翻訳

マイ・シスター、シリアルキラー オインカン・ブレイスウェイト

舞台はナイジェリアの首都ラゴス。
アヨオラはフェミをナイフで殺した。アヨオラから「殺しちゃった」との連絡が入り、姉のコルデがフェミのアパートに駆けつけた。コルデは看護師だから、殺人現場の証拠隠滅の知識と技術がある。部屋を消毒し終えたあと、姉妹はフェミの遺体を車で運び出し、橋の欄干から川に突き落とした。
3df2f8d8848740aa801a54f6ff6be741マイ・シスター、シリアルキラー
オインカン・ブレイスウェイト/粟飯原文子 
ハヤカワ・ミステリ 
2021年 198頁

姉妹は暴君のような父親とエキセントリックな母親のもとで育った。父親が一家に与えた数々の災難が明らかになっていく。これらはアヨオラに精神的なトラウマとなっていた。家族には父親という闇があった。
幼少の頃からコルデはアヨオラの面倒をみてきた。コルデは母親にアヨオラに災難が降りかからないようにフォローをするのが、お前の役目だと言われきた。アヨオラは肌の色が薄く美人なのでモテる。一方コルデは母親にそっくりで、体が大きくて色が濃く、美人ではない。
アヨオラは男を引きつける魅力を持った女性に育った。そして幾人もの男と付き合ってきた。

フェミは180cmもある大男で、激昂したからアヨオラは怖くなって、持っていたナイフで心臓を3回刺したという。実はアヨオラの殺人はフェミで3人目だ。
今回同様、これまで、コルデは母親の命令に従い殺人の証拠隠しをしてきた。

能天気なアヨオラがコルデの勤める病院にふらりと現れて、コルデがアヨオラをタデ医師に紹介する羽目になった。コルデはタデに密かに心を寄せている。アヨオラがタデに目をつけたことがコルデにとっては気になってしょうがない。二人がいい仲になって、その挙句アヨオラがタデを殺してしまうかもしれないという不安だ。
しかし、コルデの不安は現実のものとなり、タデはアヨオラにのめり込んでいく。
一方、警察が動き出す。

著者は1988年にナイジェリアのラゴスで生まれ、ロンドンに移住した。ロンドンとラゴスを行き来し、英国キングストン大学で法律と創作の学位を取得した。2012年にラゴスに戻り、出版社で編集の仕事に携わりながら短編小説を発表し高い評価を受けていた。
長編小説を書くかたわら自らの楽しみのために、気ままに本書を書いたという。そんな軽い気持ちで書いた本書は、スピード感があって魅力的である。
出版されるや瞬く間の世界が注目するところとになった。
2019年のロサンゼルス・タイムス文学賞、アンソニー賞最優秀新人賞、アマゾン・パブリッシング・リーダーズ賞を受賞、ブッカー賞の候補、女性小説賞の最終候補、全英図書賞(犯罪・スリラー部門)を受賞した。30言語での翻訳が予定されているという。→人気ブログランキング
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木曜殺人クラブ リチャード・オスマン

ユーモアが漂いちょっと人を食った感じの語り口は、R.D.ウィングフィールドのフロスト警部シリーズを彷彿とさせるが、フロスト警部シリーズがウリの下品なところはない。ユーモアは、イギリスのミステリの一つの特徴だという。
アガサ・クリスティの連作短篇『火曜クラブ』やアントニー・バークリーの『毒入りチョコレート事件』で使われた、推理好きが集まって事件の謎解きを行うというパターンが使われている。
2a290b6e4cac4ac6afdef46722c21256木曜殺人クラブ
リチャード・オスマン/羽田詩津子 
早川書房 
2021年9月 494頁

木曜殺人クラブは、いまや寝たきりになった元警部のペニーとエリザベスがはじめた。当初は、警察の未解決事件のファイルをペニーが持ち出して、エリザベスと事件を推理した。
いまのクラブのメンバーは、エリザベスのほかに元看護師のジョイス、元労働運動家と元精神科医がいる。
ジョイスの手記がところどころで挟み込まれ、物語の進みを整える役割をしている。

