« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »

2023年3月

2023年3月28日 (火)

野獣死すべし 伊達邦彦全集1 大藪春彦

1958年に発表された、大藪春彦のデビュー作。
「野獣死すべし」の他に、「復讐篇」「渡米篇」が収録されている。
勧善懲悪の要素なく、金を手に入れる目的のために人殺しを行う。このようなただただバイオレンスの物語が早稲田大学の同人誌に載った。それを江戸川乱歩が新感覚のハードボイルド小説として雑誌『宝石』に掲載した。
〈「野獣死すべし」は、フランク・ケーンの「特ダネは俺に任せろ」の盗作〉と指摘されている。
B07b746f5a2340e8ab28fcfa96ae86c1野獣死すべし 伊達邦彦全集1
大藪春彦 
光文社文庫 
1997年 362頁

主人公の伊達邦彦はハルピンで生まれた。父は製油会社を経営。ところが会社を乗っ取られ、建設関係の官吏となった。一家は、北京、奉天、新京と移り住み、戦争が始まった頃は平壌にいた。その後、父は兵士として駆り出され、南方の戦地に向かった。
敗戰となると、ロシア兵がやってきて狼藉の限りを尽くした。邦彦は母と妹と仁川に向かい、帰国しようとする。

日本に着いてからは、大阪の名門高校に入る。マルクス・エンゲルス全集を貪り読む。し ょっちゅう職員室に呼びだされ教師から脅される。天皇批判する学生新聞を発行し、新聞は焼かれる。父が死に金庫には株券と現金があった。
私立大学に入り、ボクシング部射撃部に加わる。
防衛大学からコルトの自動拳銃を盗み出す。翻訳の仕事をしたりして大学生活を送りながら、犯罪に手を染めているようになる。

最初は、警視庁捜査一課の警部の額を撃ち抜いて殺した。身元につながるものをはぎ取り、拳銃を奪う。やり終えて自宅に戻り、ウィスキーのトリスを3杯あおる。トリスはサントリー・ウィスキーの格付で最低のもの。

次は、警察官を装って夜の繁華街で幅を効かせる陳と徹を職務質問して、殴り倒し金を奪う。さらに、タクシーを襲ってタクシーを操り、現金輸送車を襲い、2人を銃で殺して金を奪う。タクシー運転手はブラックジャックで撲殺する。

彼の野望は一般に「悪」とされていることをやってのけ、うまく逃げ通す事にあった。
彼にとって悪とは己の行手を阻む障害物でしかなかったし、悪を行うことは追い詰められた人間の行う必然であった。

その秋、修士論文を書き上げた。ハーバード大学の大学院から9月から入学を許可する旨の通知が届いた。
そして大学入学金強奪計画を、余命いくばくもない同級生に持ちかける。→人気ブログランキング
にほんブログ村

2023年3月17日 (金)

アンソロジー カレーライス!!大盛り 杉田純子編 

カレーは、縦はピンからキリまで、本格派から学校給食まで、横の広がりは日本からインド東南アジア、英国まで、その種類は縦横無尽なのだ。インドやネパールやタイやビルマのカレー、子供の頃に食べたカレー、わが家の秘伝のカレー、あとは立ち喰いで飲んだ後に食べるカレーなどが綴られている。
推し並べて、高級ホテルのカレーは旨くないという評価。仰々しいのは旨くないということなのだ。
41ilqitq0l_sx353_bo1204203200_ アンソロジー カレーライス!!大盛り
杉田純子編 
ちくま文庫 
2018年 317頁

寺山修司の「歩兵の思想」は、いずれも歩兵であるが、堅実なライスカレー人間よりもラーメン人間のほうがいく分可能性が持てるというもの。

阿川弘之の「米の味・カレーの味」の中で、カレーの主なスパイスは漢方薬であるという記述がある。そう指摘されればそのとおりだ。
〈ターメリックが漢方の止血薬鬱金、グローブは丁子、フェンネル茴香、シナモン桂皮、ナツメグの肉荳蔲とカルダモンの小荳蔲は共に健胃剤、オレンジ・ピール陳皮、クミンが馬斤でキャラウェイが姫茴香。〉

「ビルマのカレー」(古山高麗雄)カレーは懐かしさで食べている。味ではないというもの。

角田光代の「カレー、ですか・・・・・・」は説得力がある。
〈妻や恋人のいる男性に、「彼女の作る料理で一番好きなのは何?」と訊ねたときに、彼女たちをがっかりさせる答えは「カレー」である。〉というもの。1番好きなものとしてあげるのは、妻や恋人の手料理をありがたく食べていない。だからカレーという彼女たちをがっかりさせる不適切な答えが出てくるという見解だ。

内館牧子の「カレーライス」は、著者が相撲やプロレスにのめり込んだのは幼少の頃からで、体の大きい人が好きだったという。幼少期の内館はいじめられていたから、相撲のひとり遊びをする気味の悪い子だったという。垣間見た若手プロレスラーの食べっぷりが、見事だったという話。文章が生き生きとして上手い。力が入っている。→人気ブログランキング
にほんブログ村

