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2022年3月 7日 (月)

一刀斎夢録 浅田次郎

『一刀斎夢録』は、『壬生義士伝』『輪違屋糸里』に続く、浅田次郎の新選組三部作の最終編。
近藤勇の天然理心流を修めた近衛師団の梶原稔中尉は、剣道の全国大会で警視庁の榊吉太郎警部に勝てないでいた。一方の榊は天覧試合を5連覇していた。
警視庁の道場に上がり込んで稽古を見ていた老人が竹刀の握りのこつを教えてくれたと、榊は梶原に語った。その人物は藤田五郎。4年前に警視庁を退職して、女子高等師範の守衛をしている。
その話を榊から聞いた梶原は、一升瓶の酒を持って藤田五郎に会いにいく。
69歳の藤田五郎の正体は、新選組三番隊組長であった斎藤一。人を斬りまくった経験から、剣の極意を語るという設定で話がはじまる。ちなみに、一刀斎とは斎藤一をひっくり返したもの。
01dacc8e6da540e195c0b9bd174f6bfc一刀斎夢録(上)
浅田次郎
新潮文庫
2013年
F7547b6fa1874f698d0e1603f628736e一刀斎夢録(下)

連夜、梶原は藤田宅に上がり込み、酒を酌み交わしながら藤田の一人語りを聞く。
わしの話を聞いても剣を捨てぬと誓えるかと、藤田は梶原に訊いた。そして斎藤一の語りがはじまる。

斎藤の人斬りの極意は、「一に先手、二に手数、三に逃げ足の速さ。他に何もない」という、なんとも実際的で拍子抜けするもの。

斎藤一は左利きに悩んでいた。どの師匠も右利きに直せと言ったが、近藤勇は違った。左利きが卑怯ではないかと悩んでいた斎藤に、近藤は「剣というものは、畢竟、斬るか斬られるかだ。己が斬られずに相手を斬るためには、さまざまな工夫をしなければなるまい。それを卑怯というてどうするね」説得力のある教えだ。流石、浅田次郎だ。

しかし、人間を糞袋と呼ぶ斜で構えた見方で新選組の隊員を語る斎藤は、隊員たちを褒めようとはしない。
「おぬしのいう天然理心流の大先輩はの、のちの世の弟子に語り継ぐほどたいそうな人物ではなかった。近藤は劣等感のかたまり。土方は見栄坊。沖田は凶暴きわまりない野犬のごとき男であった。」

京都を追われた新選組は破滅への道をたどっていく。
負け戦の連続であった戊辰戦争を語り、御一新の後に警視隊として加わった西南戦争を語る。西南戦争は西郷と大久保が士族の不満を治めるためにうった芝居であったという。そして、反乱軍の長ともいうべき西郷が英雄として上野の山に銅像が建てられたのは、筋を通したからだと、藤田はいう。
そして、明治天皇崩御の翌年、梶原と榊の天覧試合の場面で物語は終わるのである。
浅田次郎の構成の巧妙さと語りの上手さに引き込まれる作品である。 →人気ブログランキング
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五郎治殿御始末/浅田次郎/中公文庫/2021年
一刀斎夢録/浅田次郎/新潮文庫/2013年
壬生義士伝/浅田次郎/文春文庫2012年
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