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2023年6月

2023年6月19日 (月)

壬生の女たち 藤本儀一

新選組の隊士に関わった女たちの目線で、物語が構成されている。
実在の女性も架空の女性も登場する。
Img_0293_20230619114101壬生の女たち
藤本儀一 
徳間文庫 
1985年 283頁

血の花が散る
菱屋の女お梅は、新撰組局長の芹沢鴨に借金を返してもらうようにと、菱屋の旦那に言いつけられる。壬生の八木の屯所を訪れたお梅は芹沢鴨の犯されてしまう。そして芹沢の愛妾になる。
芹沢は酒癖も女癖も悪い。新撰組の若手藩士の佐々木愛次郎がつきあっている17歳のあぐりを狙っている。その2人を新撰組から逃げるように佐伯又三郎が手引きした。 その佐伯が千本通の朱雀野に出たときに、不意に愛次郎に斬りつけ、あぐりを犯した。ところがその佐伯もその場で背後から斬りつけられて殺された。
雨の夜、祇園から芹沢と平山五郎と桔梗屋の吉栄、平間重助は輪違屋の糸里と酔っ払って帰ってきた。そして、芹沢以下3人は寝込みを襲われて惨殺された。

→史実では、深夜、数人の男たち(試衛館派の土方歳三、山南敬助敬助、沖田総司、原田左之助という説が有力)が奥の部屋へ踏み込み、芹沢・平山・お梅を殺害して立ち去った。
お梅は芹沢鴨とともに惨殺されたとなっている。
→ 新選組興亡録 歴史・時代アンソロジー 網田一男編 角川文庫 2003年 
「降りしきる」北原亞以子
もこの事件を書いている。

風ぐるまの恋
お糸であるのに、あの人はお琴と呼んだ子守女のお糸が沖田総司に恋をする。
山南敬助の逃亡を、喀血しながら追いかける沖田に同行する。
山上は俳句趣味だ。芭蕉と木曾義仲の墓が背中合わせになっている、琵琶湖畔ある義仲寺を訪れると、沖田総司は読んだ。
沖田とお糸は山南を先回りして、屯所に連れ戻す。

尻まくりお伊都
お伊都は幾松姉さんと桂小五郎先生の使い走りをしていた。
新選組ではいつの頃から尊攘派をゴリと呼んでいた。川魚のゴリである。
新選組隊士13名がゴリ狩りにやってきた。桂小五郎を逃すためにお伊都は百姓の持ってきた担桶に立ち小便をするというのだ。その隙に桂小五郎に逃げてもらった。
お伊都の独り住いの家に、新撰組四番隊組長・松原忠司が訪ねてきた。
松原は相談事があるという。喧嘩の相手を五条河原で斬って、その遺体を妻女の元に持って行って、素性のわからぬ浪人に斬られたと嘘をついた。ところが妻のお房といい仲になってしまった。そこで今日のきっぷのいいお伊都の振る舞いを見て打ち明けようと思ったと、突拍子もないことをいう。お伊都はお房に会ってみると言った。
お伊都はお房と松原の壮絶な最期を目にする。

吹く風の中に生きた
まさは17歳のときに原田左之助と夫婦になると決めた。
原田左之助は腹には十字の傷がある。若気の至りで切腹の真似事をした。そのあと縦に創をつけて傷痕は十字になった
まさは男の子を産み茂と名付けた。
二人目を妊娠した。原田は片付けなければならないことがあると言った。
それで寺田屋で龍馬を襲ったのだが、逃げられてしまった。原田は敵でも味方でも自分より偉いと思う人には尊敬の念を抱くという。
この年の11月に坂本龍馬が暗殺されて、現場に原田左之助の刀の鞘が落ちていたという。原田は隊の中で刀を盗まれたと、手柄を譲った謙虚な男という評価になった。

赤い風に舞う
山崎丞の妻になったお鈴の話。11歳のとき、京から37里離れた出石町の広戸甚介様のお屋敷に奉公に上がった。広戸様は豪商でこのお屋敷に奉公するだけで幼馴染から羨ましがられた。いい嫁入りの口が見つかったと言われたものだ。御当主様の妹、八重様がいらしゃった。甚介様は桂小五郎に心酔されいた。甚介様から桂小五郎の命を守るようにと命じられた。
ある日、慌ただしくなった。新撰組が桂小五郎を探しにやってくるというのだ。
桂小五郎は必ずで出石に立ち寄るはずだとの見込みで捜索に来た。八戸様と桂小五郎様が西念寺に隠れていて、そこに二人の着物を届けた。山﨑丞に呼び止められた。窯にいる陶工の父に朝ご飯を届けたと答えた。
桂小五郎は、京都をどんどん焼きにした男だという。焼けた家27513、橋が41、寺社は253、堂上邸18、諸家屋敷51。
山崎から聞いた話を、甚介様に打ち明けた。新選組は、永倉新八、斎藤一、藤堂平助、山崎丞、川島勝司、谷三十郎の6人が来ているという。
桂小五郎は名を変えて八重と金物屋を営んでいる。その金物屋がおかしいと新選組は気づいたようだが、お鈴は備前の行商人だと答えて山崎を騙した。お鈴は山崎と夫婦の契りを交わした。京の騒ぎが静まったら、隊士は散らばる。そうしたら迎えにくるという。山崎は、慶応4年の春先に傷が悪化して亡くなった。

