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宇宙(そら)へ メアリ・ロビネット・コワル

数学者であり女性パイロットでもあるエルマが主人公。地球脱失がテーマながら人種差別、性差別を大きく扱っているところが本書のユニークなところである。

1952年3月3日、小惑星がワシントンDCの近海に落ちた。そしてチェサピーク湾が3日間沸騰し続けた。たまたま休暇で山荘にいたエルマとナサニエル夫婦は、ソ連の核爆弾が投下されたのではないかと思った。
エルマの両親はおそらく一瞬にして死んだだろう。しかしそれを確かめる術はない。
TVニュースで、死者は7万人、50万人が家をなくし、クレーターの大きさは直径29キロに及ぶという。もちろんアメリカ政府の機能は麻痺した。
日を重ねるごとに世界各地での津波による被害が報告された。
そして、一時的には地球の気温は下がるがその後気温が上がるという。
地球から脱出するため、まずは宇宙船に地球を周回させ、次に月に基地を創り、その後火星に移住するという計画が進められることになった。

Photo_20201017124201宇宙(そら)へ 上
メアリ・ロビネット・コワル/酒井昭伸
ハヤカワ文庫
Photo_20201017124201 宇宙(そら)へ 
メアリ・ロビネット・コワル
2020年 

首都になったカンザスシティに設けられた国際空港宇宙機構(IAC)に勤務するエルマの仕事は、宇宙船の軌道を計算すること。コンピューターと呼ばれる。エルマは戦時中に戦闘機に乗っていたパイロットでもあり、宇宙飛行士なろうとチャンスをうかがっている。
一方、夫ナサニエルはロケット科学者で宇宙計画の技術部門の責任者である。
IACは1956年3月の時点で、今後3年間で75機から105機のロケットを発射する予定。1960年までに月面にコロニーが完成される。

ユダヤ人家庭で育ったエルマは14歳で大学の数学科に入った。男ばかりの数学科で、できの悪い学生に数学を教えるという任務を教授から命じられ、それが苦痛でトラウマになった。人前に出ると吐き気や頭痛に襲われるのだ。エルマは人前に出るときに緊張をほぐそうと、「スカートのしわを伸ばす」仕草をくり返す。

地球からの脱出計画が着々と進む中で、エルマが目の当たりにしたのは性差別と人種差別であった。
パーカー空軍大佐はコロンブスのときは女性乗組員がいなかったという。エルマはピルグリムファーザーには女性たちが乗っていたと反発した。

エルマは、元陸軍の女性パイロットや黒人女性のパイロットを募り、女性だけの航空ショーを開催し、大成功を収めた。人々に女性が宇宙飛行士としてやっていけることを示したのだ。
そしていよいよ女性宇宙飛行士が募集されることになる。

原題は、「The Calculating Stars」。2019年のネヴィラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞、サイドワイズ賞を受賞した。ヒューゴー賞はファンによる投票、ネビュラ賞は作家による投票、ローカス賞はSF情報誌が選び、サイドワイズ賞は歴史改変SF小説に与えられる。→人気ブログランキング

火星のレディ・アストロネート/メアリ・ロビネット・コワル/酒井昭伸/SFマガジン2020年10月号
宇宙(そら)へ/メアリ・ロビネット・コワル/酒井昭伸/ハヤカワ文庫/2020年

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