http://misyuramen.cocolog-nifty.com/tsundoku/2025/11/post-536584.html 人生はスラップスティック: 2025年12月

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2025年12月

2025年12月21日 (日)

Kaedeニュージランド南島をレンタカーで車で走っている。助手席に乗っているのは28歳の木下亜子(福原遥)、車を運転しているのは須永恵(福士蒼汰)。ひとつ年上の恵は亜子の恋人。ふたりの趣味は天体観察、恋人同士なってから10年以上が経つ。小さなカフェのテラス席で喉を潤した後、近くを散策した。亜子は夕焼けの色の楓を拾う。亜子は高校生の頃は毎日星を見ていた。ナミビア、アイベラ半島、そしてここテカポは、世界一星空が綺麗なところに選ばれている。亜子は助手席に背中を沈めると手にしている楓をくるくる回す。その時の反対車線を走ってきた大型車が道を逸れてこちらに突っ込んできた。恵は死んで、亜子は物が二重に見える後遺症が残った。
ショックで混乱した亜子は瓜二つの双子の弟涼を恵だと思い込んでしまうが、涼は本当のことを言えずにいた。幼馴染の梶野(宮沢氷魚)だけが真実を知り涼を見守っていた。涼を慕う遠藤日和(石井杏奈)と亜子の行きつけの店の店長(宮近海斗)が違和感を抱き始める。亜子が涼を恵君と呼んだからだ。


監督:行定 勲
脚本:高橋泉
原案・主題歌:スピッツ「楓」
ネタバレあり

Kaede4 亜子と梶野は共同で、天体アプリの開発を手掛ける小さな会社を経営している。恵の本棚には天文関係の本が並び、望遠鏡の鏡筒には「Kei」の文字は刻印されていた。出勤の手段は亜子は電車で、涼はバスで通っている。涼は公園の裏手のコインロッカーからリックを出した。黒いリックには薄手の上着、Tシャツ、パンツが収められている。公衆トイレで着替えて恵に変装するのだ。涼は大丈夫、自分はまだ演じ続けることができると自分に言い聞かせている。
二重の生活に戸惑いながらも、明るく真っ直ぐの亜子に涼は惹かれていく。いつしか亜子は涼にとって一番大切な人になっていた。一方、亜子は打ち明けられない秘密がある。
12年前の冬の夜、暗い空き地で2人とも高校のブレザーを着て亜子と恵は望遠鏡で星空を見ていた。彗星に発見3_20251221192501者の名前が命名されるのを知ってわくわくした。亜子が発見すれば、木下彗星となる。
亜子は複視の手術が必要だった。入院する期間を出張と偽って涼に伝えた。涼が仕事道具を運んでいるのを後輩の日和が見ていて、「亜子さんの手術の日に浮気かよ」と雄介に言われ、亜子の入院している病院に向かって走り出した。亜子は「すぐ終わるし、いつまでも頼ってばかりじゃー」「頼っていいんだよ」涼は優しく言った。雄介と日和は恵と名乗る涼に疑問を抱いた。雄介はネットで検索をして、「ニュージランド レンタカーで正面衝突 日本人男性死亡」の記事を見つけた。

病室に初対面の日和がアコを訪ねってきた。
「わかっているんですよね?・・・ずっといっしょにいるの・・・涼君だって」と日和が聞くと 、「・・・最初からわかっていました」とあっさり亜子は認めた。
亜子は恵の葬儀の行われた日、暗い部屋に死んだように横たわっていた。メッセージアプリを開いて、「そちらは彗星が見えますか?」と打った。既読がついた。一瞬、恵が生きていると思った。
3年が経った。雄介の店で亜子と日和が飲んでいる。日和がバッグから雑紙『星ナビ』を取り出した。須永涼の記事が載っている。記事にはナミビアからアイベラ半島を回っていると書かかれている。
亜子は新星発見アプリで新星を発見したと思った。急いで国立天文台に連絡をすると、残念ながら亜子より早く連絡した人がいた。亜子の他にも遅れて発見を連絡してきた人がいたという。その人物の連絡先を尋ねた。
亜子はニュージランドの夕方にテカポ湖にきている。涼がカメラを構えて夜空を見上げる人たちを撮っていた。そこで亜子が涼を見つけ、ふたりは満天に星空を見上げた。

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2025年12月19日 (金)

