青春と変態 会田誠
本書は著者が描く絵画作品と似たテイストだ。下品でエロチックでグロテスクだけれど、どこか初々しさがある。
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 』(花田菜々子/河出文庫/2020年)のなかで、紹介された。
ぼくこと会田誠は、変態で格好よくなくモテないことを自認する北高の2年生。
北高と清和女子高のスキー部が、バスに乗り合わせて、三ツ村温泉スキー場に向かっている。恒例のスキー合宿である。北高のスキー部はふだんの練習もなければ、先輩後輩の上下関係もない下手糞なスキー部である。清和高はまともな高校の運動部のようだが、何しろ女子だから、実力は似たようなものだ。
青春と変態 会田誠 ちくま文庫 2013年 262頁 |
バスの中でノートに書いていると、となり座った清和高の湯山さんに、何を書いているのかと尋ねられる。ぼくは読書をすることと、スキーがちょっと上手いくらいしか取り柄がない変態である。本書はそのノートに書いた内容がそのままストーリーになっている。
1年生から、湯山さんとぼくは「文学カップル」と呼ばれている。湯山さんは清和高一の美人だ。人気があって言い寄った男は何人もいるが、ことごとく断わられた。そんな湯山さんが気安く声をかけてくれたり、周りから「文学カップル」と呼ばれていることに、ぼくは満更でもない。
ぼくの呪わしき秘密は「トイレ覗き」である。靴流通センターの駐車場に落ちていたエロ雑誌がきっかけだった。トイレでの女性の放尿シーンを捉えた写真に惹きつけられたのだ。そこで、護国神社ならなんとかなると思い、男女共同トイレに籠ること2時間、来たのは婆さんだった。
スキー場のトイレは男女兼用で、仕切りの下が15センチほど空いている。トイレの個室に籠り覗きに成功する。ぼくは覗きをしても勃起しない。いたって冷静なのだ。2日間にわたり覗き見をして、あそこの美しさと顔の作りは一致しないことに気づいた。
湯山さんのものを見るに至り、覗きから足を洗うことにした。そして、湯山さんに恋していることに気づいた。
女子風呂覗き事件が起こったり、別れがあったり、恋が芽生えたり、振られたり、有象無象の青春の蠢きがある。
著者は本書の成分表を、「赤面24.3%/スカトロ8.3%/吐き気20.8%/スキー5.5%/純愛15.4%/涙2.1%/犯罪性12.5%/思想0.1%/お笑い11.0%/反省0%」としている。→人気ブログランキング
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