ボビーZの気怠く優雅な人生 ドン・ウィンズロウ
ティムは自制心のなさで、盗んでは捕まり、出所すればまた盗みを働き捕まるという体たらくだった。判事はティムを海兵隊に入れて鍛え直すのが得策だと考えた。そしてサダム・フセインのクウェート侵攻で、サウジアラビアに送り込まれた。そんなティムだが、判事の当ては外れた。アメリカに舞い戻ってきて、再び盗みを働いて捕まったのである。
ティムは、刑務所でかっとなってヘルズエンジェルのメンバーの喉をかき切って殺してしまい、ヘルズエンジェルに命をねらわれる身となった。そんなおり、伝説のサーファー、ボビーZに似ていることで、ボビーZになり切ることを条件に釈放された。
![]() ドン・ウィンズロウ/東江一紀 角川文庫 1999年 |
一方、カリフォルニアのラグーナビーチで育ったロバート・ジェームス・ザカリア(別名ボビーZ)は、高校2年のときから一目置かれるサーファーであり、麻薬の元締めであった。ボビーZは高級マリファナしか扱わない。ボビーZは大金を残してタイで心臓発作で死んだという。
当局の企みは、麻薬王ドン・ウェルテーロに捕らえられた麻薬捜査官と、偽のボビーZを交換しようというもの。取引の日、相手が発砲して国境一帯が滅茶苦茶になって サファリパ-ク化した。そして、ティムは砂漠に建てられた城の、どでかいベッドで目を覚ますことになる。女が朝食はどうか訊ねると、ボビーZが菜食主義者だったことを思い出す。
城の持ち主の、だぼだぼに肥ったゲイのブライアンは、ドン・ウェルテーロの手下である。ウェルテーロがアメリカ南部一帯にメタ(アンフェタミン)の製造工場を建て、ブライアントが人員を供給し、ボビーZにはマーケットを提供してもらうという。
ティムは子供の前で女をナンパするドイツ男を、プールに顔の色が悪くなるまで沈めた。
ティムは一度頭に血が昇ると収拾がつかなくなる。刑務所のカウンセラーに指摘されたことを思い出す。
エリザベスが、その子ども・キットは、エリザベスの友人のオリヴィアとボビーZの子どもだという。僧侶(ザ・モンク)と呼ばれる男が、ボビーZの信頼のおける部下であり金庫番であることがエリザベスの話からわかった。
ウェルテーロがボビーZを捕まえようとする理由は、ウェルテーロのタイ産の麻薬の代金300万ドルを、ザ・モンクがちょまかしたのだ。ティムは、ウェルテーロがボビーZを生かしておかないということを知って、砂漠の城からトラックをかっぱらって6歳のキットを連れて城から脱出した。
ボビーZの命を狙う人物がもうひとりいる。東ロサンゼルスの顔役ルイス・エスコバールだ。兄のホルヘを殺したのは、ボビーZが手を回したからだと吹き込まれていた。
一方、ボビーZの味方も動き出す。伝説の語り部アル中のワンウェイは、精神病院に出たり入ったりだが、ボビーZが帰還したと大声で喚いている。さらに、ボビーZの金庫番のザ・モンクも動き出す。
ティムの命を狙うのはヘルズエンジェルとエスコバールの手下、そしてウェルテーロは生捕にせよという命令を出している。ティムはウェルテーロに300万ドルを返して誤解を解くことにした。ティムはエリザベスとキットを連れて奮闘する。→人気ブログランキング
壊れた世界の者たち/ハーパーブックス/2020年
ボビーZの気怠く優雅な人生/角川文庫/1999年
ストリート・キッズ/創元推理文庫/1993年
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