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婆沙羅 山田風太郎

婆沙羅大名と呼ばれた佐々木道誉が主人公である。
婆沙羅とは、仏語で物狂いに近いほど綺羅を飾った服装や風俗を指し、見栄を張り遠慮なく振舞うこと。
鎌倉幕府の打倒に失敗して隠岐島へ御流された後醍醐天皇は京に戻り、足利尊氏擁する光明天皇に対抗して吉野の地に南朝をたて、南北朝時代が始まった
足利尊氏を補佐するのは尊氏の弟・足利直義である。直義が尊氏に仕える悪辣な高ノ師直、師泰兄弟を討つと、道誉は直義を殺害した。尊氏が亡くなると、道誉は尊氏の息子・尊詮の寵臣となった。乱世だからこそ上手く立ち回わることで道誉の存在価値がある。
5469a3df58c04807a8d6c59e3d88357b婆沙羅
山田風太郎
講談社文庫
1993年

朝廷の監視機関である六波羅探題襲撃の計画が発覚し、後醍醐天皇は隠岐島に御流されることになった。牢内の天皇は常人の3倍の食欲があり要求が通らないと断食を始める。餓死させるわけにいかないから要求通りになる。21人の妾から隠岐島に連れていく側妾3人を真言密教の大秘法で選びたいという。牢番の検非違使である佐々木信誉は許可した。邪教立川流にのっとった大秘法は、淫卑極まりないものであった。

道誉は後醍醐天皇の御流の旅に1500人の警護をつけた。道誉は天皇はいずれ京に戻ってくると予測したが、道誉の予想通り後醍醐天皇は翌年6月に隠岐から戻ってきて、「建武の新政」が始まった。そして世は乱れに乱れた。

道誉は後醍醐天皇寄りの立場と見せておいて、鎌倉幕府を倒した功労者である楠木正成に「帝とは距離をおいた方がいいのでは」と助言した。正成は「帝が天魔鬼神でおわすとも必ずお守りして死ぬるものと覚悟している」と答えた。

尊氏は、人に対して憎悪の念を持たない、物を惜しむところがない、小事に拘らない性格である。動揺の震源地は反勢力の南朝にあるが、その存在をあたかも認めているのが尊氏である。弟の足利直義は優柔不断な兄を補う分、冷徹な合理主義者である。

尊氏に仕える高ノ師直、師泰兄弟は強欲で好色であり悪辣であった。ふたりは、次第に主を主とも思わぬようになった。足利氏の内紛である観応の擾乱で、尊氏は高兄弟を庇ったが、直義は高兄弟は許せないとふたりを惨殺した。その背後には道誉がいた。
道誉は乱世であればあるほど自分のやりたい放題がやれると思っていた。

尊氏が息子の尊詮に政務に与えた職を直義に返さなかったことで、直義は尊氏に叛旗をあげた。
道誉は寺に幽閉されていた直義を毒殺すると尊氏に持ちかけそれを実行した。
尊氏は直義の死後、悪夢を見ることが多くなった。
そして尊氏が背中の化膿が悪化して亡くなると、道誉は尊詮の寵臣となった。そのとき道誉は53歳であった。
婆沙羅大名佐々木道誉を通して百鬼横行の乱世・南北朝時代を描いた傑作。→人気ブログランキング

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