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2022年8月

2022年8月27日 (土)

放送作家ほぼ全史 誰が日本のテレビを作ったのか 太田省一

著者は1960生まれ。テレビと戦後日本、お笑い、アダルトなど、メディアと社会・文化の関係をテーマに執筆活動を展開。著書に『社会は笑う』『ニッポン男性アイドル史』『紅白歌合戦と日本人』『SMAPと平成ニッポン』『芸人最強社会ニッポン』『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』『すべては、タモリ、たけし、さんまから始まった』「21世紀テレ東番組ベスト100』などがある。(裏表紙より抜粋)
海星社新書のキャッチコピーは、未来志向の読み手を大いに鼓舞する「武器としての教養」である。

放送作家はテレビ番組やラジオ番組の構成を担当する人たちである。番組の終わりに流れるテロップで、「構成」に名前が上がっている人たちが放送作家であり、別名、構成作家とも呼ばれる。
D1662c74cf864a69bebb783bd4b4979f放送作家ほぼ全史 誰が日本のテレビを作ったのか 
太田省一 
星海社新書 
2022年5月 249頁

著者によれば、〈本書は、放送作家という存在を通して見た一風変わったテレビ・ラジオ史であるとともに、それを通じて日本のマスメディア、エンターテインメント、さらには戦後日本社会の底流にあるものの一端を明らかにしようとするもの。言い換えれば、放送作家から見たメディア史・エンタメ史であり、放送作家の社会学。〉であるという。

番組を陰で仕切っている、稀には表舞台に出てくる、中には作家に転身し、直木賞作家になった人物もいる。この放送作家という職業、外国にはないという。
テレビ放送が始まる前から活躍した三木鶏郎や、自らテレビに出演し作家や政治家として活躍した青島幸男のような人物がいたからこそ、日本に放送作家という職業が定着したという。番組制作者でありながら、視聴者の目線を忘れず、社会がなにを求めているのかを敏感に察知する。テレビ局と視聴者を結ぶ役割を担ってきた。
放送作家の究極の目指すところはお笑いだという。

テレビの番組の大まかな変遷は次のようである。テレビは、戦後しばらくの間は風刺の時代であった。1960年代、高度成長時代を迎えると、テレビが娯楽の中心になった。1970年代から1980年代は音楽番組が花盛りとなった。
1980年以降、1960年時代と同じようにバラエティ番組が主流となるが、笑えるバラエティ番組の時代になる。1990年代、テレビはある種の成熟を迎えることとなる。バラエティでも別のジャンルと掛け合わせたような番組が作られた。バラエティ同様、1990年の後半以降は既存のパターンを打破るドラマが登場する。

最近はユーチューバーのフワちゃんをプロデュースする作家も存在するという。いまや、テレビが窮屈なプラットホームになって、ネットの方が自由だという感覚も存在している。

巻末には便利な人名索引がついている。→人気ブログランキング
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2022年8月23日 (火)

三星京香、警察辞めました 松嶋智左

著者は元白バイ隊員。2005年に北日本文学賞、2006年に織田作之助賞を受賞。2017年『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』で、島田荘司選ばらのまち福山ミステリ文学新人賞を受賞。著書に『貌のない貌 梓凪子の捜査報告書』『匣の人』『女副署長』(2019年)『女副署長 緊急配備』(2021年)『開署準備室巡査長・野呂明良』(2021年)がある(表紙著者紹介より)。
元警察官の視点で描かれる警察小説は、斬新である。
5f708631695b4747af70118ffd34ad97 三星京香、警察辞めました
松嶋智左
ハルキ文庫
2022年6月 317頁