新解釈 幕末伝(映画)

語り部の歴史学者(市村正親)の解説で物語は始まる。ちなみに歴史学者はときどき現れて解説を加える。ムロツヨシのおちゃらけぶりが半端ない。

1853年(嘉永6年)、浦賀沖にペリーの黒船がやってきて、日本に開国を迫る。海岸で丸太を縄で縛り筏を作っていた桂小五郎(山田孝之)は、ぶらりと現れた坂本龍馬(ムロツヨシ)に手伝ってもらい、筏で黒船に近づこうするが、筏が壊れて海に投げ出されてしまう。

新解釈 幕末伝
監督脚本:福田雄一
主題歌:「龍」福山雅治
公開:2025年12月19日
☆4.5

Photo_202512192113011857年(安政4年)、吉田松陰が(高橋克己)は、幕末の志士の高杉晋作、桂小五郎、伊藤博文など多くの有能な人物を輩出した私塾・松下村塾を開いた。
ある日、勝海舟(渡部篤郎)、龍馬、人斬り岡田以蔵(岩田剛典)が町を歩いていると、尊皇派の侍たちに絡まれ斬り合いになった。龍馬が如何にも剣の遣い手のような素振りをするが、以蔵が相手をすべて始末してくれて、龍馬は刀に手をかけただけだった。龍馬はからっきし喧嘩が苦手だった。

 

 

 

 

 

 

Photo_20251219211401京都の警護を幕府から委託されている壬生浪士の近藤勇 (小手伸也)ら新撰組がコンセプト 茶屋に入ろうとする。近藤勇が血相変えて土方歳三(松山ケンイチ)と沖田総士(倉悠貴)の入店を阻止しようとする。理由は値段高いことだ。すったもんだの末、近藤は入店を許す。茶屋にいたのは勝海舟、龍馬だった。気まずい雰囲気も束の間、くノ一の(山下美月)が注文をとりにきて、近藤勇ら新撰組は隠し扉の裏に消えるのだった。
1865年(慶応元年)、龍馬は日本で最初の株式会社「亀山社中」を立ち上げた。
1866年(慶応2年)、西郷隆盛(佐藤二朗)と桂小五郎との間で、龍馬の「まあ、まあ、まあ、まあ、まあ」の「まあ」を5回いう仲介で、時間がかかって難航するが、敵対関係にあった薩摩藩と長州藩が薩長同盟を結んだ。

3_20251219211401この年、龍馬と妻のおりょう(広瀬アリス)が小松帯刀(薩摩藩の重要人物)邸や霧島を訪れ、日本最初の新婚旅行を果たす。おりょうの色気はこの映画の趣旨を捻じ曲げるほど強烈だ。
1867年(慶応3年)、船の中で龍馬がまとめた新国家構想「船中八策」を土佐藩士後藤象二郎(賀来賢人)に示し政治改革を説く。
龍馬は西郷に「大政奉還」の構想を話すが、西郷は龍馬の誇大妄想を受け入れられなかったが、実際は1867年(慶応3)、15代将軍徳川慶喜(勝地涼)が大政奉還を明治天皇に奏上した。
明治の世になって、龍馬と西郷は庭を眺めながらつくづく満足そうにうなづくのだった。

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2025年12月18日 (木)

ロマンティック・キラー(映画)

上白石萌音主演のバイオレンス・ラブ・ロマティック・コメディ。
いつもゲームに浸り、チョコを貪り、猫と戯れ合うぐうたらな生活を送っているのは高校生の星野杏子。
ある日そんな杏子の前に人間の恋愛エネルギーを糧にする魔法使いのリリ(高橋ひかる)が現れる。杏子が恋愛をしないことが魔法界では大問題になっているらしい。リリは絶対、恋をしてもらいますと宣言して、杏子のゲーム、チョコ、猫を取り上げてしまう。そうして、恋をしたくない杏子と恋をさせたい魔法使いの戦いが繰り広げられていく。

Photo_20251218114801 ロマンティック・キラー
監督:英勉(『東京リベンジャーズ』、映画『おそ松さん』、『ヒロイン失格』)
脚本:山岡潤平(『モエカレはオレンジ色』 『ピーチガール』) 
原作:「ロマンティック・キラー」 百世渡 (集英社「ジャンプコミックス」刊)
制作:TOHOスタジオ ダブ
配給:東宝
評価は☆4、5(豪快、痛快、主人公の星野杏子のひたむきさが沁みる)

