ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法 ポール・ホーケン編著
世界の気温上昇を産業革命前の水準と比較して2℃未満に抑えるという国際的な公約がある。2015年、国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)で合意され、「パリ協定」と呼ばれる。それにはCO2を2030年には半減、2050年にはゼロにしなければならいとされている。しかし排出を止めるロードマップは今のところない。
ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法 ポール・ホーケン編著 東出顕子訳、江守正多監訳 山と渓谷社 2021年 431頁 |
タイトルのドローダウンとは、温室効果ガスがピークに達し、年々減少し始める時点を指す。編著者のポール・ホーケン は、アメリカの環境保護活動家、 起業家 、作家、活動家。
プロジェクト・ドローダウンは22カ国70名のドローダウン・フェローで構成されている。40%は女性で、半数近くが博士号取得者である。
これらすべての温暖化対策を実施すると、2050年までに少なくとも1000ギガトンのCO2を削減できるという。ちなみに、1ギガトンはオリンピックサイズのプール40万個分。2016年に排出されたCO2の総量は36ギガトンである。
本書の特徴は、100の技術や戦略についてランキンが示され、より実効性がある方法はなにか、なにを優先すべきなのか、削減CO2量のほかそれにかかるコスト、そして課題に言及しているところである。本書によって温暖化阻止に明るい兆し見えたような気がする。
紹介されている技術や戦略は、エネルギー、食、女性と女児、建物と都市、土地利用、輸送、資材、今後注目の解決策、の8項目に大きく分かれている。
ランキングの1位は、「冷媒の管理」で2050年までに90ギガトンを減らすことができる。冷蔵庫、スーパーマーケットのショーケース、エアコンなどに使われている冷媒は、地球規模の問題を起こし続けている。ハイドロフルオロカーボン(HFC)に代表される代替フロンは、オゾン層には有害な影響を与えないが、温室効果はCO2の1000〜9000倍もあるという。2028年までにHFCの使用を段階的に削減することを取り決めた2016年のモントリオール議定書キガリ改正には、最終的に197カ国が採択したという。
食料廃棄の削減で70ギガトン、屋上ソーラーで24ギガトン、植林で18ギガトン、電気自動車で11ギガトン、のCO2を削減できる。電気自動車の普及が思いのほか効果が少ない。また意外に思えるが女児の教育が60ギガトンとなっている。なぜ女児の教育がCO2削減につながるのか。それは教育を受けることにより女性の出産数が減ることによる。
本書はアメリカで2018年2月に発刊された。『ニューヨークタイムズ』でベストセラーに選ばれ、すでに世界12カ国の言語に翻訳されているという。→人気ブログランキング
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