セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点 セシリア・ワトソン
セミコロンはルネッサンス期の1494年にイタリアのベネチアで生まれた。いくつもの新たな記号が生まれ消えていったが、セミコロンは残った。セミコロンはピリオドとカンマの中間的な存在である。コンマより重くピリオドよりは軽い区切り。セミコロンは接続詞の代わりに用いられることがある。セミコロンを使うことで、2文の関係性を強く表していると、説明されている。
セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点 セシリア・ワトソン 萩澤大輝/倉林秀男 左右社 2023年9月 188頁 |
作家の対応は異なる。マーク・トウェインはセミコロンを外そうとする校正者に雑言を吐いた。一方、カート・ボネガットは、まったくもって何の意味も持たない記号であり、一切使わないことを推奨するとした。
レイモンド・チャンドラーは、私立探偵・フィリップ・マーロウの登場する小説ではセミコロンをめったに使っていないが、エッセイではふんだんに使っているという。チャンドラーは、セミコロンついて、マーク・トウェインと同じように校正者とやり合っている。著者は、トウェインもチャンドラーもセミコロンの使い方を十分に心得ていたのだと解説する。
メルビルの『白鯨』は、4000を超えるセミコロンで宙吊りにされた鯨について述べていると書いている。メルビルの奔放さと制御不能さが度を増していくなか、白の色の恐怖を与えるにはセミコロンの役割は大きかったという。『白鯨』の論説し、ひいては作家メルビルについても言及している。
言葉のプロを自認する人、著者の基準では、論説を何本か、著書を1冊、あるいは少なくとも学位論文を執筆した経験があるというような人たちは、規則に厳しい対応をする傾向がある。規則に対して強く反発するのはプロだということがわかったという。
句読点は西洋の司法を混乱させてきた。句読点の打ち方で、条文の解釈を悪意や偏見で歪められ悲惨な結果を招くことがあった。
文法書を暗記するほどの規則マニアである著者が本書を書いた理由は、句読点の位置次第で著者の意図が十分に伝わらなかったり、まるで正反対の意味を伝えてしまうかもしれないということを熟知していたからだろう。→人気ブログランキング
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セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点/セシリア・ワトソン/萩澤大輝・倉林秀男/左右社/2023年
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