彼らは高級リタイアメント・ビレッジのクーパーズ・チェイスで暮らしている。クーパーズ・チェイスには300人ほどがいて、その中心にはいまは使われていない女子修道院の建物がある。

高齢者が増え続け介護業は成長産業である。
そんなご時世を背景に、イアンと共同経営者のトニーは、古い家を買い取りリニューアルして売り大儲けしてきた。野心家のイアンはトニーをクビにして、改装費が安いボグダンにトニーの仕事を回そうとしている。そんなことすればトニーはイアンを殺すだろうと、ボクダンはいう。
ところが、イアンではなくてトニーが自宅で撲殺された。さらに衆目の前でイアンが毒殺された。

木曜殺人クラブの面々は事件に首を突っ込もうとする。
情報源をどうするのか。マーガレットとジョイスはハンドバッグが盗まれたと警察署にかけ込み、地区担当のドナ巡査から情報を得ようとする。ドナ巡査は高級老人住宅でしばしば講演している。まんまとうまくいって、エリザベスはドナ巡査とチャットで情報を交換する関係を築いた。
ドナ巡査はフロスト警部を彷彿とさせるどこかとぼけたクリス警部を巻き込み、警察がもつほとんどの情報が木曜殺人クラブに伝わるという仕組みが出来上がってしまう。

本書のテーマはあくまで殺人事件の犯人探しであるが、もう一つのテーマは老いだ。老人たちには波乱の過去がある。主要登場人物の過去が語られ物語は奥行きと広がりをみせる。

著者のリチャード・オスマンは1970年生まれ。英国のテレビ司会者・プロデューサー。本書は著者のはじめての作品で、全英図書賞の年間最優秀著者賞を受賞した。そのほか、エドガー賞最優秀長篇賞、国際スリラー作家協会最優秀長篇賞、バリー賞最優秀新人賞、アンソニー賞最優秀新人賞などにノミネートされ、高い評価を得ている。
日本では、『ミステリ読みたい!2022年度版』第3位、『週刊文春』ミステリーベスト10海外部門第4位など、上位にランクインしている。→人気ブログランキング
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自由研究には向かない殺人 ホリー・ジャクソン

著者はイギリス・バッキンガム出身の29歳の女性。子どものころから物語を描きはじめ、15歳で最初の小説を書き上げた。デヴュー作の本書は2019年に刊行され、英米でベストセラーになった。2020年のブリティッシュ・アワードのチルドレン・ブック・オブ・ザ・イヤーを受賞。英国カーネギー賞の候補になった(カバーの著者紹介を改変)。
『このミステリがすごい』では2位、『週刊文春』ミステリーベスト10(海外部門)では2位と評価が高い。
カバーのイラストにはジャケ買いを誘う魅力がある。
B8405da49a054051bc971cc8076207cb自由研究には向かない殺人
ホリー・ジャクソン/服部京子訳 
創元推理文庫 
2021年8月
582頁

ピップ(あるいはピッパ)は頭脳明晰で快活な17歳の娘。夏休みが明けると、リトル・キルトン・グラマースクールの最終学年になる。ピップは夏休みの自由研究に、リトル・キルトンで起こった殺人事件を選んだ。
そのほかに、ケンブリッジ大学への願書の作成のために、マーガレット・アトウッドについての論文をまとめなくてはいけない。

その殺人事件とは、5年前にキルトン・グラマースクールに通う17歳の美貌のアンディが行方不明となり、その後アンディのボーイフレンドだったサルが自殺した事件である。
サルがアンディの携帯電話を持っていて、サルの爪にアンディの血痕が付着していた。彼女の車のダッシュボードにはサルの指紋が付いていた。サルが犯人と断定され事件に終止符が打たれた。
しかしアンディは行方不明のままだ。

ピップにはサルの無罪を証明しようとする理由がある。かつて義理の父親がナイジェリア人だということでいじめを受けたときに、1年上のサルが助けてくれたことがあった。それ以来、ピップにとってサルはヒーローだった。

ピップは自由研究という隠れ蓑を使って、事件を正面切って調べ直そうと考えた。サルの弟ラヴィが協力を申し出た。ラヴィも兄は犯人ではないと思っているが、殺人犯の弟があれこれ聞き回ろうとしても拒否されるだけだ。

