未読王購書日記 未読王
埃にまみれてシミができ変色したどうみても読みそうにない本を処分した。その中には、後で買うことになる『カジノ・ロワイヤル』(イアン・フレミング/東京創元社/1963年)と『ミステリ・ハンドブック』(早川書房編集部編/ハヤカワ・ミステリ文庫/ 1991年)が含まれていた。『未読王購書日記』(未読王/本の雑誌社/2003年)が見当たらないので、処分した中に入っていたかと思ったが、本棚の隅に捨てようかどうか迷っているグループの中にあった。
未読王購書日記 未読王 本の雑誌社 2003年 |
『未読王購書日記』は、タイトルどおり、ただただ著者が古書やたまに新刊本を購入し、それにちょっとした日常の出来事をくわえた、なにが面白いのか説明し難い本だ。なにしろ処分しようと思った本だ。未読王の正体は男性であることは間違いないが、住んでいるところが名古屋くらいしか情報が漏れていない。というのははるか昔の話で、今はオフ会を主宰しているらしい。
未読王はむちゃくちゃ本を買いこむ。すでに所有している本を、ダブりとわかっていてもトリプルかもしれないと思っても構わず買う。どうかしているのじゃないかと思うくらい無茶をする。将来古本屋でもやるつもりなのか。ターゲットは多くがミステリやSFである。10冊に3冊くらいはタイトルに記憶のある本が出てくるが、あとは知らない本ばかりだ。未読王の本に関する知識は並ではない。所有書籍数が2万冊を超えているとのことなので、未読王は買った本を覚えきれないし、ましてや読むことなど到底叶わないと開き直り、ダブリもトリプルもやむをえないと言い訳をする。本の内容については、ほぼ触れていない。なんともいえない魅力とそしてパワーに満ちた本である。不思議なことに奇書『未読王講書日記』のページをめくると俄然本を買いたくなるのだ。
おそらく未読王は買うこと自体が楽しいのであって、買う本を選ぶときの高揚感に抗すことができないのだろう。購入を決めた本をレジへ持っていって金を払い自分の所有物になったことに、極上の幸福を感じるのだろう。その幸福感もせいぜい続いて数日だ。わたしも同類だから想像がつく。購書依存症なのだ。買った本はしばらく身の回りに置いておく。だから鞄の中は買ったばかりの本と読みかけの本が何冊も詰まっている。わが購書の黄金律は「手に入れたいと思った本は躊躇なく買う」で、ミステリ好きだが特にジャンルは決まっていない。もちろんダブりもトリプルもある。
2万冊はどこに収納しているのだろう。倉庫でも借りているのだろうか。わたしの場合、未読王の四分の一ほどだが、同居者からは増える本に散々嫌味を言われてきた。それはなんとかやり過ごしている。
ところで、『カジノ・ロワイヤル』と『ミステリ・ハンドブック』を買い戻した理由である。『カジノ・ロワイヤル』には、ジャームス・ボンドがレストランの前菜に鰐梨を食べるところが出てくる。鰐梨とはアボカドのことだというのをどこかで読んで、それを確認しようと思った。『ミステリ・ハンドブック』は、取り上げられている「読者が選ぶミステリ・ベスト100」つまり「オールタイムズ・ベスト100冊」を読んでしまおうと思い立ったからだ。
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