女副署長 祭礼 松嶋智左
松嶋智左の女副署長シリーズ第3弾。
主人公の田添杏美は、1作目の『女副署長』で、日見坂署に県内初の女性副署長として赴任する。大型台風が接近する暴風雨の中、署内の駐車場で胸をナイフで刺されて警察官が殺される。この不祥事のせいで、2作目『女副署長 緊急配備』では、県北の佐紋署に左遷される。高齢者の荷物をバイクに乗って強奪する事件や山中の女性撲殺死体、警察官が頭部を殴られ重傷を負う事件が起こる。
そして、今回は、署員300人を抱える県内最大の旭中央署に転勤となった。
女副署長 祭礼 松嶋智左 新潮文庫 2022年10月 335頁 |
杏美が赴任してまもなく、旭中央署にはキャリアの俵貴美佳が署長として赴任した。独身の貴美佳は副署長の杏美の日見坂や佐門での活躍を耳にしているという。杏美のいる中央署に来られてラッキーだといった。58歳の杏美は副署長になって3年になる。
旭中央署の所轄では、6年前に、両親とともに祭に来た5才の女児が行方不明になった。事件は未解決のまま6年が経ち、祭の時期になると市民に事件への協力を呼びかけるキャンペーンが行われている。
また、2年前に男が強盗傷害事件を起こして逃走し、最近、旭中央市に舞い戻ってきているらしい。そして、男の内縁の妻が雑居ビルの屋上から転落し死亡する事件が起こる。さらに、署長がクラブを経営するハーフの男と付き合いはじめ、大事にならないうちに手を打ってくれと、杏美は同僚から進言される。キャリアには任期をまっとうして何事もなく帰ってもらわなければならない。さらにこともあろうか、事件の捜査にあたる警察官がボツリヌス菌による食中毒で倒れるという不祥事までが起こる。
そこで、杏実は県警本部に応援を頼んだ。杏美が指名したのは花野司朗警部だ。杏美が副署長として初めて赴任した日見坂署で刑事課長をしていた。「グリズリー」と杏美が密かに呼んでいる体躯も態度もでかい辣腕刑事である。
キャリアの不祥事を治め、行方不明事件を解決し、強盗傷害犯を検挙すれば、県内初のノンキャリアの女性署長が誕生すると同僚は杏美を励ます。
そして祭礼の日が近づいてくる。一向に解決しない硬直した状況に、杏美は一芝居打って出るのだった。
前2作もそうだったが、本作も同時多発的に起きた複数の事件の捜査が並行して進行するタイプのモジュラー型警察小説である。代表的な作品にR・D・ウィングフィールドの「フロスト警部シリーズ」がある。→人気ブログランキング
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