暁の死線(新版)ウイリアム・アイリッシュ
本作は1944年に出版された。オールタイムベストの1冊。
故郷に錦を飾ろうという心意気でニューヨークに出てきた若い男女が出会い意気投合する。しかし、男はやむに止まれず屋敷から金を盗んでいた。
踊ることが大好きなブリッキーは、すらりとした22歳の赤毛。ダンスホールで男たちと踊ることを商売にしている。
そのブリッキーと踊った男が、声をかけてきて無理やりタクシーに乗せようとした。ふたりの間に入った電気工のクィンという若い男が、相手を殴りブリッキーを救った。
![]() ウイリアム・アイリッシュ/稲葉明雄 創元推理文庫 2016年 388頁 |
ブリッキーとクィンは アイオワ州の田舎町グレン・フィールズの出身だった。しかも家が裏隣なのだ。ブリッキーは5年前にニューヨークに出てきた。その後にクィン一家がブリッキーの家の裏に引っ越してきて、今度はクィンがニューヨークに出てきた。そのため今回出会うまで、ふたりに面識はなかった。
クィンが豪邸の電気工事に携わったときに、隠し金庫に男が金を隠すのを見てしまった。しかも、置きっぱなしにしておいた道具箱の中に屋敷の鍵が紛れ込んでいた。そのあとクィンが勤めていた店が倒産し、一文なしになった。クィンはその豪邸から金を盗んだという。
鍵と金を元の場所に戻さなければ、金を盗んだことが警察にバレて、捕まってしまうとブリッキーは言う。ブリッキーはニューヨークから故郷に帰るチャンスだと思った。鍵と金を豪邸に返し終わったら、ふたりで6時発のバスに乗ってニューヨークとおさらばして郷里に帰ることにした。
ところが屋敷には銃で撃たれた死体が転がっていて、殺人の真犯人を見つけ出さなければ、自分たちが殺人犯と疑われてしまう。ニューヨークで成功できなかったふたりが、故郷に帰るために乗り越えなければならないハードルが、とんでもなく高くなってしまった。
そして、ちょっとした手掛かり持って、ふたりは夜の街に出ていく。
有無を言わせぬ強引な展開で、「ボレロ」のようにクレッシェンドにことが進んで、真犯人に迫っていく。
巻末に、著者のウィリアム・アイリッシュは、スコット・フィッツジェラルドと肩を並べる作家であったが、フィッツジェラルドに先を越されてしまい、仕方なくミステリを書き始めたと、解説されている。→人気ブログランキング
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