アンソロジー そば/PARCO出版/2014年
アンソロジー カレーライス!!大盛り/杉田純子編/ちくま文庫/2018年
そばと私(文春文庫)
麺と日本人/角川文庫/2015年
アンソロジー 餃子/PARCO出版/2016年
アンソロジー ビール/PARCO出版/2014年
うなぎと日本人(角川文庫)
ずるずる、ラーメン(おいしい文藝)/河出書房新社/2014年
ぷくぷく、お肉(おいしい文藝)/河出書房新社/2014年
つやつや、ごはん(おいしい文藝)/河出書房新社/2014年
ぐつぐつ、お鍋(おいしい文藝)/河出書房新社/2014年

2023年3月 9日 (木)

ランチ酒 原田ひ香

人情話とB級グルメとの取り合わせが絶妙の人気のシリーズだ。
犬森祥子はバツイチで31歳。亀山太一が社長を務める「中野お助け本舗」に勤務する「見守り屋」である。仕事をする時間は、夜の11時からから翌朝5時まで。様々な事情を抱える客のニーズに応える。キャバクラ嬢の娘の子守りであったり、老犬の世話であったり、アルツハイマーの老婆の相手など、寝ずの番で見守る。

51jtls0ztgl_sy291_bo1204203200_ql40_ml2_ランチ酒
原田ひ香 
祥伝社文庫 
2020年10月 322頁

祥子を支えてくれるのは、北海道の高校の同級生である亀山と幸恵。東京に出てきたときも、離婚して娘をおいて家を出たときも2人の世話になった。亀山には仕事を与えてもらったし、住居も安く提供してもらっている。
小学校2年になる娘とは、月に1回会うことになっているが、元夫の都合で会えないこともある。

仕事が終われば、待ちに待ったライチタイムである。店が開く午前11時に入店し、日の高いうちに堂々とランチ酒で喉を潤しながら料理に舌鼓を打つのが、祥子にとって至福の時だ。何しろ仕事を終えてのランチ酒である。誰に気兼ねすることもない。
あるときは肉丼に芋焼酎のロック、次の日はラムチーズバーガーにビール、別の日は回転寿司に冷酒、そして焼き魚定食にビールなど、勤務場所とその日の気分で店を選び、メニューと飲むものを合わせる。

幼い娘を引きとれなかった負目を背負って、「見守り屋』の仕事で試行錯誤を繰り返し、ランチ酒を生きる糧するアラサー女の泣き笑いが描かれている。→人気ブログランキング
にほんブログ村

2023年3月 4日 (土)

青春と変態 会田誠

本書は著者が描く絵画作品と似たテイストだ。下品でエロチックでグロテスクだけれど、どこか初々しさがある。
出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 』(花田菜々子/河出文庫/2020年)のなかで、紹介された。

ぼくこと会田誠は、変態で格好よくなくモテないことを自認する北高の2年生。
北高と清和女子高のスキー部が、バスに乗り合わせて、三ツ村温泉スキー場に向かっている。恒例のスキー合宿である。北高のスキー部はふだんの練習もなければ、先輩後輩の上下関係もない下手糞なスキー部である。清和高はまともな高校の運動部のようだが、何しろ女子だから、実力は似たようなものだ。
Photo_20230304085301青春と変態
会田誠
ちくま文庫 
2013年 262頁

バスの中でノートに書いていると、となり座った清和高の湯山さんに、何を書いているのかと尋ねられる。ぼくは読書をすることと、スキーがちょっと上手いくらいしか取り柄がない変態である。本書はそのノートに書いた内容がそのままストーリーになっている。
1年生から、湯山さんとぼくは「文学カップル」と呼ばれている。湯山さんは清和高一の美人だ。人気があって言い寄った男は何人もいるが、ことごとく断わられた。そんな湯山さんが気安く声をかけてくれたり、周りから「文学カップル」と呼ばれていることに、ぼくは満更でもない。

ぼくの呪わしき秘密は「トイレ覗き」である。靴流通センターの駐車場に落ちていたエロ雑誌がきっかけだった。トイレでの女性の放尿シーンを捉えた写真に惹きつけられたのだ。そこで、護国神社ならなんとかなると思い、男女共同トイレに籠ること2時間、来たのは婆さんだった。

スキー場のトイレは男女兼用で、仕切りの下が15センチほど空いている。トイレの個室に籠り覗きに成功する。ぼくは覗きをしても勃起しない。いたって冷静なのだ。2日間にわたり覗き見をして、あそこの美しさと顔の作りは一致しないことに気づいた。
湯山さんのものを見るに至り、覗きから足を洗うことにした。そして、湯山さんに恋していることに気づいた。

女子風呂覗き事件が起こったり、別れがあったり、恋が芽生えたり、振られたり、有象無象の青春の蠢きがある。

著者は本書の成分表を、「赤面24.3%/スカトロ8.3%/吐き気20.8%/スキー5.5%/純愛15.4%/涙2.1%/犯罪性12.5%/思想0.1%/お笑い11.0%/反省0%」としている。→人気ブログランキング
にほんブログ村

« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »

2024年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