三星京香31歳は176センチ、刑事部捜査一課、後藤班の係員。
刑事部長を殴って辞表を提出し、警察を辞めた。後輩が弱みを握られ、セクハラを受けたことに義憤に駆られ手荒い行動に出た。
辞職の真相を夫にも話さないことで、夫との間が気まずくなり、離婚調停になった。娘つみきの親権を争っている。
京香についた弁護士は、京香の幼馴染で3歳年下の藤原岳人であった。岳人は体が小さくいじめられたときは、京香が庇った。
京香は岳人の所属するうと弁護士事務所のパラリーガルの面接を受けることになった。そして仮採用になったのである。
弁護士の中には警察官を敵対視する者もいる。
警察にいいイメージを持っていない芦沢夢良とペアを組み、岳人が弁護を担当する鹿野省吾が起こした暴行事件の下調べをすることになった。
そして、鹿野の情状証人の羽根木有子が姿を消したのだ。
京香と夢良が羽根木有子を追いかけて新潟県燕市に出かけた夜、岳人が殺された。
警察の捜査とぶつかり合いながら、京香は事件の核心に迫っていく。

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三星京香、警察辞めました/松嶋智左/ハルキ文庫/2022年6月
開署準備室 巡査長・野路明良/松嶋智左/祥伝社文庫/2021年9月
女副署長 緊急配備/松嶋智左/新潮文庫/2021年5月
女副署長/松嶋智左/新潮文庫/2020年

2022年8月17日 (水)

雨・赤毛 モーム短編集Ⅰ サマセット・モーム

高校の英語の副読本か、自分が選んだ参考書か、あの頃、原文で英語の文学作品を読むことが流行っていた。それはサマセット・モームの小説だった。「爪の形」についてと、「レストランの勘定書の数字をかろうじて読める程度の照明」という場面が描かれていたことを思い出した。そのモームの小説は何か、それが気になってしょうがなくなった。ともかく、サマセット・モームなのだ。最も可能性が高いと踏んだのは『月と六ペンス』だが、そのような場面はなかった。『ジゴロとジゴレット』もハズレだった。
同級生との酒の席でこのことを話題にしたら、モームの副読本は『雨』『アシュデン』という情報が流れてきた。早速、『雨・赤毛』を読んだが、どちらの場面も出てこなかった。
Fbd4840e97d6429dbc71f3607c0b12eb雨・赤毛 モーム短編集Ⅰ
サマセット・モーム/中野好夫 
新潮文庫 
1959年 213頁

本書には、モームのいわゆる「南海もの」の3作品が収録されている。


南の島で熱心に布教を続けてきたデヴィッドソン夫妻は、医師夫妻とともに雨で足止めを食っている。そこに27歳の女が登場して、同じ宿に足止めされ、数人の船乗りを部屋に入れ酒盛りをはじめる。デイヴィドソンは女を悔い改めさせようと、徹夜で神の教えを説くが、思い通りにはいかない。雨の降り注ぐなか事件が起こる。

赤毛
船長は島のニールソンの家を訪ねた。書物に囲まれた家だった。ニールソンは船長とどこかで会った記憶があるという。
ニールソンが話し始める。相思相愛の美貌の若い男レッドと娘が一緒に暮らしていた。レッドはある日いなくなり、娘はレッドの帰りを待った。
そして30年たった。娘はニールソンの妻となりふくよかな体つきになった。

ホノルル
バトラー船長は以前に船を沈めて乗客員を溺死させたことで、免許を剥奪された。それでハワイの中国人が経営する船会社の小さな船の船長をしている。
丸々とした船長は、女にもてる。船室には価値のありそうな見事なふくべがあった。それを手に入れた話を聞く。→人気ブログランキング
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雨・赤毛 モーム短編集Ⅰ/サマセット・モーム/中野好夫/新潮文庫/1959年
月と6ペンス/サマセット・モーム/金原瑞人/新潮文庫/2014年
ジゴロとジゴレット/サマセット・モーム/金原瑞人/新潮文庫/2015年

2022年8月 4日 (木)

ウクライナ危機後の世界 大野和基編

7名(ユヴァル・ノア・ハラリ、ジャック・アタリ、ポール・クルーグマン、ジョセフ・ナイ、ティモシー・スナイダー、ラリー・ダイアモンド、エリオット・ヒギンズ)が、ウクライナ戦争およびその後について書いている。
Photo_20220804205001 ウクライナ危機後の世界 
大野和基編
宝島社新書
2022年6月 224頁

