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2023年7月

2023年7月20日 (木)

ティラノサウルス解体新書 小林快次

恐竜の王者といわれるティラノサウルス・レックス(暴君トカゲの王)を頂点とする、ティラノサウルスについて、最新の研究結果を解説している。ここ10年間でティラノサウルスの研究は目覚ましく発展した。

恐竜は三畳紀の始め2億5190万年前に登場し、ジュラ紀を経て白亜紀の6600万年前に忽然と姿を消している。それは巨大惑星がユカタン半島沖のメキシコ湾に衝突したことによる。
恐竜は中生代の1億6000万年の間、繁栄 していた。そのなかで、ティラノサウルスは6800万年前から6600万年前の約200万年の間生存した。
4065313155 ティラノサウルス解体新書
小林快次 
講談社 
2023年3月 319ページ

ティラノサウルスは18種いて、1軍、2軍、3軍に分ける。3軍はティラノサウルスの中でも古い時代に生きた原始的な特徴を持つティラノサウルスの仲間で、比較的小さいグループである。前足の指は3本で、トサカがある。1軍はティラノサウルス・レックスを含む体が大きい進化型である。頭だけでも1メートルあり、指は2本、体重は6トンもある。なかでもティラノサウルス・レックスは超肉食恐竜と呼ばれる。
2軍は1軍と3軍の間の特徴を備えている。トサカはなく、指は3本、体は中位である。3軍(プロケラトサウルス科と呼ぶ)が1軍へと進化していく過程で生まれたのが2軍である。これら1軍から3軍までを、「ティラノサウルス上科」と呼ぶ。

地殻変動による大陸の変化が恐竜の進化に影響を与えた。
三畳紀後半の超大陸パンゲアの時代には、アメリカ合衆国の東海岸はアフリカ大陸のモロッコと接していた。ジュラ紀後半になって大西洋ができ始めても北アメリカからヨーロッパへ行くのは大変距離があった。イギリス・ドーセットとアメリカ・ユタ州で発見されたストケソサウルス(2軍)は、北アメリカとヨーロッパを行き来していた。

ティラノサウルスの進化と体の大きさについては、3軍から1軍にかけて体は大きくなっている。3軍に属しているユティラヌスやシノティラヌスは体は大きいが、顎は小さく歯も薄い。ティラノサウルスの巨大化は3軍の時に一度起こるが、その後1軍になるまで巨大化は起こらなかった。

ティムルレンギア(2軍)は進化は頭から起こることを示してくれた。ティムルレンギアは、体が小さく他の肉食恐竜に怯えながら暮らしていたが、ティラノ軍団1軍にしか見られない、脳や聴覚の発達が確認できる。

南米、オーストラリアにもティラノザウルスの軍団がいた可能性がある。ティラノサウルス軍団は自らの足で世界中に広がったのである。

ティラノ軍団(ティラノサウルス上科)は、3軍と2軍以上に分ける。3軍はプロケトサウルス科を意味し、2軍以上はパンティラノサウルス類と名付けられた。3軍はヨーロッパとアジアに生息し、2軍以上は世界に生息はにを広げていったという考えに基づいている。

ティラノ軍団以外の大型肉食恐竜には、ケラトサウルス982キロ、アロサウルス2396キロ、サウロファガナクス3591キロ、アクロカントサウルス5250キロなどがいる。ちなみにティラノサウルスは6168キロ。
ティラノ軍団はおそらく、アロサウルス類が絶滅に追いやられるまで、陰で息を潜めて生きていたに違いない。地球温暖化で海面が上昇し、平地が少なくなったことでアロサウルス類が絶滅し、自分たちの出番を得た。

トリケラトプスの骨盤にティラノサウルスの歯の跡がついた化石が発見された。肉食恐竜のティラノサウルスが、植物食恐竜のトリケラトプスを食べていた証拠である。

肉食恐竜が植物食恐竜を捕食しようとしている決闘恐竜の化石が見つかっている。

今のところ、ティラノサウルスの卵の化石は見つかっていない。
産みっぱなしか抱卵か。著者の説は、産んで穴の中に入れ植物で覆い、生まれてくるまで卵を見守っていたというものである。

年齢を知るためには成長停止線を探し、その状態から年齢を推定する。
ティラノサウルスは30歳で怪我や痛風結節や、細菌感染などの跡が見られる。その頃に寿命をむかえたと考えられる。→人気ブログランキング
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2023年7月 5日 (水)

