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2023年10月

2023年10月20日 (金)

木挽町のあだ討ち 永井紗耶子

第169回直木賞、第36回山本周五郎賞をW受賞。
江戸っ子の話し言葉の小気味良いリズムに乗って、すらすら読むことができる。

Photo_20231020171001木挽町のあだ討ち
永井紗耶子 
新潮社 
2023年1月 267頁

2年前の睦月の晦日、雪の降る夜、元服前の美少年の菊之助は、父親を殺めた下男を討った。その仇討ちの現場を見ていた何人かの人物から、菊之助の縁者を名乗る武家が仇討ちの様子を聞き出す。

まず武家が芝居小屋森田屋の木戸芸者一八から話を聞く。木戸芸者とは芝居小屋の入り口にいる客引きのこと。
一八が木戸芸者が板についた頃、菊之助が森田屋に現れてしばらく黒子として働いていたという。仇討ちを果たして、無事に本国に帰り家督を継いで母上も大層喜んでいらっしゃると、手紙がきたという。

次は、森田屋で殺陣の指南をしている与三郎もという人物も仇討ちの一部始終を見ていたという。菊之助さんに木刀で指南申し上げた。そして雪の降るの夜、仇討ちを成し遂げられたと言った。

女形の芳澤ほたるは端役の連中の衣装を整える仕事をしている。菊之助には凛とした美しさがあった。ある日、菊之助が古い赤い着物をもらいにきた。

仇討ちとはいうけれど、菊之助は仇を探している様子もない。敵がどこにいるか知っているし、あちらも菊之助に見つかっていることを知っているというのだ。この辺りで訳ありの仇討ちだということがわかる。

小道具の久蔵は無口を通り越して「ああ、うん」しか言わないが、内儀お与根さんがよく喋る。菊之助は久蔵のところで寝泊まりしていた。
歌舞伎役者の團蔵丈は、子供を亡くした久蔵に『菅原伝授手習鑑』に出てくる松王丸の子の首を作るよう命じたという。

仇討ちを見たと武家に語る人物たちは、睦月の晦日の雪の降る夜に、赤い着物を纏った菊之助が相手の首を持った手を掲げたのを見たという。そんな、いかにもの所作で完結した仇討ちの裏側が語られる。
清々しくほのぼのとした読後感に浸ることができる。→人気ブログランキング
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2023年10月14日 (土)

その昔,ハリウッドで クエンティン・タランティーノ/田口俊樹 

1969年、ハリウッドの黄金時代が終わりを迎えようとしていた頃、落ち目の俳優リック・ダルトンと彼のスタントマン兼付き人のクリフ・ブースが、再び輝きを放とうと奮闘する姿を描いた作品。なお同名の映画『ワンス・アポナタイム・イン・ハリウッド』では、リックをレオナルド・デカプリオが、クリフをブラッド・ピットが演じている。
Img_0307 その昔、ハリウッドで
クエンティン・タランティーノ/田口俊樹 
文藝春秋 
2023年5月 464頁 

膨大な数の映画のタイトルがそこらじゅうで挙げられ、それらを片っ端から歯に衣着せぬ厳しい評価をくだす。偏執狂の視点がタランティーノのタランティーノたらしめるところなのだ。
戦争に勝利したアメリカのハリウッドの映画はお気楽なものだった。一方、戦争で敗れた欧州や日本の映画はその内容に含意があったし、最後まで見ないと意味がわからないものもあった。と映画を評価している。

リックはイタリア映画に出演することになるが、それが、落ち目になる曲がり角だと思っている。その思いをクリフが払拭させる。リックはかつてテレビの西部劇で人気を博した俳優だが、時代の変化に伴い出演のオファーは激減。現在は、ドラマの悪役やゲスト出演などの単発の仕事で食いつなぐような状態である。

そしてある日、リックの隣にロマン・ポランスキーと女優のシャロン・テート夫妻が越してきた。紛れもなくポランスキーは若手のポーランド人監督として、もっとも成功しているひとりだ。そしてアイラ・レヴィン作の『ローズマリーの赤ちゃん』の監督を任せられる。
リックは、シャロンに興味を持ち、彼女に近づこうとする。
 
一方、ハリウッドはヒッピーのカルト団体「マンソン・ファミリー」の影響を受けつつあり、1969年8月9日に実際に起きたシャロン・テート殺人事件へと導線が敷かれていく。→人気ブログランキング
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