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明治断頭台

幕府が瓦解し新政府が発足したとはいえ、世の中のあらゆるところに矛盾が転がっていた。そんな明治の初期、主人公である香月経四郎と川路利良は太政官弾正台の大巡察であった。その職権はのちの検事局、警視庁、憲兵隊、会計監査院を兼ねたものであるという。2人は将来日本の警察を背負って立つ人物と目されていた。
政府は正義の具現者であるべきだというのが経四郎の信念である。川路は経四郎のそうした考え方に前のめりになるなと釘を刺す。2人は事件の謎解き合戦をはじめるのである。
Photo_20210321122501明治断頭台
山田風太郎
文春文庫
2012年

明治2年秋、東京の5人の邏卒(明治初期の警官の称)は、平民の弱みに漬け込んで金をせびるようなことをしていた。明石町の番所に酔っ払いが保護されると、羅卒は目覚めた酔っ払いに命が助かったのだから財布ごと置いていけといった。

鍋島藩切っての剣の名手香月経四郎は、文久3年(1863年)欧州使節団護衛役として欧州行きに参加したが、病気になりパリに置き去りにされ3年後に帰ってきた。パリから追いかけてきた金髪の美女エスメラルダは、パリ代々の首切り役サンソン一家の9代目にあたる。佐賀屋敷で香月経四郎と同棲をしている。叔父の真鍋直次が令嬢のお縫を連れて現れ、金髪娘をフランスにさっさと返して、お縫と結婚しろという。
経四郎はエスメラルダの父が作ったフランス式のギロチン台を、小伝馬町牢屋敷の斬罪場に作られた小屋に持ち込んだ。

まずは3人の極悪人の首をギロチンで刎ねる。その切れ味の鋭さを見せつけておいて、5人の邏卒に次はお前たちの番だと脅したものだからビビった。以後、邏卒たちは経四郎の手となり足となって働くようになる。

ギロチンによって職が脅かされる人間もいる。江戸時代から藩に引き継がれてきた首切り役だ。罪深き人間とはいえ、せめて切り手の魂の伝わる刀を持ってあの世に送ってやるのが日本人の古来の美風であるまいかという理屈だ。首切りはなんでも実入りがいいらしい。

2人が捜査したのは、築地ホテル館での胴斬り事件、神田川の人力俥墜落事件、永代橋の首吊り事件、築地居留地の足切り事件、そして5つの首事件である。それぞれの事件は、巫女に扮した金髪のエスメラルダの降霊術で真相が暴かれる。
そして、経四郎は政府内で起こった汚職事件を調査を開始する。

最後は圧巻だ。
山県有朋が陸軍の金を山城屋に融資して大損した。その調査を中止するように西郷隆盛から川路は頼まれた。薩摩人の川路は断れようはずもなかった。問題は佐賀出身の香月経四郎だ。
経四郎に事件から手を引かせようと、エスメラルダに禁断の書の翻訳を依頼して陥穽にはめた。エスメラルダは捕まり断首の刑が決まった。川路は経四郎にエスメラルダを助けるかわりに山城屋事件から手を引くようにと持ちかけた。経四郎は承知しなかった。

エスメラルダの処刑が決まっても、経四郎は淡々と日々の仕事をこなした。斬首の日になると経四郎は小伝馬町牢屋敷に関係者を集め、口上を述べた。5つの事件の裏に邏卒が絡んでいたことを連綿と述べ、邏卒たちを牢にぶち込んだ。さて、そこから痛快な大円団に向かう。→人気ブログランキング

妖説忠臣蔵/集英社文庫/2014年
忍法忠臣蔵/角川文庫/2014年
明治断頭台/文春文庫/2012年
伊賀忍法帖/講談社文庫/1999年
くノ一忍法帖/講談社文庫/1999年
甲賀忍法帖/講談社文庫/1998年
ラスプーチンが来た/文藝春秋/1984年

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