マイ・シスター、シリアルキラー オインカン・ブレイスウェイト
舞台はナイジェリアの首都ラゴス。
アヨオラはフェミをナイフで殺した。アヨオラから「殺しちゃった」との連絡が入り、姉のコルデがフェミのアパートに駆けつけた。コルデは看護師だから、殺人現場の証拠隠滅の知識と技術がある。部屋を消毒し終えたあと、姉妹はフェミの遺体を車で運び出し、橋の欄干から川に突き落とした。
マイ・シスター、シリアルキラー オインカン・ブレイスウェイト/粟飯原文子 ハヤカワ・ミステリ 2021年 198頁 |
姉妹は暴君のような父親とエキセントリックな母親のもとで育った。父親が一家に与えた数々の災難が明らかになっていく。これらはアヨオラに精神的なトラウマとなっていた。家族には父親という闇があった。
幼少の頃からコルデはアヨオラの面倒をみてきた。コルデは母親にアヨオラに災難が降りかからないようにフォローをするのが、お前の役目だと言われきた。アヨオラは肌の色が薄く美人なのでモテる。一方コルデは母親にそっくりで、体が大きくて色が濃く、美人ではない。
アヨオラは男を引きつける魅力を持った女性に育った。そして幾人もの男と付き合ってきた。
フェミは180cmもある大男で、激昂したからアヨオラは怖くなって、持っていたナイフで心臓を3回刺したという。実はアヨオラの殺人はフェミで3人目だ。
今回同様、これまで、コルデは母親の命令に従い殺人の証拠隠しをしてきた。
能天気なアヨオラがコルデの勤める病院にふらりと現れて、コルデがアヨオラをタデ医師に紹介する羽目になった。コルデはタデに密かに心を寄せている。アヨオラがタデに目をつけたことがコルデにとっては気になってしょうがない。二人がいい仲になって、その挙句アヨオラがタデを殺してしまうかもしれないという不安だ。
しかし、コルデの不安は現実のものとなり、タデはアヨオラにのめり込んでいく。
一方、警察が動き出す。
著者は1988年にナイジェリアのラゴスで生まれ、ロンドンに移住した。ロンドンとラゴスを行き来し、英国キングストン大学で法律と創作の学位を取得した。2012年にラゴスに戻り、出版社で編集の仕事に携わりながら短編小説を発表し高い評価を受けていた。
長編小説を書くかたわら自らの楽しみのために、気ままに本書を書いたという。そんな軽い気持ちで書いた本書は、スピード感があって魅力的である。
出版されるや瞬く間の世界が注目するところとになった。
2019年のロサンゼルス・タイムス文学賞、アンソニー賞最優秀新人賞、アマゾン・パブリッシング・リーダーズ賞を受賞、ブッカー賞の候補、女性小説賞の最終候補、全英図書賞(犯罪・スリラー部門)を受賞した。30言語での翻訳が予定されているという。→人気ブログランキング
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