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風光る 藍染袴お匙帖 藤原緋紗子

千鶴は、医学館の教授方であった父・桂東湖の遺志を継いで江戸府内でも珍しい女医となって3年が経つ。藍染川沿いにある200坪ばかりの土地に、住居を兼ねた治療院が建っていて、裏庭は薬園になっている。西陣の平織りの生地を近くの紺屋で染めた袴をはいて往診する。人は千鶴を藍染先生と呼ぶ。

主な登場人物を紹介する。千鶴は父の時代から女中として桂家に奉仕するお竹、医師を目指す助手のお道の3人で住んでいる。おじの酔楽は千鶴を娘のように可愛がる医者。南町奉行の同心、浦島亀之助はなにかにつけ治療院に顔を出し千鶴の気を引こうとする。岡っ引きの猫八こと猫目の甚八は、頼りない亀之助の代わりにこまめに動く。菊池求馬は200石旗本の当主だが仕事がない。治療院に顔を出して千鶴を助け、事件を解決に導く。千鶴とは相思相愛の仲である。
『藍染袴お匙帖』シリーズは、2010年にNHK土曜時代劇で『桂ちづる診療日録』のタイトルでドラマ化された。桂千鶴を市川由衣が演じた。

82a36d6db4be4e639989d1fdb1337a39風光る 藍染袴お匙帖
藤原緋紗子
双葉文庫
2005年

「蜻火(かげろひ)」
新しい建物を建てようと土を掘り返したところ、人骨が出てきた。南町奉行所同心定中役の浦島亀之助は千鶴の知恵を借りようと治療院にやってきた。妻に逃げられた亀之助は千鶴にぞっこんで、何かと治療院にやってくる。
徳蔵が相模屋の番頭を辞して、人骨が出た土地に店を出したのが3年前。2年前に、徳蔵一家が神隠しにあった。
千鶴はおじの酔楽先生から届いた粘土を使って、頭蓋骨にスーパーインポーズを施す。すると、それは明らかに徳蔵の顔であった。
徳蔵の妻だったおきちは、巳之助という悪徳高利貸しと一緒にいることがわかった。巳之助は徳蔵を殺して縁の下に埋め、おきちと娘をさらった。そして、阿漕な取り立てをする金貸として羽振りが良くなっていたのだ。
亀之助と大勢の小者で、巳之助一味の根城である向島の一軒家に踏み込んだ。

「花蝋燭」
やくざ者を殺したお栄が牢の中で子どもを産んだ。産後の肥立ちが思わしくなく、お栄は息を引き取った。千鶴はことの真相を明らかにしてくれるよう女囚たちに哀願された。
女中として蝋燭屋の三国屋に入ったお栄は絵心があり、お栄が絵を施した花蝋燭は三国屋に客を呼び寄せた。養子であった与茂助は店の繁盛で三国屋の跡取りになれたのだ。千鶴は仕入れで西国巡りから帰ってきた与茂助に直接真相を訊く。
殺された銀六から与茂助は強請られていた。銀六がお栄に匕首を突き付けると、お栄は銀六の手首に噛みついた。与茂助は銀六目がけて材木を振り下ろすと、避けた銀六の上に材木が倒れてきて頭に当たりそのまま銀六は死んだ。お栄は自分が手込めにされそうになって、材木で殴ったと奉行所に申し出たのである。
与茂助はお栄を妻に迎えようと思っていた。お栄が産んだ子どもは与茂助の子どもだったのだ。
 
「春落葉」
賊は裸にして後ろ手に縛り口と目に鳥もちを塗った有森藩の中間に、「これで思い知ったか」と捨て台詞をして立ち去ったという。両国橋の西詰で小鳥に芸をさせている痩せた老人・宇吉が、桂治療院に運ばれてきた。宇吉の腹には手の施しようのない腫瘤があった。
宇吉は鳥刺しである。鳥刺しとは御鷹匠の差配で鷹の餌をとる者だ。おおかたは町人が請け負うが帯刀を許されている。鷹には1日雀10羽を必要とする。そんな宇吉がなぜ江戸にいるのか。
そして、またもや鳥もち事件が起こった。おふさという長唄の師匠で、有森藩の御留守居役の須崎源之丞の妾だった。
その昔、有森藩の城下で呉服商を営んでいた井筒屋の息子兄弟が、傷ついた雉を助けようと捕まえた。兄弟は、国家老の三男坊・須崎源之丞に御鷹場で禁止されている鳥を捕獲したと、鳥もちで追い回され、弟の顔を鳥もちが覆い殺された。井筒屋は藩に事の次第を訴えたが、兄・儀一の作り話と退けられ井筒屋は追放になった。その一部始終を見ていた宇吉は、源之丞の仕業だと言い出せなかったことを後悔した。
鳥もち事件の犯人は儀一の仕業と分かった。源之丞は酒宴の席で庭に出て、鳥もちを口に放り込まれて死んだ。源之丞の隣には年老いた男の小さな骸が転がっていた。

「走り雨」
弟子のお道を人質に取られた千鶴は、ある町家まで目隠しで駕籠で連れていかれ、人質解放と引き換えに若い侍の肩の創を縫合した。
おじの酔楽が風邪をひいたから、代わりに、大目付の下妻の子どもを往診しろという。子どもはよくある便通の支障であった。下妻の妻が一昨日5人の覆面武士が侵入してきて、警護の武士が、そのうちのひとりに肩に傷を負わせたという。
千鶴は、駕籠の中で橋を渡って坂を登り鐘を聴き、石段を登り、琵琶の音を聞いたことを頼りに、連れていかれた町屋の場所を突き止め、菊池求馬とともにその家に乗り込んだ。そこには肩を切られ治療を受けた順之助がいた。
本山藩は藩主が贅沢をして農民の食い扶持までも税として納めさせた。下妻は疲弊した18ヶ村を幕領として取り上げ、石高を下げ農民たちを救ったのだ。下妻を襲った順之助たちは自分たちの藩主が正しいと誤解していたのだ。血気盛んな5人の前に、千鶴、求馬、酔楽、下妻が現れて、下妻が真実を切々と伝えるのだった。結末は泣ける。→人気ブログランキング

藁一本 藍染袴お匙帖/2019年
風光る 藍染袴お匙帖/2005年

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