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2023年1月11日 (水)

アメリカの教会 キリスト教国家の歴史と本質 橋爪大三郎

なぜアメリカは宗教国家なのか?本書はこの疑問に答えてくれるという。
カトリックを除外すると、一番多いのは、バプティスト、次がメソジスト。アメリカは移民国家だから、それぞれの出身国の宗教を持ち込む。それにアメリカで生まれた宗派もある。モルモン教、エホバの証人、クリスチャン・サイエンス、アドヴェンティストと、多数だ。
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アメリカの教会 キリスト教国家の歴史と本質
橋爪大三郎
光文社新書 
2022年10月 476頁

 本書は、ケンブリッジ版『アメリカの宗教の歴史』から引用してまとめたもので、『アメリカの宗教の歴史』のダイジェスト版といったところだ。それに著者の見解が添えられている。

最終的にはカソリック教徒が一番多くなるが、そうはさせじとアメリカに上陸し続けたのはプロテスタントだった。だからカソリックは阻害され続ける。一方、プロテスタントは分派していく。新宗教も生まれる。各国からの移民たちがそれぞれ祖国の宗派を持ち込む。
たどり着いた約束の地アメリカに、伝統的な風習や規範がないからキリスト教が拠り所なる。そして教会同士の切磋琢磨というかバトルというかが繰り返され、宗教国家アメリカが出来上がるというわけだ。

ヨーロッパでは、カトリックとプロテスタントの宗教戦争が起きた。ウェストファリア条約(1648年)で、住民の信仰は、君主と一致すべきと決められた。君主はプロテスタントかカソリックのいずれかを選択し、お互いを尊敬する。ヨーロッパの人々はそれぞれ生まれた国によって信仰する宗教が決まる。アメリカとは大きく違う。

イングランドは、1534年にヘンリー8世が国教会を樹立してカトリックから分かれた。イタリア、スペイン、ポルトガル、フランス、ベルギー、ドイツの一部、ポーランド、アイルランドがカトリック。ドイツの大部分と北欧がルター派。イングランドが国教会、スコットランドが長老派。スイスとオランダが改革派(カルヴィン派)、のように地域ごとに分かれることになった。
ドイツや北欧では唯一の正式な教会はルター派と決め政府が税を徴収して、教会を維持したり、牧師の給料を払ったりする。政教分離ではない。ルター派以外は信徒から金を集める。

カトリックは人びとが自由に教会を設立できない。教皇庁のコントロール下にある。
イングランド国教会もイングランド国王が取り仕切っているので、人びとが自由に教会を造ることはできない。

アメリカでは教会同士が競争する。新しい教会ができたり、潰れたり合併したり、信者を取り合いする。宗派間の争いにより、土地から追い出したり、追い出されたりして、宗派は生き残っていった。アメリカは教会が作った国だ。アメリカには伝統的な地域社会は存在しない。そのかわりにいくつもの教会がある。

大部分の人びとが教会の日曜礼拝に出席した。義務ではないが安息日が厳格だったので、ほかにすることがなかった。牧師たちは、皆さんの祖先は大西洋を渡ってやってきて、世界で最も純粋な教会を立ち上げた。旧約聖書の約束の地イスラエルのようなこの地に生まれたことは幸運だと、説教した。だからこそ、改革を怠ると神の怒りに触れると。

ローマ・カトリックはアメリカの植民地で憎まれた。残忍な外国の圧政者とみられ、ほとんどの植民地で非合法だった。ニューヨークにカトリックが入ったのは南北戦争の後だ。独立戦争のとき、カトリックはわずか1%だった。合衆国の成立後、カトリック教徒の移民が増え、今ではいちばん人数が多くなった。
カトリックとモルモン教は異質で恐れられた存在だった。
ヨーロッパのユダヤ人おおよそ3/1がアメリカに渡った。

メソジストは1784年に教会として旗揚げした。バプティストは個人の集まりなので、会衆を超えた組織を作りにくい。長老派の福音主義者ライマン・ビーチャーが牧師として活躍した。ぐずぐずしていると、西部はカトリックの手に落ちてしまう。そうなればキリスト教国家は成り立たなくなると訴えた。

一般に、キリスト教は植民地時代の初期が黄金時代でその後世俗化が進んで下火になると思われていた。アメリカに関しては誤解である。どれかの宗派に属する人は1776年には19%、1980年位は62%である。過去200年間教会のメンバーは増え続けている。ヨーロッパとは逆である。

トランプの支持者は福音派である。福音派はもとをたどれば敬虔主義である。大学の神学教育や知的な権威、教会の組織、牧師の決まり切った説教などどうでよいと思う。村から村、町から町を説教をして回る説教こそ本物だと思う。トランプはこの巡回説教司のにおいがする。素性が怪しく、いかがわしく、人間の弱さと悪さが透けてみえる。でも憎み切れない人懐っこさも併せ持っている。田舎の敬虔主義の人びとがかつて巡回説教師に惹かれたように、福音派の人びとがトランプに惹かれた。
福音派は、プロテスタントのほぼすべての教派に存在し、特に改革・長老派教会、バプティスト教会、メソジスト教会、ホーリネス教会、ペンテコステ派、カリスマ派の教会に多くみられる。

アメリカの特徴は、政府と無関係ないくつもの教会の組み合わせだ。イングランドは政府+国教会。ドイツは政府+ルター派。ロシアは政府+ロシア正教。フランスは政府+哲学。日本は政府+国家神道。ソ連は政府+共産党。中国は政府+中国共産党。政府と「無関係ないくつもの教会」が組になっているアメリカのような国は、どこにもない。→人気ブログランキング
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