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2020年10月 1日 (木)

その裁きは死 アンソニー・ホロヴィッツ

セレブ離婚をあつかう弁護士がひとりで自宅にいたところ、高級ワインのボトルで頭を殴られて殺された。玄関の壁には「182」と緑色のペンキで殴り書きされていた。

殺されたプライスは、不動産開発業者のエイドリアン・ロックウッドと文学者アキラ・アノンの離婚調停に際し、エイドリアン側の弁護士だった。
アキラは夫から金を引き出そうと目論むが、プライスがコンサルタント会社に財務監査を依頼してアキラの収入の詳細を調べさせると、急遽不服申し立てを取り下げた。離婚調停はエイドリアンの思いどうりの条件で決着した。

条件に不満を持つアキラが、混み合ったレストランで、プライスの頭をボトルでぶん殴ってやると怒鳴り、グラスに入ったワインをプライスの顔にかけた。

一方、殺されたプライスには拭いきれない過去があった。6年前に、大学時代の友人3人で悪天候のなか地下の洞窟に入り、1人が遭難し死亡した。そのあとプライスは死んだ友人の息子の学費を出してやり、夫人がインテリア・デザイナーとして起業するときも援助し、客を紹介していた。

Photo_20201001084001 その裁きは死

アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭
創元社文庫 2020年 ✳9

ここで著者アンソニー・ホロヴィッツとホーソーンの奇妙な関係について、おさらいしておく。ホーソーンは警察OBで、今も警察とのつながりがある。アンソニーはジュベナイル向けのファンタジー小説で名が売れた小説家で、最近はテレビの脚本も手がけている。アンソニーはホーソーンが捜査し解決に導く事件を小説にし、その印税をホーソーンと折半にするという、担当編集者が首をかしげる条件で契約を結んでいる。

本事件の担当はグランショー警部である。女子プロレスラーのような体型で、ホーソーンはまともではないから気をつけろと、アンソニーに警告する。何がまともでないのかというと、常に怒っていて自己中心的であり、捜査能力は乏しいという。あるとき、グランショー警部が、アンソニーの部屋に乗り込んできて恫喝する。事件に関してホーソーンのつかんだことは逐一連絡せよと、われわれより先にホーソーンが事件を解決したらただじゃおかないと、アンソニーの襟を拳でつかんで壁に押し付けながら言った。

犯人捜しは、ふたつの系統に要約される。エイドリアンとアキラ夫婦の離婚に関係する人物たちの系統と、6年前の地下洞窟での遭難事故に関係する人物たちの系統である。
シャーロック・ホームズをリスペクトする著者の、フーダニットものの王道をいく作品である。→人気ブログランキング

その裁きは死/アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭/創元社文庫/2020年
メインテーマは殺人/アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭 創元社推理文庫 2019年
007 逆襲のトリガー/アンソニー・ホロヴィッツ/駒月雅子/角川文庫/2019年
カササギ殺人事件/アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭/創元推理文庫/2018年

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