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2021年12月

2021年12月21日 (火)

自由研究には向かない殺人 ホリー・ジャクソン

著者はイギリス・バッキンガム出身の29歳の女性。子どものころから物語を描きはじめ、15歳で最初の小説を書き上げた。デヴュー作の本書は2019年に刊行され、英米でベストセラーになった。2020年のブリティッシュ・アワードのチルドレン・ブック・オブ・ザ・イヤーを受賞。英国カーネギー賞の候補になった(カバーの著者紹介を改変)。
『このミステリがすごい』では2位、『週刊文春』ミステリーベスト10(海外部門)では2位と評価が高い。
カバーのイラストにはジャケ買いを誘う魅力がある。
B8405da49a054051bc971cc8076207cb自由研究には向かない殺人
ホリー・ジャクソン/服部京子訳 
創元推理文庫 
2021年8月
582頁

ピップ(あるいはピッパ)は頭脳明晰で快活な17歳の娘。夏休みが明けると、リトル・キルトン・グラマースクールの最終学年になる。ピップは夏休みの自由研究に、リトル・キルトンで起こった殺人事件を選んだ。
そのほかに、ケンブリッジ大学への願書の作成のために、マーガレット・アトウッドについての論文をまとめなくてはいけない。

その殺人事件とは、5年前にキルトン・グラマースクールに通う17歳の美貌のアンディが行方不明となり、その後アンディのボーイフレンドだったサルが自殺した事件である。
サルがアンディの携帯電話を持っていて、サルの爪にアンディの血痕が付着していた。彼女の車のダッシュボードにはサルの指紋が付いていた。サルが犯人と断定され事件に終止符が打たれた。
しかしアンディは行方不明のままだ。

ピップにはサルの無罪を証明しようとする理由がある。かつて義理の父親がナイジェリア人だということでいじめを受けたときに、1年上のサルが助けてくれたことがあった。それ以来、ピップにとってサルはヒーローだった。

ピップは自由研究という隠れ蓑を使って、事件を正面切って調べ直そうと考えた。サルの弟ラヴィが協力を申し出た。ラヴィも兄は犯人ではないと思っているが、殺人犯の弟があれこれ聞き回ろうとしても拒否されるだけだ。

サルの携帯電話からわかったことは、サルはアンディに何かやめて欲しいものがあったこと。それと、サルが「ぼくだ。ぼくがやった。すみません」と父親に送ったテキストは、誰か別の人間が打ったものだ。サルはピリオドを使わない。

ピップの身の危険を顧みない体当たりの捜査(取材と呼んだ方がいいかもしれない)で、アンディの過去の悪事が暴かれるにつれて、アンディが殺されてもしょうがなかったとピップは考えるようになる。

ネット社会を反映して、携帯電話やインターネット、SNSが物語の中心にある。
テーマはシリアスだが、17歳の快活な主人公の目を通して描かれているので暗くなく爽やかなところと、構成が緻密であるところが、本書の魅力だ。→人気ブログランキング
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2021年12月 7日 (火)

開署準備室 巡査長・野路明良 松嶋智左

警察小説のカテゴリーで才能を発揮する松嶋智左の文庫書き下ろし最新作。文庫書き下ろしは、『女副署長』『女副署長 緊急配備』に続き3冊目である。
著者の略歴は、〈元警察官、女性白バイ隊員。退職後小説を書きはじめ、2005(平成17)年に北日本文学賞、2006年に織田作之助賞を受賞。2017年『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』で島田荘司選、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。〉(新潮社、著者プロフィールによる)
B5bdb98b6f684ed4806d1580b0e15974開署準備室 巡査長・野路明良 
松嶋智左
祥伝社文庫
2021年9月

関東のとある県の市町村合併に伴い、5階建ての警察署が新築された。開署式を4日後に控えた姫野署では、野路明良(のじあきら)たち開署準備室のメンバーが準備に追われている。

一方、近隣の山中で頭蓋骨に陥没骨折のある白骨死体が発見された。12年前に、現金輸送車が3人組の強盗に襲われ5億円が強奪される事件が起こった。犯人の河島葵・隼の姉弟は逮捕されたが、逃げたもう一人の共犯者は逮捕されていない。

野路は後輩が運転する車に同乗していて交通事故に遭い長く入院した。運転していた後輩は亡くなった。野路は卓絶なバイクテクニックにより、全国白バイ安全運転競技会の優勝者となり、警察官から英雄視されていた。その事故で野路は利き手の指がうまく利かなくなり、また後輩を死なせたという良心の呵責から、辞表を提出したが引き止められたのだった。そして、開署準備室に配属された。野路とともに準備室で働く山部礼美巡査は警察学校で優秀な成績を修めて卒業しているせいか、上下の関係に無沈着で生意気である。

白骨死体が発見された所轄の水戸署では本格的な捜査が始まる。白骨死体は河島姉弟の共犯者の男であることが判明した。
刑を終えた葵がまず出所しアパートに住みはじめた。やがて隼も出所し葵とアパートで暮らしはじめる。捜査班は、姉弟が5億円をどこかに隠していてそれを手に入れようとするに違いないと二人を監視している。

キャリア警視である宇都宮沙織が開署準備室長の任につき、準備室に配属された最年長の飯尾は現金強奪事件の捜査員だった。ここで、12年前の事件と開署が間近に迫った姫野署がつながる。
宇都宮警視が準備の進捗状況を視察に姫野署に現れ、野路や山部巡査は緊張のなか応対する。そんなおり、山部の夫が何者かに暴行を受け瀕死の重症で病院に運ばれる事件が起こる。
さらに、開署2日前になって、署内の調整中の監視カメラに人影のような怪しい像が映る。手分けして署内を捜査したが、異変は発見されなかった。
そして、いよいよ開署当日を向かえる。

警察署の人間関係や事件の捜査の様子を重層的に描き、見事な群像劇が展開されている。→人気ブログランキング
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開署準備室 巡査長・野路明良/松嶋智左/祥伝社文庫/2021年9月
女副署長 緊急配備/松嶋智左/新潮文庫/2021年5月
女副署長/松嶋智左/新潮文庫/2020年

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