娼婦の本棚 鈴木涼美
著者は、大学生時代にAVに出演し、そのあとキャバクラ嬢をしながら東大の大学院を卒業して、フリーのライターになった。本書は書評でありエッセイでもある。性風俗で働きクスリもやって気づいたら30歳代後半になっていた。知り合いには自殺をしたり、行くへ不明になった者もいる。そういう人生を送ってきたもののまともでいられたのは、読書のおかげだという。
本書のメインテーマは、オンナノコからオンナになるまでの精神的に不安定な時期の葛藤である。思春期の自身を分析し見つめ直す、そのような内容の書籍が多く取りあげられている。
迫力満点の表紙カバーは「娼婦だったけど、文句ある」と言わんばかりである。
娼婦の本棚 鈴木涼美 中公新書ラクレ 2022年 253頁 |
著者が紹介する本は以下の20冊。
『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル/『”少女神“第9号』フランチェスカ・リア・ブロック/『悲しみよ こんにちは』サガン/『いつだってティータイム』鈴木いずみ/『Pink』岡崎京子/『性的唯幻論序説 改訂版「やられる」セックスはもういらない』岸田秀/『蝶々の纏足』山田詠美/『わが悲しき娼婦たちの思い出』ガルシア・マルケス/大胯びらき』ジャン・コクトー/『遊女の対話』ルーキアーノス/『ぼくんち』西原理恵子/『大貧帳』内田百聞/『シズコさん』佐野洋子/『夜になっても遊びつづけろ』金井美恵子/『私家版 日本語文法』井上ひさし/『モダンガール論』/『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』鷲田清一/『桃尻娘』橋本治/『モモ』ミヒャエル・エンデ/風の谷のナウシカ』宮崎駿
これらのなかで、特に気にかかるのは以下の2冊。
『”少女神“第9号』の項には、「オンナノコとオンナの間にある、センシティブで荒々しい時間を、パステルカラーのジーンズやヒョウ柄のソファーや M&Mの緑色のチョコやダイエットソーダで彩りながら、9篇の物語にしたのがフランチェスカ・リア・ブロックの『”少女神“第9号』です」と書いている。→『“少女神“第9号』
もうひとつは、『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』である。ファッションついての哲学的な論考の書である。
本項では、「ファッションにはそういう意味で、初めから不良性が、いかがわしさがつきまとう。もともと等身大のファッションなんてありえないのであって、つねに背伸びするか、萎縮するか、つまりサイズがずれてしまうのが人間だ」という鷲田清一の文章で結んでいる。→人気ブログランキング
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