« その裁きは死 アンソニー・ホロヴィッツ | トップページ | ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃  小林雅一 »

2020年10月 7日 (水)

死んだレモン フィン・ベル

ニュージーランド発のミステリ。
事業に成功したフィン・ベルは精神のバランスを崩して酒に溺れてしまい、離婚に追い込まれた。挙げ句の果てに、37歳の誕生日に泥酔状態で車を運転して事故を起こし両下肢不随となった。車椅子の生活となったフィンは、南アフリカからニュージーランド南島の南の果てにある町リヴァトンへにやってきて、海沿いの「最果ての密猟小屋」と呼ばれるコテージで暮らしはじめた。フィンは71歳のベティから、アル中脱却のセラピーを受け、ベティから「人生の落伍者(デッドレモンズ)なのか」と何度か問われる。その度にフィンは自問自答し、ポジティブに生きようと奮い立つのだった。

Photo_20201007124401 死んだレモン

フィン・ベル/安達眞弓
創元社文庫 2020年 ✳9

物語は、車椅子のフィンが不気味な隣家の長男に崖から突き落とされ宙ぶらりんとなったスリリングな状況で幕を開ける。そこから時間が巻き戻され、フィンがリヴァトンにやってきた5か月前に戻り、ストーリーは宙ぶらりんの「現在」に向かって進んでいく。

マオリ族のタイに誘われてマーダー・ボールで汗を流し、タイのいとこである美容師のフランシスとの交際が始まった。
ある日、コテージの電気供給に不具合を生じ、同じ電線から電気をとっているゾイル家を訪れると、三兄弟に底知れない不気味さを感じた。なんでも直してしまう電気工事士のトゥイに依頼すると、すぐさま駆けつけ直してくれた。その後もなにかとトゥイには世話になり、フィンは60歳のタトゥーだらけの男を「温水のトゥイ」と呼ぶようになる。

コテージの前の所有者エミリー・コッターは介護施設で暮らしていた。20年前、娘のアリスが12歳のときに行方不明となり、6週後豚の精液にまみれた少女の骨盤の一部が発見されるという忌まわしい事件が起こった。そのあとアリスの父親が散歩中に行方不明となり、戻ってこなかった。警察は農場に住むゾイル家の三兄弟の関与を疑ったが確証は得られなかった。そして失意のエミリーはコテージを手放した。

フィンは事件を調べ始める。エミリーを訪ね、図書館で事件に関する新聞記事にあたる。郷土史研究家や元刑事で今は神父のロバートの聞き込みを行う。そんなおり、コテージに住み着いた猫の親子5匹が殺され、玄関の戸に釘で頭を貫かれて並んでぶら下がっていた。さらにコテージに放火された。
ロバートからリヴァトンから去ることを促されるが、正義感溢れるフィンは、ハンディキャップも顧みずゾイル家の三兄弟に立ち向かっていく。

個性豊かな登場人物たちがいきいきと描かれ、カウンセリングの理論や激しいマーダーボール、犯人のプロファイリングなど、興味をわかせる話題が尽きない。
さらに、先住民のマオリ族や移民の歴史、捕鯨やゴールドラッシュの歴史が、とことどころで挟みこまれ物語に厚みを与えている。本書の根幹につながるニュージーランド社会の裏の歴史に触れている。→人気ブログランキング

« その裁きは死 アンソニー・ホロヴィッツ | トップページ | ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃  小林雅一 »

ミステリ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« その裁きは死 アンソニー・ホロヴィッツ | トップページ | ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃  小林雅一 »

2022年5月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