大叔母からビール醸造所の建物を継いだばかりだった。レブンワースは人口2000人の小さな町だ。スローンの行動は町中の噂になる。
ビール職人の醸造と推理 エリー・アレクザンダー(越智睦) 創元社推理文庫 2019年 ✳︎9 |
〈ニトロ〉がオープンの日、レブンワースの町の多くの人々が訪れた。
マックが例の女を連れて現れた。そのせいで、〈ニトロ〉のグランドオープンは荒れた様相を呈した。
翌朝、スローンが、〈ニトロ〉に出向くと、マックのライターが床に落ちていた。発酵槽のタンクの中に〈ブルーインズ・ブルーイング〉のビール職人・エディが死体となって浮かんでいた。
エディは誰に殺され、なぜ遺体がタンクの中に投げ込まれたたのか?
犯人探しはさておいて、いろいろな種類のビールの醸造過程が詳細に書かれていて、ビール好きにはたまらない。読みながらついビールに手が伸びてしまう。ビールが2週間で出来上がるというのを知って、あまりの早さに驚いた。
本書は、「謎解き役が素人」、「容疑者が狭い範囲のコミュニティに属している」、「暴力表現を極力排除している」という、コージー・ミステリにぴったり当てはまる内容である。→人気ブログランキング
【コージー・ミステリ】
ビール職人の醸造と推理/エリー・アレクザンダー(越智睦)/創元社推理文庫/2019年
ビール職人のレシピと推理/エリー・アレクザンダー(越智睦)/創元社推理文庫/2020年
日曜の午後はミステリ作家とお茶を/ロバート・ロプレスティ(高山真由美)/創元推理文庫/2018年
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