サルの携帯電話からわかったことは、サルはアンディに何かやめて欲しいものがあったこと。それと、サルが「ぼくだ。ぼくがやった。すみません」と父親に送ったテキストは、誰か別の人間が打ったものだ。サルはピリオドを使わない。

ピップの身の危険を顧みない体当たりの捜査(取材と呼んだ方がいいかもしれない)で、アンディの過去の悪事が暴かれるにつれて、アンディが殺されてもしょうがなかったとピップは考えるようになる。

ネット社会を反映して、携帯電話やインターネット、SNSが物語の中心にある。
テーマはシリアスだが、17歳の快活な主人公の目を通して描かれているので暗くなく爽やかなところと、構成が緻密であるところが、本書の魅力だ。→人気ブログランキング
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ボビーZの気怠く優雅な人生 ドン・ウィンズロウ

ティムは自制心のなさで、盗んでは捕まり、出所すればまた盗みを働き捕まるという体たらくだった。判事はティムを海兵隊に入れて鍛え直すのが得策だと考えた。そしてサダム・フセインのクウェート侵攻で、サウジアラビアに送り込まれた。そんなティムだが、判事の当ては外れた。アメリカに舞い戻ってきて、再び盗みを働いて捕まったのである。
ティムは、刑務所でかっとなってヘルズエンジェルのメンバーの喉をかき切って殺してしまい、ヘルズエンジェルに命をねらわれる身となった。そんなおり、伝説のサーファー、ボビーZに似ていることで、ボビーZになり切ることを条件に釈放された。
808975e922bf4152ba220052962aa067 ボビーZの気怠く優雅な人生
ドン・ウィンズロウ/東江一紀
角川文庫
1999年

一方、カリフォルニアのラグーナビーチで育ったロバート・ジェームス・ザカリア(別名ボビーZ)は、高校2年のときから一目置かれるサーファーであり、麻薬の元締めであった。ボビーZは高級マリファナしか扱わない。ボビーZは大金を残してタイで心臓発作で死んだという。

当局の企みは、麻薬王ドン・ウェルテーロに捕らえられた麻薬捜査官と、偽のボビーZを交換しようというもの。取引の日、相手が発砲して国境一帯が滅茶苦茶になって サファリパ-ク化した。そして、ティムは砂漠に建てられた城の、どでかいベッドで目を覚ますことになる。女が朝食はどうか訊ねると、ボビーZが菜食主義者だったことを思い出す。

城の持ち主の、だぼだぼに肥ったゲイのブライアンは、ドン・ウェルテーロの手下である。ウェルテーロがアメリカ南部一帯にメタ(アンフェタミン)の製造工場を建て、ブライアントが人員を供給し、ボビーZにはマーケットを提供してもらうという。
ティムは子供の前で女をナンパするドイツ男を、プールに顔の色が悪くなるまで沈めた。
ティムは一度頭に血が昇ると収拾がつかなくなる。刑務所のカウンセラーに指摘されたことを思い出す。
エリザベスが、その子ども・キットは、エリザベスの友人のオリヴィアとボビーZの子どもだという。僧侶(ザ・モンク)と呼ばれる男が、ボビーZの信頼のおける部下であり金庫番であることがエリザベスの話からわかった。

ウェルテーロがボビーZを捕まえようとする理由は、ウェルテーロのタイ産の麻薬の代金300万ドルを、ザ・モンクがちょまかしたのだ。ティムは、ウェルテーロがボビーZを生かしておかないということを知って、砂漠の城からトラックをかっぱらって6歳のキットを連れて城から脱出した。

ボビーZの命を狙う人物がもうひとりいる。東ロサンゼルスの顔役ルイス・エスコバールだ。兄のホルヘを殺したのは、ボビーZが手を回したからだと吹き込まれていた。

一方、ボビーZの味方も動き出す。伝説の語り部アル中のワンウェイは、精神病院に出たり入ったりだが、ボビーZが帰還したと大声で喚いている。さらに、ボビーZの金庫番のザ・モンクも動き出す。

