Die My Love
『ビューティフル・デイ』『少年は残酷な弓を射る』のリン・ラムジー監督が、愛と狂気の狭間で揺れる夫婦の姿を描いた心理ドラマである。第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、第83回ゴールデングローブ賞ドラマ部門主演女優賞にもノミネートされた。
主人公グレースを演じるのは、20歳の時『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー主演女優賞に輝いたジェニファー・ローレンスである。本作ではプロデューサーも兼任し、出産後の女性が抱える孤独や不安を、自身の出産経験も生かして演じた。夫ジャクソンには、『ザ・バットマン』のロバート・パティンソンが扮した。原作はアリアナ・ハルウィッツによる小説『死んでよ、アモール』。プロデューサーとしてマーティン・スコセッシも名を連ねる。

田舎町に移り住んだ作家のグレースは、夫ジャクソンとともに新たな生活を始める。穏やかな日々が続くはずだったが、出産をきっかけに彼女の生活は一変する。執筆活動は滞り、育児による重圧と孤独、さらに断片的に訪れる幻覚が、日常を徐々に歪めていく。やがて現実と幻想の境界が揺らぎはじめ、グレースの精神は確実に崩壊へと向かっていく。
2025年製作/118分/PG12/アメリカ・イギリス合作
原題:Die My Love 配給:クロックワークス
日本公開日:2026年6月12日
☆4.2

驚くことに、実際、撮影の当初はジェニファーが妊娠初期の頃だったが、野生の獣のような演技を披露した。おそらく、それはグレースの「母である」というところに共感できたんだと思うと監督は述べている。ジャクソンは、グレースを愛しているが、どういうふうに接したらいいかわからない。状況が悪くなればなるほど大丈夫だと思い込みたい、優柔不断のキャラクターである。

ジャクソンはグレースを心底愛しているけれども、いつも誤った選択をしてしまう。彼よりも彼の母親(シシー・スペイセク)の方が起きていることがクリアに見えている。時限爆弾のようなグレースをどう扱っていいのかわからなくなってしまう。ネズミ退治のために猫を連れてきて欲しいと言っていたのに、犬を連れてくる体たらくだ。

ジャクソンが連れきた犬を、グレースがライフルで撃つシーンや故意か誤ってか体ごとガラスに突っ込むシーンなど、衝撃的な場面が多々ある。半ば狂っているようなグレースを前にして、ジャクソンは混乱する。自分たちの人生に対しての反逆、そしてアイデンティティの喪失に対しての反逆、結婚生活の中でセックスレスになっていることへの反逆、クリエイティブな意味でのスランプに陥っていることへの反逆、まるで世界を全部燃やしてやりたいというふうに思っているような反逆、そして覚醒。まさにカオスである。
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