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2021年3月25日 (木)

コンビニ人間

コンビニ店員の主人公を通して、現代人の生き様を描く。第155回(編成28年度上半期)芥川賞受賞作。
Photo_20210325083901コンビニ人間
村田沙耶香
文藝春秋 (文春文庫 2018年)
2016年

主人公は変わった子どもだった。死んだ小鳥を食べようと言い、親からたしなめられた。
小学校のときに、取っ組み合いの喧嘩をしている同級生の男子の頭をスコップで殴って、喧嘩を止めさせた。ヒステリーになって教壇の机を出席簿で叩く若い女の先生のスカートとパンツを下げて、静かにさせた。それもこれも、「止めろ」と叫ぶ声に従っただけだとうそぶく。事件が起こるたびに、母親は学校に呼び出された。
行動すると問題が起きるので、高学年になるとほとんどしゃべらなくなり、行動しなくなった。
小学校・中学校を無事終了し高校も大学も、同じ対応でやり過ごした。

19歳の大学1年生のときに、新規開店するコンビニがアルバイトを募集していたので、そこに行ってみた。それからそのコンビニでアルバイトを続けた。主人公は36歳になり、相変わらずコンビニでアルバイトをしている。

主人公は地元の友達と会うときには、少し持病があって体が弱いからアルバイトをしていることにしている。コンビニでは、親が病気がちで介護があるからアルバイトなら時間に融通がきくからだということにしている。この二種類の言い訳は妹が考えてくれた。
コンビニは、性別も年齢も国籍も関係なく、同じ制服を身につければ全員が店員という均等な存在だ。

婚活が目的だという35歳の自己中心的な男は、若い女性の宅配便の住所を写メで撮っている。店員の一人は、四六時中、不満をいう現実逃避の男。客に注意して回る中年の客 など、まともじゃない人がいる。

昇進の望みないから、同僚はころころ入れ替わる。コンビニ店員は、コンビニ店という箱の中で、マニュアル通りの動きをすることだけを求められる。主人公にとってはコンビニ店員としてのアイデンティティだけが拠り所であり、生きる証なのだ。

〈朝になれば、また私は店員になり、世界の歯車になれる。そのことだけが、私を正常な人間にしているのだ。〉と、自分に言い聞かせている。→人気ブログランキング 

おばちゃんたちのいるところ/松田青子/中公文庫/2019年
コンビニ人間/村田沙耶香/文春文庫/2018年
JR上野駅公園口/柳美里/河出文庫/2017年

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