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2020年8月12日 (水)

月と六ペンス

本作品はゴーギャンの生涯を参考にしているが、ゴーギャンそのものではない。ゴーギャンを忘れて読んだほうがいいと、訳者があとがきで述べている。
Photo_20200812082301 月と6ペンス
サマセット・モーム/ 金原瑞人 訳
新潮文庫
2014年

若手の小説家が、今や天才画家と評価されるチャールズ・ストリックランドについて、本人に会って知り得たことや人づてに聞き及んだことをもとに、その半生を描いたという仕立て。

懇意にしている女流小説家に、ストリックランド夫人を紹介された。作家たちを招いてのパーティを開くことが多い夫人は、わたしの小説のファンだという。

夫のストリックランドは証券取引会社の仲買人をしていた。彼は奥さんと子供をおいて家を出ていった。結婚して17年だった。
夫人はわたしにパリに行って夫を取り戻して欲しいという。
ストリックランドには、一緒にいると噂された女性はおらず、家族を捨てたのは絵を描くためだけだという。妻子のことなど知ったことかと切り捨てた。そのことを夫人に伝えると悲しんだが、やがて夫人はタイピストの仕事で自立した。

それから5年経って、わたしはパリに住むことにした。以前、ローマで知り合った画家のストルーヴェにストリックランドのアパートに案内してもらった。をたずね、ストリックランドは相変わらず貧乏暮らしをして、絵を描いていた。ストルーヴェはストリックランドは天才だという。
ストリットランドがクリスマスを前にして病気になった。
ストルーヴェは自分の家で看病すると宣言したが、妻のブランチが強く反対した。なんとか妻を説得して、家に連れてきた。病気が治るまでに6週間かかった。

あれほどストリットランドを嫌っていたブランチが、彼と一緒に暮らすと家を出て行った。ところがストリットランドに愛情を受け入れてもらえないことで、ブランチは服毒自殺してしまう。ストルーヴは、ストリットランドが描いた妻の裸婦像を目にし、逆上した。しかし、その出来栄えはまごうかたなく本物だった。

ストリットランドと最後にあってから15年がすぎ、彼が死んでから9年も経っていた。ここからはタヒチで聞いた話だ。

ストリックランドは各地を転々としたあとに、タヒチにたどり着いた。タヒチの人にとって彼はいつも金に困っている港の労働者だった。
ホテルの女主人は、彼にアタという妻を斡旋した。ストリックランドは人里離れた奥地で暮らし、創作活動に励んだという。
ストリックランドはハンセン病に感染し、最期は医師のクートラが見届けた。彼の遺作は遺言によって燃やされたという。わたしは、クートラ医師の所有するストリックランドの果物の絵を見て恐ろしさを感じた。

ロンドンに帰ったわたしはストリックランド夫人に再会し、タヒチでのストリックランドのことを夫人とその息子に話した。アタとの息子の話は省略したが、その他すべてを伝えた。
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高校の英語の副読本にサマセット・モームの作品が使われたことがあった。レストランで支払いするときに、照明が暗く、紙に書かれた数字が見えるか見えないかであると書かれていた。爪の形についても触れられていた。そのふたつの場面が、頭に残っている。副読本は『月と六ペンス』から採用したと思っていたが、本書にそのような場面はなかった。『人間の絆』だったろうか。

月と6ペンス/サマセット・モーム/金原瑞人/新潮文庫/2014年
ジゴロとジゴレット/サマセット・モーム/金原瑞人/新潮文庫/2015年

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