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2020年8月21日 (金)

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか 町山智浩

著者は「リアル・アメリカの伝道師」と呼ばれ、アメリカに関する圧倒的な量の情報を日本に発信し続けている。本書は『週刊現代』の連載コラム『アメリカで味噌汁』を中心に、『サイゾー』『TVプロレス』『クロスビート』などのコラム102編を集めたものである。
文庫版あとがきで、著者は、「アメリカに住むということは、サーカスの見世物を最前列で見るようなもんだ」という、コメディアンのジョージ・カーリンの言葉を紹介している。サンフランシスコの湾を渡った向かいのバークレーに在住。
Photo_20200821142501キャプテン・アメリカはなぜ死んだか

町山智浩
文春文庫
2011年 10✳

アメリカは、ハチャメチャなことが日常的に起こっている国だ。両極端の考えの人がそれぞれ派手な動きをする。白人至上主義が引き起こす人種がらみの事件は尽きないし、宗教は暴走するし、何でもかんでも訴訟を起こす。精神の変調をきたしているやからが銃をぶっ放す。クスリやセックス絡みで暴力事件が起こる。アメリカにはカルト集団がうようよいて、それらが信じられない事件を引き起こす。本書では、そんなサーカスの出し物が次から次へと繰り出される。
本書の特徴は、事の発端となった背景や歴史など、一つのコラムにテンコ盛の情報が詰め込まれていることだ。さらに著者の一見軽いが痛烈な皮肉が込められる。

キャプテン・アメリカは日本人に馴染みが薄いが、コラム「キャプテン・アメリカはなぜ死んだか」で、著者はなにを語っているのか。
アメリカン・コミックのスーパーヒーローであるキャプテン・アメリカの死は、『USAトゥデイ』紙など全米各紙で事件として報じられた。その理由は、キャプテン・アメリカが政治的な存在だからだという。
1941年、真珠湾攻撃が始まると主人公のスティーヴン・ロジャースは軍に志願するが、ひ弱な体で不適格とされる。そこで、超兵士を作る人体実験のモルモットとなる。超兵士となったスティーヴは星条旗を身につけ、キャプテン・アメリカとして、ナチスや日本軍と戦う。大戦後、共産主義と戦うが、すぐにシリーズは休刊する。
1964年、20年間北極の氷の中に閉じ込められていたという設定で現代に蘇る。しかし1974年ニクソンが辞任すると、キャプテン・アメリカもコスチュームを脱いだ。そればかりかヒッピーのように髪を伸ばしノマド(祖国なき者)と名乗ってアメリカを放浪し始める。
結局、再びコスチュームを着たが、アメリカを愛するため政府と対決する。新米のスーパーヒーローと悪漢たちの戦いに一般人が巻き込まれて大惨事が起こり、連邦議会は「超人登録法」を可決した。2007年、スーパーヒーローをすべて政府の管理下に置く法律である。「超人登録法」は、ブッシュ政権のテロ取り締まりのため盗聴や拘束を合法化した「愛国法」のメタファーだ。体制側についたアイアンマンたちに敗れたキャプテンは反政府活動家として逮捕された上に、裁判所の階段で何者かに狙撃され死んでしまう。(07年9月)

真珠湾攻撃がキャプテンが生まれるきっかけだから、日本には受けが悪いわけだ。→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年

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