ティムの命を狙うのはヘルズエンジェルとエスコバールの手下、そしてウェルテーロは生捕にせよという命令を出している。ティムはウェルテーロに300万ドルを返して誤解を解くことにした。ティムはエリザベスとキットを連れて奮闘する。→人気ブログランキング

壊れた世界の者たち/ハーパーブックス/2020年
ボビーZの気怠く優雅な人生/角川文庫/1999年
ストリート・キッズ/創元推理文庫/1993年

大聖堂 レイモンド・カーヴァー

訳者は、巻末に「解題」というタイトルで、各短編のあらすじと解説を書いている。レイモンド・カーヴァーという作家を掘り出して、日本に紹介するのだからという意気込みで。。
カーヴァーが描くのは、決して着実な人生を送っている人々ではない。虐げられた人々だ。カーヴァーはちゃんとしたくても、ちゃんとできない人の苦悩を描いている。
本書は全米批評家協会賞およびピューリッツアー賞候補となった。訳者は「大聖堂」が大傑作とするが、「熱」も劣らず傑作である。
Be30496f95b940d2a084b61c5934fcad大聖堂
レイモンド・カーヴァー/村上春樹
中央公論新社
2007年

「熱」
妻のアイリーンが同僚の教師と駆け落ちした。途方に暮れたカーライルは幼いに2人の子どもを抱え奮闘した。ベビーシッターの当たりが悪くさんざんな目にあった。夏休み中は子どもの面倒をみることで手がいっぱいだった。3か月経って、アイリーンが電話をかけてきた。スピリチュアルな言葉を口にし、駆け落ち相手の男の母親ミセス・ウェブスターをベビーシッターに雇ってはどうかという。翌朝、カーライルが勤めに出る前に、ミセス・ウェブスターが現れた。ミセス・フェブスターは家事も子どもたちの面倒も完璧にこなした。カーライルは気持ちが落ち着き授業に身が入るようになった。
この後カーライルは高熱を出す。ミセス・ウェブスターの看病のおかげでカーライルは回復する。
ところが、ウェブスター夫妻は引っ越さなければならないことになった。止むに止まれぬ事情に、カーライルは納得せざるを得なかった。

「羽根」
夫婦は夫の同僚の家に招待された。クジャクがいて赤ん坊がいた。赤ん坊はひどく不細工で、食事が終わると臭いクジャクを家の中に入れることになった。帰りにクジャクの羽根を何本かもらった。その後、夫婦は同僚の家を訪れていない。

「シェフの家」
夏、アル中だった夫が戻ってきてくれという。夫はシェフの家に住んでいた。マス釣りをしたりして夏を過ごした。シェフの娘と子どもが帰ってきて住むから、出て行ってくれという。夫の計画は台無しになった。

「保存されたもの」
サンディーの夫は解雇されたあと、ソファーで過ごすようになった。
そんなとき冷蔵庫が壊れた。サンディーは競売で冷蔵庫を手に入れようと思い立ち、新聞の広告を夫と2人で目を通した。その夜の7時から近くで納屋競売があることがわかった。サンディーは父と競売に行ったことを思い出していた。あわてて調理したポークチョップを食べようとテーブルに着こうとしたとき、テーブルから水が滴り落ちていた。

「コンパートメント」
マイヤーズはフランスのストラスバーグの大学にいる息子に会いに行く。息子と暴力沙汰になり、そのことが妻との離婚に拍車をかけたとマイヤーズは思っている。マイヤーズがいるコンパートメントに男が乗ってきて、何を話しているかわからなかった。男は眠った。用を足しにトイレに行って帰ってくると、コートのポケットに入れておいた息子への土産の時計がなくなった。男かそれとも誰かが入ってきて盗んでいったのか。躊躇していると、男は停車した駅で降りた。こんなコンパートメントにはいたくないとコートを着て列車の端に行った。帰ってくるとコンパートメントが見つからない。停まっている間に切り離されたのかもしれない。小柄で浅黒い肌の人たちでほぼ満員のコンパートメントの男が、マイヤーズに入れと手招きする。男たちは席を開けてくれた。マイヤーズはそこに座った。ストラスバーグに向かっていないかもしれないと思いながら、眠りに落ちた。