 

それからというもの、杏子の生活は一変し、リリの仕掛ける恋愛の罠が杏子を執拗に襲ってくるようになった。杏子の服装は高校の制服の白のTシャツに紺色のスカート、それと時には体育着上着の着たり雀だ。
郵便局勤めだった父親が、なんの前触れもなく、突然ニューヨークに転勤なり母親は父親について行ってしまった。そんな折、学校で男子転校生の香月司(高橋恭平)が杏子の隣の席に座ることになり、どういう訳が父母のいない杏子の家に強制同居することになった。挙句には料理上手な特技を生かして朝食を作ってくれようになった。

Romannthikku その上、クラス替えで男子クラスに杏子が1人となり、突如杏子の前に謎のSAT、謎の兵士、謎の刀剣(?)など現れ、杏子はそれらロマンティック・トラップを斬って斬ってぶちのめしていく。
そして、杏子はクールな転校生の香月司、野球部のエースで幼馴染の速水純太(木村柾哉)や、某国の世間知らずの御曹司小金井聖(中島颯太)の同級生と距離を縮めていく。

絶対に恋をしたくないヒロイン杏子と絶対に恋をさせたい魔法使いの仁義ない戦いが繰り広げられていく。杏子は次々に押し寄せるロマンティック(恋愛)をぶっ飛ばし、ゲームとチョコと猫の平穏な生活を取り戻せるのか。ロマティク・キラーの杏子は同級生の男子全員をぶっ倒せるのか。果てしのないバトルが繰り広げられる。

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2025年12月17日 (水)

代車プリウス

新しい車がくるまでの間、代車のお世話になった。代車は赤のプリウス。ボディーの左後下には擦り傷があり、バンパーの左にはいくつもの細かいヒビが入っている。トランクは少し歪んでいる。歪みから雨水が入らないか心配になった。ウィンカーの発する音が静かすぎるので、点滅しているか幾度となく確認しなければならない。時計はデジタル表示にもかかわらず、2分半くらい進んでいる。ラジオが正午を告げる時、12:03を示していた。

当然であるがオーディオ設備はラジオだけである。右折レーンのある3車線道路の直進レーンの前から3台目にいるときに、信号で停まったまま動かせなくなった。車を発進させるのに手間取った。30秒くらい停車していたが、クラクショョンを鳴らした車は1台だけだった。自動車専用道路に入る時は緊張した。アクセルを踏んでも反応が鈍くて、車の流れにうまく乗れないのが怖かった。驚くなかれ、代車の走行距離は246,000キロ、タクシーを凌駕する距離を走っていた。代車に乗っていた期間は43日だったが、代車には一向に慣れなかった。大きなトラブルに見舞われなくてよかったと思う。

新しい車になって慣れないため恐る恐る運転した。新しい車は前と同じハリヤーだけれど、プリウスの方が落ち着いて運転できた。一通り車の説明を受けたが、何せ多くの機能があるから覚えきれない。運転中に車からなんやかんや音声で注意を喚起された。自宅への道路に狭いところがあって、毎回同じところでおばさん風の低い声で注意を促された。操作が理解できないためテレビ画面を未だに見ることができないでいる。

次の車は電気自動車にしようと思っていた。それが、電気自動車は一時の人気はどこへやら、思いのほかの逆風に晒されたようだ。なんと言っても価格が高い。バッテリーの交換費用も高い。充電インフラが絶望的に少ない。長距離運転時の不安、車種が少ないなど、客を惹きつけるにはあまり弱点が多すぎる。

 

2025年12月14日 (日)