あてを過ぎた男
若大夫の深雪を近藤勇は貰い受けようとする。
トロフィー愛妾ということだ。
淀川を下って大坂に行けと近藤様はいう。島原に連れ戻されないように俺がするという。
1ヶ月後、木津屋の御主人から、大坂の新町にある識屋という妓楼に行くようにいわれた。
秋口になって近藤勇が現れたのだ。そして証文を見せて目の前で破り捨てた。
仏光寺下屋敷に住む手筈を整えていた。
それが近藤が深雪の妹お考と、絡まっているのを見てしまったのだ。
近藤から二百両の手切金が支払われた。
そして、斎藤一と男と女の仲になった。
斉藤とも別れ、木津屋に相談すると、大坂の薬問屋の後妻におさまった。
明治になって、鴻池のご当主が紹介してくれた斎藤一こと藤田五郎に会った。警視局警部補という役職で士族になっていた。

夕焼けの中に消えた
西本願寺の床屋「床伝」の店主は新撰組の諜報役だった。店主の娘おみのは山崎烝と横倉甚五郎のどちらかに操を捧げようと思っていた矢先に、攘夷派の4人の侍に強姦された。おみのは開き直り、反幕派の情報を身体で集めた。
反幕派に父親もおみのも正体がバレ、父親は絞首刑、おみのは10人に犯された。→人気ブログランキング
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新選組の料理人/門井慶喜/光文社/2018年
五郎治殿御始末/浅田次郎/中公文庫/2021年
一刀斎夢録/浅田次郎/新潮文庫/2013年
壬生義士伝/浅田次郎/文春文庫2012年
輪違屋糸里/浅田次郎/文春文庫/2007年
壬生の女たち/藤本儀一/徳間文庫/1985年
燃えよ剣 上/司馬遼太郎/新潮文庫/1972年
燃えよ剣 下/司馬遼太郎/新潮文庫/1972年

2023年6月 1日 (木)

編集者の読書論 面白い本の見つけ方、教えます 駒井稔

本を作る立場の編集者が書いた読書案内だから、幅広く深くて、なにより面白い。書籍全般の土台の部分から攻めている。海外の図書館や書店、ブックフェアなどにも足繁く通う。
欧米では編集者の地位は作家と同等であるが、日本では編集者は黒子あれと当たり前のようにいわれてきた。そのことについて、〈「編集者は黒子である」という抽象性から抜け出して、職業人としての編集者像を明確に提示できるようにすることが私の狙いでした。敢えていまどきの言葉でいえば、編集者は「クリエイター」なのだということを強調したかったのです。〉と書いている。著者は、編集者の資質とは第一級の批評眼をもち、ビジネスパーソンであらねばならないとしている。
Photo_20230601084001編集者の読書論 面白い本の見つけ方、教えます
駒井稔 
光文社新書 
2023年 339頁

本書の特徴的なところは、ある作家が別の作家の作品について触れていることを紹介したり、つまり本同士のつながりや作家同士の縦や横のつながりについて書いていることである。具体的には、マルクスの『資本論』に、ロビンソン・クルーソーが登場するという、なんとも意外なエピソードである。
シルヴィア・ビーチの『シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店』に、ヘミングウェイとの交流が書いてあって、ヘミングウェイの『移動祝祭日』に「シェイクスピア書店」というエッセイがあるというようなことである。幅広い知識に裏付けされた本の紹介は、読んでみようという気にさせる。

各章は、次のような項目で成り立っている。
Ⅰ、世界の〈編集者の〉読者論、Ⅱ、世界の魅力的な読書論、Ⅲ、世界の書店と図書館を巡る旅、Ⅳ、「短編小説」から始める世界の古典文学、Ⅴ、自伝文学の読書論、Ⅵ、児童文学のすすめ。

ロシアの編集者イワン・スイチンの『本のための生涯』には、スイチンは当時のトルストイやチェーホフなどおよそあらゆるロシアの小説家とつながりがあり、政府関係者との豊富な人脈があったことが書かれている。

NRF出版部は、プルーストの『失われた時を求めて』の原稿をボツにする。原稿審査会でのジッドの発言で一度はボツになった。後にジッドは、その過ちをプルーストに謝罪する手紙を送っている。

『パブリッシャー―出版に恋をした男』(トム・マシュラー著)。ブッカー賞を創設した編集者である。
ジョン・レノンの本を2冊出版して売れ行きがよかった。レノンから本を出したがっている人物がいると、オノ・ヨーコを紹介されたが、ユーモアを介さないオノ・ヨーコがレノンの恋する相手だというのが信じられなかったという。出版は断った。亡くなった時に駆けつけると、45分待たされ、自己紹介を求められ帰ってきたという。

毛沢東は若い頃から猛烈な読書家であった。
『毛沢東の読書生活―秘書がみた思想の源泉』の著者は16年もの年月を毛沢東の秘書として過ごした。毛沢東は、読書をしていて昼寝を忘れるとか食事を忘れるのはしょっちゅうであったという。

本の中には鈍器本(鈍器となるような分厚い本)と呼ばれる本が何冊かあるが、最も厚い本は、サモセット・モームの『読書案内』である。

夏目漱石は「予の愛読書」でロビンソン・クルーソーの作者であるスティーヴンソンの文章を褒めているということを知ると、スティーヴンソンの作品を俄然読みたくなる。(宝島/スティーヴンソン/村上博基訳/光文社古典新訳文庫)

『アメリカのベストセラー』(武田勝彦/研究社出版/1967年)には、「ベストセラー」という言葉が誕生した経緯が書いてある。日本のベストセラー誕生についても触れている。
〈江戸時代には「千部振舞」という言葉があった。(中略)発行部数が千部になると、書店主と従業員がうちそろって氏神様にお詣りにゆく。そしてお祝いの宴を開く。(中略)江戸時代も末期になり町人の文化が発展すると文学物は大いに愛読された。柳亭種彦の『偽紫田舎源氏』4篇38巻(1820〜40)は、1万5千部が売りさばかれたと記録されている。この数字は当時の印刷技術を考慮すると信じ難いほどの数といえよう。〉→人気ブログランキング
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