ファイト 佐藤賢一
モハメド・アリのボクサーとしての運命を変えた4試合を、戦っているアリの目線で書いたユニークな作品。
その試合は、1964年の対ソニー・リストン戦、これはアリの世界戦初挑戦である。第二試合は、アリが徴兵を拒否し、ボクシング・ライセンスを剥奪されて復帰したあと、1971年、ジョー・フレージャーとの世界チャンピョンタイトル戦。第三試合は、1974年、アフリカ・コンゴ共和国で行われたジョージ・フォアマンとの一戦。「キンシャサの奇跡」と呼ばれた。
第四試合は、1980年、対ラリー・ホームズ戦。ヘビー級タイトルマッチ。
アリは3回世界チャンピョンに返り咲いている。この4試合はいずれもチャレンジャーとして戦った試合である。
![]() 佐藤賢一 中公文庫 2020年 368頁 |
アリは、1942年1月17日、ケンタッキー州ルイビルで、普通の家庭の子供として生まれた。小学校でボクシングをはじめ、その後めきめき頭角を現し、1960年のローマオリンピックで、ライトヘビー級の金メダルを獲得した。
第一試合
1964年2月24日、マイアミビーチで、アリはヘビー級チャンピオンのソニー・リストンに挑戦した。リストン32歳、アリ22歳
試合前にロリンズの家に、朝の4時に押しかけ、口汚く罵り挑発をする。
セコンドは名将アンジェロ・ダンディだ。
第1ラウンド、蝶のように舞い蜂のように刺した。自陣コーナーに帰ってきて生き延びたことに安堵した。
第6ラウンド、TKOで勝った。
翌日、それまでカシアス・クレイと名乗っていたアリは、イスラム教徒であることを発表し、1週間後、モハマド・アリに改名した。
1966年1月、アリに徴兵令状がきたが、アリは徴兵を拒否をした。世論はアリに非難を浴びせた。それだけでなく、ニューヨーク州ボクシング委員会がライセンスの停止を通告し、各州がこれに倣い、アリがアメリカで試合ができなくなるまで1ヶ月とかかからなかった。世界タイトルも剥奪され、6月には裁判で懲役5年が言い渡された。
しかし、1970年にボクシングライセンスの停止は憲法違反と裁判所の判断が示された。世界戦は復帰3戦目だった。
第二試合
1971年3月8日、ジョー・フレージャー戦。NY、マジソン・スクエア・ガーデン。
世界チャンピオン同士、二人とも無敗である。アリ(29歳)31勝無敗、ジョー(23歳)26戦無敗。
フレージャーは、1964年の東京オリピックの重量級で金メダルを獲得した。シュシュと息を吐きながら小刻みに体を揺らし闇雲に突進してくる戦闘スタイルは、「機関車ジョー」と呼ばれた。
死闘と呼ぶにふさわしい試合だった。アリは判定負けを喫したがダメージはさほどでなく、一方、フレージャーは1週間の入院を強いられた。
第三試合
1974年10月30日、ザイール共和国のキンシャサで行われた。ジョージ・フォアマンとのヘビー級タイトルマッチ。
6万人収容の「5月20スタジアム」で行われた。特設リングからリングサイド席にかけて雨よけに硝子の屋根がかけられた。
リング入場は午前4時だった。アメリカのゴールデンタイムに流すための都合だった。
ジョセフ・モブツという軍人上がりの独裁者がいて、売出し中のプロモーター、ドン・キングがモブツ大統領の誘致話に飛びついた。
「ザイール74」と題した音楽イベントが企画された。ジェームス・ブラウンやB・B・キング、ザ・クルセダーズのライヴをやると、話が大きくなっていく。ファイトマネーは破格の545万ドル。このときフォアマン25歳、アリ32歳だった
ケン・ノートンもフレージャーも、第二ラウンドでノックアウトをくらっている。
試合が始まるとマットはふわふわで足を取られ、ロープがゆるくロープに寄りかかると腰をかけるような姿勢になった。ロープにもたれていれば的が遠くなり相手のパンチの当たりは浅くなる。だから効かない。攻め続ければ疲労の色が濃くなる。この戦術を使ったのがフォアマンのセコンドについている男アーチー・ムーアー。50歳近くまでボクサーを続けた。アリはこの戦法を「ロープ際の愚か者(rope a dope)」と名づけた。
第8ラウンドでアリのKO勝ち。「キンシャサの奇跡」と呼ばれている。
第四試合
1980年10月2日、ラスベガス。
アリがリタイアして丸2年経ってのカンバック戦。アリ38歳。ラリー・ホームズ30歳。
ラリー・ホームズは長い間アリのスパーリングパートナーをつとめていた。
10ラウンド、ラリー・ホームズのTKO勝ち。→人気ブログランキング
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