読書三昧の年

御茶ノ水にある予備校へは2回の乗り換えが必要だった。東横線で渋谷駅に行き渋谷から山の手線で新宿駅に出て、中央線で御茶ノ水駅に着く。予備校は御茶ノ水駅のニコライ堂のある側から神田方面に向かう坂の中途にあった。理系のクラスはAからFクラスまであって、初めはDクラスだったが、試験を繰り返すうちにCクラスになった。上のクラスはほとんどが東大志望との噂だった。昼食は予備校の近くにある立ち食いそば屋で、もっぱら天玉そばを食べた。
7月まではアルバイトをして、8月から本格的に受験勉強をするという悠長なことを考えていた。予備校から欠席がちだと実家に通報するとのことだったので、予備校で知り合った友人に授業の代返を頼んだ。しかしアルバイトができたのは、4月と5月の初めの1ヶ月弱の間だけだった。代返が予備校の知るところとなり実家に通報され、アルバイトどころではなくなったからだ。アルバイト先は、総武線両国駅から歩いて10分ほどのところにある明治乳業のアイスクリーム工場だった。仕事の内容は、製造ラインを流れてくるカップアイスの傾きを直す作業だった。傾いて固まったカップのアイスクリームは売り物にならない。専用の防寒着に身を包み厚手のミトンの手袋をつけて、マイナス30度の冷凍室に入って作業をした。冷凍室にいる時間は10分、それを2人がひと組になり交代で行った。午前中だけだったが体力を消耗する仕事だった。

1969年1月の安田講堂事件の後、学生運動は鎮静化に向かうどころか混乱はますますエスカレートしていった。駿河台の明治大学の校門には、ゲバ字で書かれた立て看板が立っていて歩道にはビラやビラの破片が散らばっていた。時には御茶ノ水駅周辺でデモ隊と機動隊のせめぎ合いがあった。授業が終わると御茶ノ水通りを下って神保町に行き、三省堂書店をのぞいてから古本屋街をうろついた。そのあと御茶ノ水駅に戻らず九段坂を上がり靖国神社の中を通って市ヶ谷駅にたどり着いた。あるいは足を伸ばして千鳥ヶ淵沿いを四谷駅まで行って中央線の国電に乗った。アパートに帰るとさっそく買ったばかりの本を読んだ。
僕は東横線沿線のアパートに住んでいた。アパートに入って階段を上がると8畳と4畳半の続く部屋を東京医科歯科大学の大学院生が占め、その隣の3畳間を新聞配達をしながら司法試験の合格を目指す男性が借りていた。一番奥の3畳間が私の部屋だった。
歩いて数分のところに定食屋があり、食事やアルーコール類を出していた。私は時々そこで夕食を食べた。床はコンクリートが剥き出しになっていて、カウンター席といくつかのテーブル席があった。5〜6人の常連はニッカポッカの作業服に身を包み、カウンターとカウンターに近いテーブル席を陣取っていた。僕が店に入っても気に留めることなく大声でしゃべっていた。通ううちに、背がやや高く態度の大きい男がその集団を仕切っていることがわかった。ときどき口喧嘩が始まることがあって、大抵はその男が発信源で収束に導くのもその男だった。銭湯でもその男に会うことがあったが、例によって大きな態度であった。ある日、常連たちがビールを飲みながら枝豆を摘んでいて、そのうちに怒鳴り合いがはじまった。怒鳴り合いはエスカレートして、掴みかからんばかりの状態になった。態度の大きい男が「枝豆みたいなチ〇〇コしやがって」と叫怒鳴りながら投げた枝豆が、僕のテーブルに飛んできた。半分しか食べていない定食を大急ぎでかき込み、お金を払って引き戸を開けて外に出た。彼らにとって喧嘩はゲームのようなもので、掴みかかっても殴り合いになるようなことはなかった。その後も、その定食屋には通ったが、だんだん足が遠のくようになった。すこし遠いが踏切を越えて5分のところに大学生が利用する定食屋を見つけたからだ。銭湯ではときどき例の男を見かけたが、相変わらず大声でしゃべっていた。

話は前後するが、アルバイト仲間に礼文島出身の大学生がいた。背が高くすらりとしていて二枚目だった。ギターを弾いていることや礼文島の自然の美しさを話してくれた。わが3畳間を訪れたくれたこともあった。その大学生が作業中に事故にあった。左小指を製造ラインの金属に挟まれて切断してしまった。切断指の再接着が最先端技術としてマイクロサージャリーと呼ばれ、マスコミで取り上げられた頃だったが、指は断端の処置が行われただけだった。包帯でぐるぐるまきにされた小指をかばいながら、ギターを弾けなくなったと悲しそうな顔を思い出す。
年が明けて受験が間近になったので読書を控えることにした。1969年は生涯で最も多くの本を読んだ年になった。今思えば限りなくアナーキーな年であった。読書のおかげで現代国語は大いに自信がついたし、文庫の後ろのページに多数の本の紹介が載っていて、どれを読もうかと何回もページをめくったので日本の近代文学史がすっかり頭に入った。

