ホッグ連続殺人事件 ウィリアム・L・デアンドリア
グランド・ホッグ・デイ(聖燭節、2月2日)に、ブリザードに見舞われ30インチの雪に閉ざされたニューヨーク州の北の町スパータで、連続殺人事件が起こる。
おりしも、新聞記者ビューアルが雪道を車で走行中、前を走っていたフォルクスワーゲンに道路標識が落下し、乗っていた高校生の2人が即死し、ひとりが軽傷で助かった。そして、HOGから殺害声明と次の殺人をほのめかす手紙がビューアルのもとに届く。
その手紙には、助かった高校生が産婦人科医からペッサリーを処方してもらったことが書かれていた。なぜHOGはそのようなことを知っているのか?この疑問が事件解明の鍵となる。本格謎解きミステリ。
![]() ウィリアム・L・デアンドリア/真崎義博 ハヤカワ文庫 1981年 ✳10 |
HOGは人を選ばない。次に、81歳の男が階段から転落して死んだ。8歳の男の子がいつもより早く学校へ出かけて、落ちてきた氷で首を刎ねられて死んだ。そして女子大生がヘロインの過剰摂取で死んだ。
これらの殺人事件について、それぞれ、ビューアルのもとにHOGから手紙が届いた。手紙には警察の担当者しか知りえない情報が書かれていた。
連続殺人事件ではあるが、年齢も性別も殺害方法もまったく不連続であった。
そんななか、満を持して天才犯罪研究家のベネデッティ教授がスパータの町に現れる。
教授は、挨拶代わりに、大学の金庫から5000ドルが盗まれた事件を、瞬く間に解決する。ケチで女好きの教授は、気軽に女性に声をかける。あの下品極まりないフロスト警部の軽いノリを彷彿とさせる。
教授は私立探偵のロンと、ロンが心を寄せる精神科医のドクタ・ヒギンズを巧みに使い、まるで安楽椅子探偵の風情だ。
さらに殺人事件が起こる。モーテルで男が銃でこめかみを射抜かれ、自殺に見せかけて殺された。被害者は警察を辞職させられた悪徳警官であった。
新聞の社説に「HOGは警察の手の内を警官を通して知るのではないか」と書かれた。警察署長はうろたえ、HOG事件の担当警部がスケープゴートにされそうになった。教授は、記者会見の場で、1週間以内にHOGを捕まえると見栄を切った。
謎解きものの傑作だ。→人気ブログランキング
« 豚は太るか死ぬしかない ウォーレン・マーフィー | トップページ | その裁きは死 アンソニー・ホロヴィッツ »
「ミステリ」カテゴリの記事
- ポケットにライ麦を(新訳版) アガサ・クリスティー(2022.05.16)
- 平凡すぎて殺される クイーム・マクドネル(2022.05.05)
- アガサ・クリスティー百科事典 数藤康雄 編 (2022.05.02)
- 葬儀を終えて アガサ・クリスティー(2022.04.19)
- 匿名作家は二人もいらない アレキサンドラ・アンドリュース(2022.03.29)
「オールタイム・ベスト」カテゴリの記事
- 葬儀を終えて アガサ・クリスティー(2022.04.19)
- 暁の死線(新版)ウイリアム・アイリッシュ(2022.02.10)
- シカゴ・ブルース フレドリック・ブラウン(2021.09.08)
- 八百万の死にざま ローレンス・ブロック (2021.08.20)
- 拡がる環 ロバート・B・パーカー(2021.06.07)
コメント