チャットGPT vs.人類 平和博

GPTとは、生成事前学習トランスフォーマーGenerative Pretrained Transformer)の略である。トラスフォーマーは、グーグルの研究者たちが2017年に発表した深層学習モデルのこと。
チャットGPTは、一般の人にとって最先端のAIを利用するハードルを劇的に下げた。
Gpt-vsチャットGPTvs.人類
平和博
文春新書 
2023年6月 222頁

チャットGPTは、もっともらしいデタラメを吐き、それは「幻覚」と呼ばれている。正しさや適正さで判断しているわけではない。人間が持っている常識がないからだ。
しかしデタラメな回答が悲劇を招くこともある。グーグルは生成AIのバードの誤った回答を表示したことで、親会社アルファベットの株価が急落し、1日で総額1000億ドルが消失した。

論文における剽窃検知ツールを試みようとしている。
オープンAI社が提供しているAIによる生成テキストの検知ソフト「AIテキスト分類器」は、テキストがAIによって生成されている可能性を、非常に低い、低い、不明、やや高い、高いの5段階で評価している。チャットGPTは、参考文献すら捏造してしまう。
「電子透かし」も使われているが、決め手となるような効果的な対策はない。

チャットGPTの5大リスク、プライバシーの侵害、企業秘密の漏洩、雇用の喪失、サイバー犯罪、そして制御不能な進化への懸念について、それぞれの事例を提示している。

某画家の作品として生成AIが作成した画像を、グーグル検索が取り込み、それが某画家の代表作と表示してしまった。
ある収賄事件についてチャットGPTに回答を求めると、内部告発者が被告となっていた。
チャットGPTに、氏名、メールアドレス、住所、クレジットカードの下4桁の番号が表示されたことがあった。
企業秘密が漏れる。アマゾンの社内データとチャットGPTの回答とが類似する事例があったため、社内の機密情報をチャットGPTに入力しないよう警告を出したという。

AIの進出によって効率化の影響を受ける職業は何か。
全面的に影響を受ける職業として数学者、税理士、財務定量アナリスト、ライター・作家、ウェブデザイナー。GPT自身による評価では、公認会計士・監査人、ニュースアナリスト・記者・ジャーナリスト、弁護士秘書・事務スタッフ、臨床データマネジャー、気象変動アナリストなど84職種が挙げられた。
身体活動が中心となるアスリートや料理人、電線設置・修理工などは影響なし。

米IBMのCEOは従業員の採用を一時停止するという。そうすると約7800人の雇用が喪失するハリウッドの脚本家たちは映画、テレビにおける脚本をAIの学習データとして使うことの制限を掲げた。

大規模言語モデルによってフィッシングやオンライン詐欺は、より迅速に、ずっと本物らしく、そして極めて大規模にできるようになった。
米大統領戦においてフェイクニュースが問題になったが、より巧妙に、ローコストで行いうるだろう。
「街の声」や「ネットの声」が捏造されるかもしれない。

チョムスキーらは、AIには知性が欠落していると指摘した。
極めて深刻な欠陥は、知性の最も重要な能力を欠いているということだ。その事象がどんなことかとか、過去にどうだったか、今後どうなるのか、という記述と予測の能力だけでなく、何がその事象ではないのか、そしてその事象の可能性のあるものとは何か、可能性のないものは何かということを説明する能力がないのだ。それらは説明という能力の構成要素であり、真の知性の証だ。

チャットGPT、は、万能さが喧伝され、そこに知性を投影してしまいがちだ。知性の中核となる価値判断応力の部分は空洞だ。チョムスキーらの指摘は、知性よりも、むしろ思考の欠如、規範への隷属の姿が浮かんでくるとする。生成AIの広がりは事実関係や倫理を逸脱した情報が膨張していくリスクも意味する。チョムスキーはそれらを疑似科学と呼び、そのような事態に警鐘を鳴らす。

タイムは、2023年1月18日の記事で、オープンAIがチャットGPTで有害な内容を抑制するためのデータ加工を、サンフランシスコのアウトソーシング会社「サマ」に委託し、実際の作業はケニアの労働者が担ったと報じている。
現地の労働者が受け取った賃金は、時給1.32ドルから2ドル。オープンAI社は時給12.50ドル総額20万ドルで契約を結んだという。どんでもない搾取が行われていた。

チャットGPTのデータの収集には、問題のあるサイトも含まれていた。ロシアの国営メディア「RT」はフェイクニュースの発信源であると、EUは配信を全面禁止している。RTやヘイトスピーチの温床とされる「4chan」や白人至上主義のサイト、反トランスジェンダーのサイトが含まれていた。

AI覇権競争では米国、中国が抜きん出ている。日本ははるかに遅れている。→人気ブログランキング
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