兄の終い 村井理子
本書は村井理子が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイである。
絶縁状態にあった兄がアパートで突然死んだと警察から連絡が入った。とりあえず、滋賀から兄が暮らしていた宮城県の多賀城に降りたった。警察署で7年ぶりに兄の元妻加奈子とその娘の満里奈に会う。ちなみに美人の元妻は豊橋から駆けつけた。
父と共に暮らしていた息子の良一は父の死後、児童養護施設に収容されていた。
兄の住んでいたアパートは不潔の極みのゴミ屋敷と化していた。それを、私と加奈子と娘で片付ける。壁には家族との思い出の写真の数々が壁に貼られていた。本棚に並んでいた5冊の私の著書をゴミ袋に押し込む。ビニール袋で車はいっぱいになった。焼却場に車で運び私と加奈子は、「おりゃー! 行けぇー! 成仏しろぉー!」と叫びながら奈落のような作りの焼却炉にゴミを放り込んだ。
良一は加奈子と姉の満里奈と暮らして始めた。
人ひとりが死んで、始末しなければならない数々のことに驚く。
私は兄との苦い思い出を振り返っていた。私は落ち着きがなくマイペースで自分勝手な兄に幼いころから散々振り回されてきた。最近、兄は私にべつ金の無心のメールをしてきた。
持ち運べるようなサイズになって遺骨は家の最も騒がしい場所に置かれている。遺骨の前を毎日、中学生の息子たちが、夫が、私が、ペットの犬が、バタバタ通り過ぎる。私は兄の遺骨の前を通るたびに、兄のことを考える日々を過ごしている。兄がそこにいることに、不思議と安らぎを感じている。すでになくっている両親から兄を任されたような気がしている。
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