マンガ認知症 ニコ・ニコルソン/佐藤眞一
漫画家ニコ・ニコルソンの祖母(婆ルソン)が認知症になってしまい、ニコは母親(母ルソン)と二人三脚で婆ルソンの介護することになる。認知症の介護は一筋縄ではいかない。認知症を正しく知ることで、介護の精度をあげようというのが本書の狙い。
認知症とは何か、なぜ認知症は特有の行動をとるのか、どう対処したらよいのかなどを、ニコの漫画と老年行動学と心理学を研究するサトー先生(大阪大学の佐藤眞一教授)の文章で解説している。
婆ルソンが引き起こす騒動に、母ルソンとニコが振り回され、最後にサトー先生が登場するというパターンで進む。まずは各項目のテーマを漫画で概略が描かれ、そのあと文章で掘り下げる。だから、本書はとっつき易く理解しやすい。
マンガ認知症 ニコ・ニコルソン/佐藤眞一 ちくま新書 2020年 ✳9 |
まずは、認知症の定義だ。認知症とは、⑴なんらかの脳の疾患により、⑵認知機能が障害されて、⑶生活機能も障害される、という3つの条件が揃っていることである。
老化による物忘れと認知症の違いは、大雑把に言うと、老化の物忘れは「思い出せない」、アルツハイマー病による認知症の物忘れは「覚えられない」という違いがあるという。ここまで出かかっているんだけれどでてこないというのは、老化による物忘れ。
以下の11項目について解説する。
〈「お金を取られた」「強盗にあった」と言うのはなぜか?〉〈同じことを何度も聞いてくるのはなぜか?〉〈何度注意してもお米を大量に炊いてしまうのはなぜか?〉〈突然怒り出すのはどうして?〉〈高齢者の車の事故はなぜ起きるの?〉〈介護者につきまとうのはどうして?〉〈家にいるのに「帰りたい」というのはなぜ?〉〈これもしかして徘徊ですか?〉〈排泄を失敗してしまうのはなぜ?〉〈介護に疲れてしまったらどうしたらいいんですか?〉〈なんでお尻を触るんですかコラー‼︎〉
では、認知症の人が「お金を取られた」「強盗にあった」と言うのはなぜか?について、認知症の人の言葉には、その人の人生が現れるという。「物取られ妄想」の人は、お金に苦労した人だという。
ではその対処法は、「お金を盗られた!」と怒り出したらー
⑴お金は大事だよねと同意しながら、探すように促す。⑵介護者が疑われないように、本人に見つけてもらう。⑶あまり興奮しているときは声をかけず、静まるまで距離をとる。
あとは「お金を取られた」と騒ぐ理由について掘りさげて語られている。認知症近親者を介護する人にとって必読の書だ。→人気ブログランキング
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