文体のひみつ 三宅香帆
筆者自身が文体オタクと宣言する。そもそも謎めいている文体を、著者の言葉を借りれば、勝手に分析し存分に語る。文体とはその人やその作品特有の書き方のことである。
新境地を開拓した画期的な新書である。
著名人の文体を論って解説を試みている。各項の解説を読んでようやくわかる文体もあるし、残念ながら解説を読んでも納得できない項もある。
文体のひみつ
三宅香帆
サンクチュアリ出版
2025年12月
Chapter1 引きつける文体
しいたけの誘引力、星野源の未熟力、佐々木俊尚の身近力、村田喜代子の展開力、森鴎外の奇添力、北原白秋の配合力、山崎ナオコーラの冒険力
たとえば、森鴎外から臨場感のある思い出話の書き方を学びたいとある。
『雁』を解説して、「記憶している」「僕は覚えているからである」という言葉が使われ、「情景が徐々に読み手を包み込んできて、なんだか立体的に見える回想じゃなんですか」と結ぶ。
Chapter2 先を読みたくなる文体
村上春樹音感力、かっぴーの弱気力、林真理子の協調力、綿谷りさ簡潔力、三浦しをんの台詞力、向田邦子の柔和力、井上都の冷静力、恩田陸の快速力、橋本治の豹変力、上橋菜穂子の親身力、永麻理の代弁力、開高健の実直力、司馬遼太郎の撮影力、三島由紀夫の対比力、谷崎潤一郎の気分力、紫原明子の息継力
村上春樹の項では読みたくなる文体としてのリズムについて解説している。
向田邦子はひらがなで印象を変えている。
司馬遼太郎の撮影力は、『街道をゆく』から。書き手と同じ景色見ているよような文章だという。
Chapter3 説得力を生む文体
秋元康の裏切力、江戸小噺の小粋力、高田明の視点力、さくらももこの配慮力、こんまりの豪語力、齋藤孝の更新力、上野千鶴子の一貫力、塩谷舞の先読力、有川ひろの共感力、藤崎彩織の旋律力、武田砂鉄の錬金力、山極寿一の置換力、岸政彦の中立力、瀧本哲史要略力、堺雅人のスライド力
武田砂鉄の錬金術は、夏目漱石の鼻毛の話。
漱石が原稿用紙に鼻毛を貼り付けていたという。その原稿を内田百閒が保存していたという。
Chapter4 記憶に残る文体
俵万智の合図力、松井玲奈の国民力、阿川佐和子の声掛け力、宮藤官九郎の激化力、吉本ばななの意味深力(会話の中に急に出てくるズレた発言、不思議な言い回し)、山田ズーニーの一対一力、岡本かの子の言い残し力、ナイシー関の警告力、ビジネス書の隠喩力、又吉直樹のかぶせ力、清少納言の音合わせ力、加藤シゲアキ回想力
阿川佐和子は突然読者に話しかける
ナンシー関の項では武田鉄矢を論じる文を取り上げて、「武田鉄矢には、人を辟易させる過剰さがあるからだ」と結んでいる。
清少納言の音合わせ力は、同じ音を重ねると紹介している。
何度も開くに値する名著だ
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本体が重い紙がやたらと厚い。値段も1200円と新書としては高めだ。
チラシがはさっまっていて、サリクチュアリ出版からの決意のようなものが書かれている。出版社の名前で買ってもらえるように、1年をかけて丁寧な本作りをしているという。社のキャッチコピーは、@本読まない人のための出版社。
ラインナップを見てみると、推奨版15冊というのがあって21340円。強気だ。
投稿: ミシュラーメン | 2026年1月10日 (土) 10時38分