「ささやかだけれど、役に立つこと」
母親は息子の誕生日の前日に、愛想の悪いパン屋でバースデイケーキを予約した。翌朝登校時に息子は車にはねられ、そのまま一人で帰宅したものの、事故の状況を話しているうちに力が抜け眠ってしまった。救急車で病院に連れてきてそのまま入院した。夫に連絡し、夫が病院に駆けつける。医者はショックで目を覚まさないだけだという。息子は眠り続けたまま、一時夫が家に帰ると意味不明の電話がかかる。
病院に戻るとスキャンが必要だと医師がいう。こうしているうちに子どもは息を引き取る。パン屋から電話がくる。
母親にはパン屋が悪党に思えた。予約から3日経って、パン屋に行き事情を説明すると、パン屋は出来立てのシナモンロールを出してくれた。

「ビタミン」
同棲している女の仕事上の部下を首尾よくデートに連れ出した。バーでいいムードなところに、ベトナム帰りの酔った黒人が現れて、金をちらつかせて執拗に連れの女に言い寄った。
すんでのところで逃れて車に戻ると、仕事がうまくいってない女は「お金が欲しくてたまらなかった」と言って泣く。そうなったら手を握る気にもなれず、相手が心臓麻痺になっても構いやしないという気分になって別れた。帰ると、同棲相手の女が愚痴を並べる。うんざりしながら、なんとかなだめて、やっと眠りにつく。

「注意深く」
アル中から脱却しようと、ロイドはひとり暮らしできる住まいに移った。朝食にドーナッツを食べシャンペンを飲んだ。2週間経って11時頃妻が訪ねてきた。朝から耳の穴が耳垢が詰まって気になっていた。妻がハンドバックから出てきた爪切りをふたつに分解して、ナイフのような部分にティッシュを巻きつけて、耳垢をとろうした。トイレに行かせてくれと頼んで、便器の後ろに隠したシャンパンを飲んだ。妻は大家からサラダオイルをもらうという。妻は大家からベビーオイルを借りてきた。それを温めて、横に寝転んで耳の穴にベビーオイルを入れて十分経って、耳からオイルが出てきてそれをタオルで押さえていた。聞こえるようになった。
妻は帰っていった。シャンパンを抜いて、反対の耳が耳垢で詰まるのではないかという不安に襲われた。ベビーオイルを入れたコップを洗いシャンパンを注ぎ、飲むと脂っぽかった。表面に油が浮いていた。それを捨てて、瓶に口をつけて飲んだ。大して異様なことと思われなかった。窓の外を覗くと、光線の角度から3時ごろだろうと見当をつけた。

「ぼくが電話をかけている場所」
フランク・マーティン・アルコール中毒療養所に入って、JPと近しくなった。
JPは取り止めもなく話し続けている。煙突掃除のロキシーが好きになり、ロキシーと結婚し掃除一家の一員となった。子どもが生まれて、望み通りだったが、酒の量が増えていった。ビールがジントニックになった。水筒にウォッカを詰めて仕事に出た。
大晦日に妻に電話したが誰も出なかった。ガールフレンドに電話をかけようとして途中でやめた。悪態をつく男の子との間に何か悪いことが起こってるのは聞きたくないと思った。
元旦になると、JPの妻が面会にやってきた。2人は仲がいい。JPがロキシーと初めて会ったとき、JPがロキシーに頼んだように、わたしはロキシーにキスをしてくれないかと頼んだ。ロキシーは快くやってくれた。
わたしは電話をしようと小銭をポケットから引っ張り出した。まずガールフレンドに電話しよう。

「列車」
夜遅くミス・デントは無人の駅舎にたどり着いた。這いつくばった男の頭に銃を突きつけたばかりだった。そこから逃げるように駅舎に向かったのだ。やがて靴を履いていない白髪の老人と厚化粧の女が駅舎に入ってきた。女は不満をぶつけている。老人は煙草を取り出したがマッチが見つからず、ミス・デントに目を向けたがミス・デントは首を横に振った。女が話しかけてきたので、ミス・デントは銃を持っていることから話を始めようかと思った。そこに列車がやってきた。数人の客は、乗り込んでくる3人に目をやった。老人と女は並んで座り、ミス・デントはその後方の席に座った。そして列車は走り出した。

