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凍える牙 乃南アサ

著者は本書で直木賞(1996年7月)を受賞した。
今からおよそ30年前、当時はほとんどジェンダーについて意識が払われていない時代だった。警察署という圧倒的な男性優位の職場で、バツイチの女性が窮屈で不愉快な思いを強いられながら奮闘する姿が描かれている。
547fa4e2725d4f8baae87a9fa149ab5e凍える牙 女刑事 音道貴子
乃南アサ
新潮文庫
2000年

1月の冷える深夜に、ファミリーレストランで客が突然炎に包まれ亡くなった。火は1階から上に広がり、6階建てのビルを飲み込んだ。警視庁立川中央署の滝沢保は火災現場に覆面パトカーで向かった。ベルトのバックルから発火したとなれば、相当に手の込んだ他殺だ。死者1名、負傷者22名。

特別捜査本部が設置され、機捜隊に属する主人公の音道貴子は捜査班への編入を命じられた。捜査本部の規模は約100名という驚きの人数だ。それだけ、この事件を早く解決しようとする中枢幹部の思惑が伝わってくる。

美形の部類で背が高い貴子は、次のように思っている。〈女というだけで、好奇の眼差しを向けられたり、侮られたりすることに、いちいちめくじらを立てていては、とても刑事は務まらない。〉
貴子はずんぐりむっくりの中年男滝沢保とコンビを組まされた。相手は渡された名刺を受け取り一言「でかいな」と言ったきり、自己紹介もなく名刺も渡されなかった。せいぜい弱みを見せないようにするしかない。

死体は腹部が炭化していて気道にも熱傷があり、生前に焼かれたことは確かで、さらに右大腿と左足首に、比較的新しい咬傷があった。かなり大型の犬などに噛まれた跡だ。

滝沢は女とコンビを組んだことで、やりにくいったらありゃしねえと悪態をついた。滝沢は女を信じていない。滝沢なりのその理由は、第1に女は嘘をつく。感情が先走る。第2に女のデカは認めていない。男の仕事だ。第3にトイレひとつにしたって面倒臭い。第4は同僚たちがざわめいたこと。

そして若い男女が大型犬に咬み殺される事件が起こる。発火装置で殺された男と、大型犬に噛みつかれて殺された男女の関係が謎を解く鍵となる。捜査はその大型犬を探すことで、明かりが見えてくる。
終盤の貴子が操るバイクの走行シーンは本書の見どころだ。
1990年代のジェンダーに対する意識はこんなものだったなと思い出しながら、読み進んだ。→人気ブログランキング
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