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2025年12月12日 (金)

天文館探偵物語(映画)

夏の鹿児島の祇園祭(おぎおんさぁ)の熱気に包まれる中、宇佐美蓮(寺西拓人)は相棒の山下健斗(肥後遼太郎)と共に、天文館の繁華街をタモ網片手に脱走したペットの亀を探していた。ちなみに蓮はバーで働きながら密かに探偵業を続けている。
蓮と健斗はDV夫から逃げてきたシングルマザーの凪(大原優乃)と出会う。男児を抱える凪は、それまではお金を盗み、財布をすることに長けていた。その後、バーの金庫を開けるシーンがあるが、盗みを働かず踏みとどまった。

Photo_20251212180901天文館探偵物語
監督・脚本:諸江 亮
上映時間81分
2025年12月5日(金)公開
☆3

 

 

 

 

 

 


蓮と健斗は、凪の働き口と凪の息子を預けられるバーに隣接する託児所を紹介するが、安心したのもつかの間、凪の息子が誘拐される。
凪は息子が地方創生担当大臣・板倉雄馬(西岡德馬)の息子・靖幸(室龍太)と凪の間に生まれた子だと明かす。凪には親権はなく、板倉の息子にすれば凪が男児を誘拐された形なっているため、息子を取り戻そうとしたのだ。

一方、板倉は天文館の再開発を強引に進め、街の人たちの居場所だけでなく思い出をも奪おうとしていた。蓮たちは凪親子と天文館を守るため立ち上がり、天文館の再開発阻止の署名集め奔走する。
一時は再開発に舵が切られたよう思われたが、蓮たちの努力が実を結び板倉を翻意させることに成功する。

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2025年12月 8日 (月)

成瀬は都を駆け抜ける 宮島美奈

成瀬あかり堂々見参。間違いなく、星10のエンターテイメント。

やすらぎハムエッグ
転んで膝を擦りむいた私を紺色の振袖の和装に身を包んだ女性が介抱してくれた。理学部1年の成瀬あかりと名乗った。私は同じ学部の1年生の坪井さくら。早田君が受かったかどうか気になって仕方がない。早田君は東大に受かっていた。早田君は夏に志望を京大から東大に変えていた。
キャンパスでガイダンスがある。成瀬さんは琵琶湖大津観光大使のタスキをかけている。「私失恋しちゃったの」と言うと、打ち込むものとして料理とアドバイスをされた。
それに従ってハムエッグを作り、1か月間料理を続け、成瀬さんを招待することにした。
鴨川デルタに来ている。成瀬さんが突然、「今日は私の誕生日だ」というと、蛍が飛んできた。成瀬さんの背後に白い月が浮かんでいる。その光を頼りにどこまでも歩いて行ける、そんな気がした。
Photo_20251208122801
成瀬は都を駆け抜ける
宮島美奈
新潮社
2025年12月
☆10

 

 

 

 





実家が北白川
達磨研究会の木崎会長が農学部1年の梅谷誠に鍋料理をふるまった。梅谷は実家が北白川にある。研究会は森見登美彦の作品の影響を受けてこの会を開いているという。部員は3人。梅谷は入会した。毎週火曜、銀閣寺道にある会長宅が会場となり、森見作品をはじめとする京大小説について語り合っている。会長が出会いたい黒髪の乙女を探していた梅田は、成瀬あかりが該当すると思い、あかりの友人の坪井さくらともに達磨研究会に勧誘した。
ということで、成瀬と坪井は、火曜日の18時に会長宅のマンションで茄子と豚肉の油炒めを食している。話題は成瀬が極めたい京都についてだ。成瀬は会長から京都ガイドブックを頂戴した。2日後、成瀬が会長からもらったガイドブックには100の付箋が貼られている。「哲学の道は行ったから、あと99か所を3月末までクリアしたい」と成瀬は梅谷に言った。

