幻の女(新訳版)
1942年発表のオールタイムベスト作品。
妻とうまくいっていない夫・ヘンダーソンには妻が周知の恋人がいる。
ヘンダーソンは妻とレストランで食事をして劇場でショーを見て、離婚を切り出そうと策を練った。妻を誘うと、「付き合っている女と行きなさい」と馬鹿にした笑いが返ってきた。憤慨したヘンダーソンは青いネクタイを床に放り、恋人に電話をかけたが留守だった。
![]() ウイリアム・アイリッシュ/黒原敏行 ハヤカワ文庫 2015年 |
ヘンダーソンは最初に出会った女性に声をかけ、ディナーをともにしショーに誘うことに決めた。
バーでカウンターに座っているオレンジ色の帽子を被った黒いドレスの女を誘った。すると女はつきあうという。
ふたりはタクシーに乗りレストランに行きディナーをともにした。その後劇場ではバンドの目の前の席に着いた。女は女性歌手が歌っているにも関わらず席を立った。しかも歌手の帽子と女がかぶっている帽子は同じデザインだった。その後再びバーに戻り1杯飲んで、女はバーに残りヘンダーソンはバーを後にした。
ヘンダーソンが家に帰るとすでに3人警官がいて、妻は青いネクタイで絞殺されていた。
警察は妻が死亡した時刻のヘンダーソンのアリバイを訊ねる。ヘンダーソンは一緒にいた女がどんな顔をしていたかまったく記憶がなかった。ましてや、名前も住所も電話番号もきいていなかった。
警察がつきそってヘンダーソンのアリバイを証言しそうな人物に訊ねるが、バーテンダーはひとりだったと明言し、タクシー運転手も女は知らないといい、レストランのウエーターもひとりだったといった。さらに、劇場のドアマンも女はいなかったと証言した。
こうしてヘンダーソンは妻殺しで起訴され、アリバイが成立することなく死刑が確定する。
ここまでのストーリーで、本書のたった四分の一である。
死刑執行までの日数が刻々と少なくなるなか、ヘンダーソンの友人が捜査を始める。
ヘンダーソンの捜査にあたったバージェス警部は、ヘンダーソンが妻を殺していないと見ているが、幻の女を探し出す時間的余裕がない。幻の女を捜索する友人に警察は協力するという。
友人はバーテンに面会し、タクシーの運転手から話を訊き、ドアマンの家を訪ねるが、女は見ていないという。彼らを不可解な事故が襲う。
そして、最後の謎解きはバージェス警部が行う。
ミステリの読者人気投票で、常に上位に食い込む本書は、伏線も展開も見事。さすが名品である。→人気ブログランキング
暁の死線(新版)/ウイリアム・アイリッシュ(稲葉明雄)/創元推理文庫/2016年
幻の女(新訳版)/ウイリアム・アイリッシュ(黒原敏行)/ハヤカワ文庫/2015年
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