嘘つきジェンカ 辻村深月
AIによると、ジェンガ(Jenga)は、54本の木製ブロックを3本ずつ互い違いに積み上げたタワーから、片手で1本ずつ抜き取り、最上段に崩さないように乗せていくバランスゲームです。1983年に発売された世界的な人気ゲームで、タワーを崩した人が負けとなります。
Jengaはスワヒリ語で「積み上げる」を意味する。
3編の主要人物は、最初は10歳サバをよんでいた実年齢45歳の未希子、次は受験生を抱える母49歳の多佳子、最後は36歳の詐欺師の紡だ。
2020年のロマンス詐欺
コロナ禍で休校のJ大1年の耀太はオンラインのバイトに勧誘された。Facebookでメッセージやメールをやりとりするバイトだった。引っかかりやすい人のリストが送られてきた。最終的には9万円のブレスレットを買わせて、月15万稼げるという。
耀太は六本木にオフィスを持つIT企業の社長になりすまし、もうひとりはコロナの影響で留学ができなくなった女子音大生になる。300通送ったから3万円が振り込まれるはずだった。返信がポツポツ来るようになったものの、売り上げ成績が悪いからバイト代は払えないと電話で告げられた。
フランス留学の経験がある自称35歳の未希子が引っかかった。実は45だ。未希子に金を振り込ませよという電話がかかってきて、とりあえず未希子に10万円の振り込みを要求するが、未希子は無視する。
未希子のFacebookを開くと、「助けて、夫に殺される」との文字が飛び込んできた。夫に殴られる毎日が続いているという。剪定バサミの柄で殴られ、髪の毛を切られたこともあるという。娘も殴られたという。
住所は埼玉県となっている。耀太は未希子の夫を殴るために家に乗り込むことにした。庭には想像していたよりも高齢の男性がバラの剪定をしていた。男を殴って剪定バサミで自分の手を切った。未希子と思われる女は思ったよりもずっと高齢だった。警察に捕まって拘置場に入る。両親にこっぴどく叱られたけれど、幸い大学を退学にならなくて済んだ。
J大に通う未希子の娘の一華によると、5年前母はロマンス詐欺で多額のアクセリーを買わされたという。父母の仲は最悪になっていて、離婚寸前の状態にあった。
一華は母のアカウントを使って未希子になりすまして、耀太とやり取りをしていたのだ。耀太は一華に六本木ヒルズに行こうと誘った。
五年目の受験詐欺
長男はしっかりしていて京都の国立大学に受かった。問題は次男の高校2年の大輝だった。49歳の多佳子は大輝の能力に限界を感じていた。
島村という女性からの電話で、5年前にまさこ塾に150万払ったのは詐欺だったという。金は学校に渡っていないという。訴訟を起こすので証人に加わってほしいという。
長男の小学校時代PTA役員を一緒にやったママ友のしず香が情報をくれた。まさこ先生は十条雅子という名で、企業相手のコンサルタントをしていた人物だという。受験の相談に乗って欲しいと頼まれているうちに、教育の方にやりがいを感じるようになった。まさこ先生の情報の精度が恐ろしく高い。塾生は子供でなくて私たちと、しず香は言う。費用は月1万円。
電話の向こうの島村という女性は、息子は不合格で学校側に話しまさこ塾とも掛け合って、特別紹介の件は詐欺だと発覚したと、まさこ塾で事務の仕事していた女性に聞いたという。不合格の場合は金が返ってきたという。
金は払ったが学校側には渡っていなかった。大貴は一期生を募集していた新設の高校に受かった。まさこ塾は実力で受かりそうな子を選び、合格を信じ切れない親の気持ちにつけ込んでいた。
まさこ先生に持ちかけられた特別紹介による事前受験を夫に話すと、それなんだよと言った。怪しい、やめなよと言う。夫に100万円渡したことを話すとあきられた。
訴訟に加わらないかと誘われている話を夫に告げると「愚かな」を連発して多佳子をなじった。
大輝に事情を話すと「そんなことで悩んでいたのか、お母さんの好きにすればいいよ」と言われた。
あの人のサロン
36歳の紡は選んだ30人ほどを前に話している。ホワイトボードには、「谷嵜レオ創作オンラインサロン オフ会」と書かれている。谷嵜は漫画の原作者だ。谷嵜レオの名前と作品と立場を紡は借りきっている。あの漫画の原作は私が書いた―そういうことにしている。昨夜の創作サロンの参加者たちも、そして父母にも。
講座が終わると菓子と飲み物が運ばれ、砕けた談笑タイムになる。会場はカラオケボックスの一角にある貸し会議室だった。女性だったのですね。若い。きれいなどの声が聞こえた。月1000円の会費を取っている。これはいいバイトなるが突き詰めれば詐欺だ。先生のアドバイスのおかげで編者者がついて、コミック誌に作品が掲載されることになった、と感謝の言葉をかけられた。紡はどれだけ会が楽しくても、講習が終わったら過剰に会員と付き合わないことしている。作家のミステリアスさと節度が保たれる。生徒の作品を添削して夜遅くなることが多くなった。
そんな生活を10年も送っていて、真の原作者が起こしたしょうもない刑事事件で、そもそも脆弱な立場の紡は根底から破綻を迎えることになる。