ぼきののか
「ぼきののか」は、日商簿記1級を目指す田中ののかのYou Tube チャンネルである。今日は特別編で北野天満宮から生配信をしている。内外の観光客が行き交う中、白い服と白い帽子を身につけて、たすきには琵琶湖親善大使の文字がある成瀬は紙を配っている。ののかが「滋賀って琵琶湖しかないですよね」と言うと、観光大使は「その通りだ」と答えた。「わたしは田中ののか、ぼやきののかというYou Tube チャンネルをやっている立命の2回生です」成瀬に「一緒に付き合ってくれる」と頼むと、承諾してくれた。
それで、「琵琶湖親善大使と行く北野天満宮からお散歩配信です」と発信した。成瀬が北野天満宮にきた理由を聞くと、「京都を極めたいから」という。
ののかが500円でおみくじを引くと「勉学は、、、誠実に努めよ」とあった。成瀬は大吉、いつも大吉だそうだ。ののかは、簿記2級を落ちたにも関わらず、受かったと配信してしまったことをチャンネルで素直に謝った。そのあと、ののか、成瀬、坪井さくら、梅谷、それと城山の5人が簿記2級の試験に挑戦することになった。
ののかがチャットに興じていると、京大達磨研究会の会長と大曽根が尋ねきた。おにぎりと豚汁がチャットの画面に流れると、旨そう、食べたい、の投稿があった。ののかは簿記2級に受かった。おめでとうの声が降りそそいだ。

そういう子なので
成瀬がテレビの「ぐるりんワイド」に出ることになった。母親の美貴子も声をかけられ出演が決まった。あかりが8か月の時、赤ちゃんハイハイレースに出てぶっちぎりで優勝した。美貴子はあかりが5年生のとき担任に「あかりさんは協調生がなさすぎます」と言われて、「そういう子なので」と答えた。
成瀬番組の1日のスケジュールは、まずは朝の5時からあかりが琵琶湖岸を走る姿を撮影。次は通学中の様子と大学内の様子を撮影。取材班が帰って自宅で美貴子にインタビュー。夕方、膳所駅周辺をパトロールするあかりを撮って終了。ギャラは1万5千円。
撮影当日、母も見学させてもらうことにして京阪膳所駅に着いた。あかりは膳所高校と京大を選んだ理由を聞かれた、近いから膳所高校を選び、東大と京大を比べて近いから京大を選んだと答えた。
「5年生の時、シャボン玉の研究でぐるりんワイドに出たことがあります」と美喜子が答えた。「赤ちゃんころから時計が読めた」「2歳で文字をマスター」「天才しゃぼん玉少女として、琵琶湖M1グランプリに出場」「これまでもらった症状は30枚以上」と輝かしいあかりの経歴が披露された。

親愛なるあなたへ
西浦は成瀬さんに手紙を出したが、没にするつもりの文面を間違って送ってしまった。成瀬さんに電話をかけて開封しないで返してくれるよう頼んだら、朝ミスドで持ち合わせることになった。無事未開封の手紙を回収した。西浦は成瀬に恋心を抱いている。高校の時に百人一首全国大会で知り合ってふたりは文通している。成瀬さんは、西浦は4月に京都の大学に入って引き続き手紙を送ってくれるのだという。
冬場は輸血の血液が不足しがちで、ぼきののかと成瀬さんが献血しにいくということで西浦も献血することにした。タクシーに乗り込んだ。成瀬さんの京都めぐりは残り30ヶ所になっている。ののかは気を効かして西浦と成瀬を2人きりにした。ラーメンを食べて、そのあと麻雀をやるという。健康麻雀王座決定戦だという。面子が足りないから西浦も麻雀をすることになった。成瀬さんは3か月前から麻雀を始めて、役満を何度か上がっているという。成瀬さんが優勝してトロフィーを手にした。
一緒に便箋を買うことになって、その後リックにトロフィーを入れた成瀬さんと鴨川沿いを歩いた。すると達磨研究会が忘年会をやっていた。出会ってそこそこそに、成瀬さんが寝る時間と言って帰っていった。西浦は成瀬さんのエネルギッシュな行動についていけないと思った。

