ブルーボーイ事件 中川千英子
1965(昭和40年)、高度経済成長のもと国際化に向け売春の取り締まりきびしくなった。東京オリピック、大阪万博と国際的なイベントが続く中、世界に向けてクリーンな日本をアピールしようとする国の方針に従い、赤坂書が売春婦を取り締まりしたところ、手術を受けた男娼がいた。ブルーボーイと呼ばれる、性転換手術を受け、体を女性的に変えた者たちである。戸籍は男性のまま女性として売春する彼女たちは売春防止法では摘発対象にならない。そこで、警察は生殖を不能にする手術は、優生保護法に違反するとして、性転換手術を行なった赤城医師を逮捕した。
ブルーボーイ事件
中川千英子 朝日文庫 2025年10月
2025年11月14日公開
飯塚花笑 監督
脚本:三浦毎生 加藤結子 飯塚花笑
日活/KDDI 配給
坂口吉郎の名を捨てて、サチになってから7年過ぎ、恋人の若村篤彦と同棲して1年になる。サチはオフィス街にある喫茶ビーナスのウェートレスとして働いている。篤彦は次の開発チームに抜擢されて仕事は順調だ。篤彦が結婚指輪を渡そうとすると、サチは「ちゃんと女になってからにして」と言った。
そんなある日、弁護士の狩野がサチのもとを訪れる。赤城の弁護を引き受けた狩野は、証人として出廷して欲しいと依頼する。今の生活を壊したくないと証言を拒んだものの、赤城が逮捕され残りの手術ができなくなった。
新たな医師を探すうち、かつて働いていたゲイバーの同僚アー子(桐島)と再開した。自分のバー『アダム』の開店の奔走するアー子は、裁判での証言を決めていた。一方、ブルーボーイたちの元締めとして働くメイも承認を引き受けるが、和装で現れた彼女はこんな裁判は茶番だとバカにする。
アー子が証言台に立つ日がやってきた。手術の正当性を証明したい狩野は、アー子たちは「性転換症というか精神疾患を「抱えた人々であり、手術はその治療の一環である」主張した。その言葉にアー子は猛然と怒り、自分は「女として普通に生きたいだけだ」と声を荒げる。そんなふたりを傍聴席のサチは不安げに見つめていた。
アー子の店『アダム』のオープン記念リサイタルは延期された。アー子は2〜3日経って遺体で発見されて、死因は撲殺だった。
赤城医師は、「正当な医療行為と認めることはできない。40万円の罰金刑に処する」と、有罪判決を受けた。このとき、性転換手術に至る5つの指針が示された。
1977(昭和48年)、カルーセル麻紀がモロッコで手術を受けたことが話題になった。
1998(平成10年)、埼玉医科大学病院で「公に認められた医療行為として性転換手術が行われた」と報じられた。
狩野弁護士は、角を曲がったところで足を止めた。鮮やかな水色のワンピースを着た女性が帰宅した男性から楽しそうに鞄を受け取っている。ふたりはそのまま小さな商店に入っていった。商店の看板には『テーラー サチ』とあり、ショーウィンドウーには女性物のワンピースが飾られていた。
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