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2025年11月 1日 (土)

世界秩序が変わるとき  新自由主義からのゲームチェンジ   齋藤ジン

著者は見た目は歌手のイルカにそっくりな外見はおいておくとして、経済政策分析のスペシャストである。
これから日本の経済が良くなっていくと、予測している。
2021年以降、著者は世界のプロの投資家に、「新自由主義な世界観に支えられて既存システムはその信認(コンフィデンス)を失った。根幹世界観へのコンフィデンスが崩れた以上、パラダイムシフトが発生する」と訴えきたという。日本は今、数十年に一度のチャンスを迎えている。そしてその結果、日本が勝ち組になる、という喜ばしい話である。
そう言われてみると、数年前から何となく、日本が良くなる予感なものを強く感じていた気がする。

Photo_20251031121501 世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ
齋藤ジン
文春新書
2024年12月

 

 


当初、話のスケール大きすぎて、あまり理解されなかったという。時間の経過とともに、パラダイムシフトが明らかになり、今ではマクロの投資判断の不可欠な、最重要要因の一つになっている。著者が指摘したように、日経平均株価は2023年の春頃から上昇基調にある。

東西冷戦後世界の秩序を支えてきたのが、新自由主義的な世界観である。本書の意味する新自由主義は、1930年代以降、世界システムの支配的な世界観となった「大きな政府」の挑戦として始まり、1991年のソ連崩壊を機に、新しく世界基準システムとして受け入れられるようになった「小さな政府」の価値観を指す。
政府の意思決定や役割を縮小し、市場原理、民権企業や個人の意思、判断、選択をより重要視するものである。たとえば、各国政府裁量が大きい通称政策の代わりに、ルールベースの貿易を推進するために、WTO(世界貿易機関)が作られたのは1995年である。それは新自由主義的な価値観を現実化するためのメカニズムであった。
ところが、新自由主義に対して、世界各地で反発が起きている。新自由主義の世界観は信認を失い、既存システムが大きく揺らぎ、機能しなくなっている。
そうした現象が病気の症状だとすれば、病根こそがそれまでの行動規範となってきた新自由主義価値観の崩落なのだという。

ここで重要なポイントは、既存システムを支えてきた世界観が変化するとき、新しい勝者や敗者が生まれる点であるという。実際、新自由主義へのパラダイムシフトが起きたとき、それを主導し、変化をうまく乗り切ったのは、カジノのオーナーであるアメリカだが、アメリカは日本に勝てないテーブルに座らせた。冷戦下の日本は「大きな政府」の時代のゲームで勝ちすぎたため、アメリカの戦略的競争のターゲットになった。
新自由主義の下で、日本はまさに最大の敗者になった。「失われた30年」で日本の地位は低下し続けた。
逆に、新自由主義台頭の恩恵を最も享受したのは中国である。世界の工場の地位を確立し、技術移転によって急速の成長を遂げている。新自由主義に変わる新たな世界観がこれから登場するとともに、再び勝者と敗者入れ替えが始まるという。

いずれにせよ、今この瞬間、私たちの目の前で、次の30年を規定するであろう、新たなカジノのルールが書かれようとしているという。そして同時に日本の社会、経済は「失われた30年」とデフレのノルム(状態)から解き放たれつつある。日本は既に変わり出したという。

[カバーの著者略歴を抜粋]
在ワシントンの投資コンサルティング会社共同経営者。1993年に渡米。ジョン・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院修士。投資コンサルティング業務を営む米国のG7グループを経て、2007年、オブザーバトリー・グループを米国で共同設立。ヘッジファンドを含むグローバルな機関投資家に対し、各国政府の経済政策分析にコンサルティングを提供。
本書は、NHK「ニュースウオッチ9」、「NHKスペシャル」、「おはよう日本」、テレ朝「大下容子ワイドスクランブル」、などのマスコミに取り上げられたと、帯に堂々と書かれている。そして、(投資家の)ソロスに10億ドル儲けさせた、ベンセント財務長官の盟友とある。

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