琵琶湖の水は絶えずして
成瀬から大津市民病院で盲腸を手術して個室にいると島崎に速達が届いた。成瀬は東京の島崎に観光大使の代役を頼んだ。成瀬の家に行くと母親が親善大使のユニフォームを渡して帰りの新幹線代を包んでくれた。
翌日、島崎が琵琶湖親善大使のユニフォームに身を包み琵琶湖疏水記念館に着くと、琵琶湖の文字がつくから疏水は滋賀のものだと思っていたが、疏水は京都のものだという。成瀬は琵琶湖の水はみんなものだから構わないと言っている。「琵琶湖疏水は京都のものやんけど、誰の許可取ってやってはんの」と厄介なことをいうおじさんが現れた。島崎は威を奮い立たせ「琵琶湖はみんなのものです」と言い返した。すると入院していたはずの成瀬が現れて、「琵琶湖の水を使っている者同志仲良くしたらいいんじゃないか」といちゃもんつけたおじさんを制していた。
疏水の乗船場で成瀬と島崎は疏水船に乗る。ガイドの話では大津港まで65分かかるという。ここで成瀬あかりに関わりがある人物が総登場する。成瀬あかりは名前の通り、人にあかりを当てる人物なのだ。   

それいけ!平安部/宮島美奈/小学館/2025年4月
婚活マエストロ/宮島美奈/文藝春秋/2024年10月
成瀬は信じた道をいく/宮島美奈/新潮社/2024年1月
成瀬は天下を取りにいく/宮島三奈 
成瀬は都を駆け抜ける/宮島美奈/新潮社/2025年12月

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2025年12月 3日 (水)

兄の終い 村井理子

本書は村井理子が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイである。

Photo_20251203123601 兄の終い
村井理子
CEメディアハウス
2025年10月












絶縁状態にあった兄がアパートで突然死んだと警察から連絡が入った。とりあえず、滋賀から兄が暮らしていた宮城県の多賀城に降りたった。警察署で7年ぶりに兄の元妻加奈子とその娘の満里奈に会う。ちなみに美人の元妻は豊橋から駆けつけた。
父と共に暮らしていた息子の良一は父の死後、児童養護施設に収容されていた。
兄の住んでいたアパートは不潔の極みのゴミ屋敷と化していた。それを、私と加奈子と娘で片付ける。壁には家族との思い出の写真の数々が壁に貼られていた。本棚に並んでいた5冊の私の著書をゴミ袋に押し込む。ビニール袋で車はいっぱいになった。焼却場に車で運び私と加奈子は、「おりゃー! 行けぇー! 成仏しろぉー!」と叫びながら奈落のような作りの焼却炉にゴミを放り込んだ。

良一は加奈子と姉の満里奈と暮らして始めた。
人ひとりが死んで、始末しなければならない数々のことに驚く。
私は兄との苦い思い出を振り返っていた。私は落ち着きがなくマイペースで自分勝手な兄に幼いころから散々振り回されてきた。最近、兄は私にべつ金の無心のメールをしてきた。

持ち運べるようなサイズになって遺骨は家の最も騒がしい場所に置かれている。遺骨の前を毎日、中学生の息子たちが、夫が、私が、ペットの犬が、バタバタ通り過ぎる。私は兄の遺骨の前を通るたびに、兄のことを考える日々を過ごしている。兄がそこにいることに、不思議と安らぎを感じている。すでになくっている両親から兄を任されたような気がしている。

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2025年12月 2日 (火)

木漏れ日に泳ぐ魚 恩田陸

掴みどころのないストーリーだ。ミステリに分類されている。
女と男が代わり順番に話す形式をとっている。

Photo_20251202194501木漏れ日に泳ぐ魚
恩田陸
文春文庫
2010年11月

 

 

 

 

男には男性を殺した疑惑がある。あるいは転落死だったかもしれない。片付けた2LDのアパートを、これからふたりは別々に出ていくことになっている。その前に段ボールを挟んで缶ビールで乾杯した。やがてビールはワインに変わる。考えをめぐらせたり独白したり繰り返している。ふたりは二卵生双生児らしい。女はナイフをスカートのポケットに入れた。意味深な行動だけれど問題は起きない。ふたりは愛し合っていたらしい。
女によって男が別の女と付き合いはじめていることを明かされる。話は行ったり来たり、戻ったり進んだり、堂々巡りをしている。のらりくらりが続く。死のうかと言うとそれもいいかもと答えたりする。そのうち二卵性双生児でなくて、いとこであることが分かって、一瞬ふたりを包んでいた重圧感が軽くなった気配だ。一線を越えることにびくびくしていた。いとこ。女が携帯電話の番号を押すと相手が出た。これから引越しだと言って短い間話をする。女がポケットに手を突っ込むとナイフがあった。土を深く掘ってそれを埋めた。空を振り返る。ついに、太陽が姿を現したのだった。

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