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2020年12月13日 (日)

文豪春秋 ドリヤス工場

日本の文豪たちのエピソードを、4ページの漫画にコンパクトに描いている。エピソードの多くはそれぞれ有名な話であり、文豪たちの愚行や蛮行や奇行あるいは犯行といっていい話である。
著者のドリヤス工場は『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』(リイド社 2015年)で注目を集めた漫画家。
水木しげると酷似した画風で描く。
作風を真似るやり方として、オマージュ、パスティーシュ、インスパイヤー、コラージュ、パロディ、二次創作・リメイク、盗作・パクリという言葉があり、褒め称えられる行為から逆に訴えられる行為まで微妙に推移している。作者の作品はどれに当てはまるのか。これだけ堂々と真似ていると、尊敬して真似をする「オマージュ」だろう。
Image_20201212145901文豪春秋
ドリヤス工場
文藝春秋
2020年6月

話は文藝春秋社の女性記者と菊池寛の会話によって進められる。
菊池は銅像や額に納められた肖像画として亡霊のように登場する。ジャーナリストであり小説家であった菊池は、文藝春秋社を創設した実業家であり、小説家たちから人望があった。芥川龍之介や直木三十五と深い友情で結ばれていた菊池は、芥川賞と直木賞を創設した人物でもある。文壇の裏話に精通しているから、本作の狂言回しとしては最適の人物だ。

太宰治が自分がいかに芥川賞を獲るにふさわしいかを、延々と綴った4メートルもの手紙を佐藤春夫に送った有名なエピソードを描いている。太宰の章のタイトルは「走れ芥川賞」である。
佐藤春夫との女性をめぐる三角関係にあった中原中也は「三角形の歌」、借金まみれだった石川啄木は「一握の寸借」、文壇、人づきあい、賞が大嫌いだった山本周五郎は「心意気は残った」、孤独を愛した江戸川乱歩は「押入れを旅する男」、イタリアと日本の文化の橋渡しに尽力した須賀敦子の章は「イタリアの旅人たち」である。
作家の生き様をパロディ化したタイトルに、ついニンマリしてしまう。→人気ブログランキング

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