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2022年7月27日 (水)

報復のカルテット ダニエル・シルヴァ

ロンドンの厳重に警備された大邸宅で、ロシアから亡命したオリガルヒ(新興財閥)が毒殺されるところからストーリーは始まる。暗殺に使われた神経毒のノビチョクはロシア製で、書類に染み込ませて邸内に持ち込まれた。殺害されたオリガルヒのヴィクトル・オルロフはプーチンの意に沿わぬ人物として暗殺の指令が出ていた。
Photo_20220727144601 報復のカルテット
ダニエル・シルヴァ/山本やよい
ハーパーBocks
/2022年4月

オルロフの館に書類を持ち込んだのは『モスコフスカヤ・ガゼータ』の女性記者であった。女性記者が書類を届けたあと、ロンドンの画廊経営者のサラ・バンクロフトが、オルロフが買おうとした絵画の前金の小切手を受け取りに訪れたが、オルロフはすでに殺されていた。
サラも神経毒に晒され病院に入院したが、大事には至らなかった。女性記者は出国しスイスに逃れた。サラはイスラエル諜報局のガブリエル・アロン長官の依頼で、これまでにしばしばCIAの作戦に加わってきた。
女性記者は「無名の男」から届いた書類をオルロフに数回渡したという。防犯カメラを精査すると「無名の男」は実は女で、ライン銀行のチューリッヒ支店のコンプライアンス担当者イザベル・ブレンナーだった。

このイザベルが物語左右する重要人物でる。ガブリエルはイザベルに目をつけた。チューリッヒ銀行ではロシアのオルガルヒによる膨大な金額の資金洗浄が行われていた。
イザベルが同僚と銀行の近くのカフェでランチをとっているときに、イスラエル国防軍がイザベルのスマートフォンをジャックした。その分析からイザベルは、高い知性と能力を備えた女性で、悪徳や倫理の欠如とは無縁のようである。さらにライン銀行の内部書類約3万点と彼女のメール10万点が情報として収集された。そして彼女がチェロの優れた演奏者であることもわかった。

オルガルヒのアルカージー・アキーモフは、膨大な富を武器に西側の政府関係者や貴族に金をばら撒いている。アルカージーは西側を内部から崩壊させようと企んでいる。アルカージーは、音楽業界に寄付していることがわかり、音楽家と親交があることが判明した。
イザベルが資金洗浄の情報に通じていることと、プロとして通用するチェロの腕前を持っていることが、アルカージーを陥れる武器だ。
ガブリエルはイザベルを使ってアルカージーを罠に嵌めよう仕掛ける。

本書のもう一つの主題は、先の米大統領選でバイデンに敗れたトランプが、選挙結果を不満として支持者を煽って連邦議事堂を襲わせた、前代未聞の事件である。著者はこの前代未聞の大統領の愚行が許せなかった。

暴動が起こっている最中のトランプの様子を次のように書いている。
〈・・・大喜びの大統領は、自分も議事堂への行進に加わると約束したあと、テレビで騒乱の様子に見入った。噂によると、大統領が気にしていたのは、憎悪で頭がいっぱいの狂暴化した群衆の薄汚い外見だったという。どうやら自分のイメージまで悪くなると思ったらしい。恐怖に慄くホワイトハウスの職員や議会の仲間が何度も懇願したにもかかわらず、大統領が暴徒に、“とても特別な皆さん”と呼びかけて議事堂から出て行くように言ったのは、午後4時17分になってからだった。〉
暴徒は、約2時間、議事堂内で狼藉を働いた。

巻末の「著者ノート」に、米国をロシアに売り渡そうとした最低の大統領であったトランプを、諜報という観点から書いている。→人気ブログランキング
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