プーチンが勝てば、このやり方が「ニューノーマル」になってしまう。各国の軍事費は急増するし、核を保有しようとする国が増える。プーチンを勝たせてはいけない。他国に侵略しても特にならないことを知らしめるべきだというのが西側諸国の共通の認識である。
平和の色合いは国防費を見ればわかるという。ここ数年の世界の国々の軍事費は国家予算の平均5〜6%。EU加盟国では3%に下がった。ロシアは国の予算の20%を軍事費に費やしていた。ちなみに、日本はGDP比1.24%(2022年)だった。

ウクライナ戦争がもたらすプラスの面は、西側諸国の文化的分断が回避される。特に西欧の国々に広がっていたナショナリズムとリベラリズムの間にある溝が埋まる。もうひとつは、ロシアの化石燃料をあてにすることなく、クリーン・エネルギーための新マンハッタン計画がスタートすることとなる。(ユヴァル・ノア・ハラリ)

権威主義国家は民主主義国家を貶めることで、自国民が民主主義に感化されないように、民主主義国の人種差別や経済格差を強調したり、国家元首を貶めたりする。
ロシアをボイコットすることは最も愚かで非生産的な決定であり、ロシアはヨーロッパであるべき。世界の平和はロシアの民主化が絶対条件である。(ジャック・アタリ)

脱グローバリゼーションで世界経済はブロック化される。(ポール・クルーグマン)
プーチンは今やいかなる倫理観も持ち合わせていない。(ジョセフ・ナイ)

プーチンは三流のファシスト哲学者イヴァン・イリインの思想を取り入れた。
イリインは、レーニンの赤軍によるボルシェヴィキ革命から祖国を守るには、ファシズムになることによってのみ可能であると考えた。その救世主は国家元首であり、独裁者であるべきで、一党独裁すら不十分であるとする。プーチンとその取り巻きの振興財団(オリガルヒ)は、イリインの思想を悪用して少数の富裕層による寡頭政治を正当化した。

2012年に書かれたプーチンの論文には、ロシアとはカルパチア山脈からカムチャッカ半島までの広大な土地に広がるロシアという文化を共有する人々のことであり、ロシアは国家を超えた偉大な文明である。文化を共有するものは友であり、そうでないものは敵である。
このような帝国主義的な考えによれば、ウクライナ人もウクライナという国も存在しないことになる。(ティモシー・スナイダー)

権威主義国の「シャープパワー」とは?
ロシアの権威主義をハードパワー、ソフトパワー、シャープパワーという観点で見ると、ハードパワーとは軍事力や経済的強制力、ソフトパワーとは文化活動や独立メディア、市民団体への助成金などを通じて得られる影響力のことである。
シャープパワーとは、ソーシャルメディアなどを利用した介入操作によって、民主主義に分裂をもたらす力のこと。
クリントン対トランプの大統領選で、ロシアが民主党の全国委員会のファイルに侵入して、民主党員の15万通に及ぶメールを漏洩させた。クリントン候補の信用失墜に影響を与えた。
イギリスのブクレジットにも影響を与えた。
賄賂はシャープパワーの重要な道具である。つまり民主主義国家を陥れる手段として使われている。21世紀になって民主主義が後退したのは、シャープパワーのせいもある。

1990年の初頭、ソ連が解体し東西冷戦が終焉を迎えて、専制国家の43%が民主主義国家に移行した。2000年代に入るとその割合は20%に減少し、2010年代には17.3%まで落ちた。民主主義体制の国は少数派になりつつあるのだ。
2019年、世界の人口の52%は非民主主義国に住んでいる。

ウクライナ戦争は、もはや二国間の戦争ではない。民主主義と権威主義のいずれかが世界を担うのかを賭けた戦いである。(ラリー・ダイアモンド)
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第三次世界大戦はもう始まっている/エマニュアル・トッド/大野舞/文春新書/2022年
ウクライナ危機後の世界/大野和基編/宝島社新書/2022年

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