「轡」
アパートと美容院をやっている私のところへ、一家4人がミネソタから引っ越してきた。農家だったという。夫はどこかに勤め妻は近くのレストランに勤めた。美容院にやってきて、農業をやめなければならなかった理由を話す。それは夫が馬を飼い、競馬レースに手を出したからだという。
数ヶ月して一家がアパートから出て行った。部屋には馬具が残されていた。
馬具は否応なく家族を自分の思う方向に向かせるという。

「大聖堂」
妻の古い友人の男が家に泊まる。男は盲人だ。妻が酔い潰れてしまい、不貞腐れている夫と盲人はテレビを前にしている。TVは大聖堂を映し出している。夫は盲人に大聖堂がどんな形をしているか、説明する。そしてふたりで、大聖堂の絵を描き始めるのだった。→人気ブログランキング

/レイモンド・カーヴァー/中央公論新社/2008年
大聖堂/レイモンド・カーヴァー/中央公論新社 2007年
頼むから静かにしてくれ〈1〉/レイモンド カーヴァー/中央公論新社/2006年
短編小説のアメリカ 52講 こんなにおもしろいアメリカン・ショート・ストーリーズ秘史/青山 南/平凡社ライブラリー/2006年

月と六ペンス

本作品はゴーギャンの生涯を参考にしているが、ゴーギャンそのものではない。ゴーギャンを忘れて読んだほうがいいと、訳者があとがきで述べている。
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サマセット・モーム/ 金原瑞人 訳
新潮文庫
2014年

若手の小説家が、今や天才画家と評価されるチャールズ・ストリックランドについて、本人に会って知り得たことや人づてに聞き及んだことをもとに、その半生を描いたという仕立て。

懇意にしている女流小説家に、ストリックランド夫人を紹介された。作家たちを招いてのパーティを開くことが多い夫人は、わたしの小説のファンだという。

夫のストリックランドは証券取引会社の仲買人をしていた。彼は奥さんと子供をおいて家を出ていった。結婚して17年だった。
夫人はわたしにパリに行って夫を取り戻して欲しいという。
ストリックランドには、一緒にいると噂された女性はおらず、家族を捨てたのは絵を描くためだけだという。妻子のことなど知ったことかと切り捨てた。そのことを夫人に伝えると悲しんだが、やがて夫人はタイピストの仕事で自立した。

それから5年経って、わたしはパリに住むことにした。以前、ローマで知り合った画家のストルーヴェにストリックランドのアパートに案内してもらった。をたずね、ストリックランドは相変わらず貧乏暮らしをして、絵を描いていた。ストルーヴェはストリックランドは天才だという。
ストリットランドがクリスマスを前にして病気になった。
ストルーヴェは自分の家で看病すると宣言したが、妻のブランチが強く反対した。なんとか妻を説得して、家に連れてきた。病気が治るまでに6週間かかった。

あれほどストリットランドを嫌っていたブランチが、彼と一緒に暮らすと家を出て行った。ところがストリットランドに愛情を受け入れてもらえないことで、ブランチは服毒自殺してしまう。ストルーヴは、ストリットランドが描いた妻の裸婦像を目にし、逆上した。しかし、その出来栄えはまごうかたなく本物だった。

ストリットランドと最後にあってから15年がすぎ、彼が死んでから9年も経っていた。ここからはタヒチで聞いた話だ。

ストリックランドは各地を転々としたあとに、タヒチにたどり着いた。タヒチの人にとって彼はいつも金に困っている港の労働者だった。
ホテルの女主人は、彼にアタという妻を斡旋した。ストリックランドは人里離れた奥地で暮らし、創作活動に励んだという。
ストリックランドはハンセン病に感染し、最期は医師のクートラが見届けた。彼の遺作は遺言によって燃やされたという。わたしは、クートラ医師の所有するストリックランドの果物の絵を見て恐ろしさを感じた。

ロンドンに帰ったわたしはストリックランド夫人に再会し、タヒチでのストリックランドのことを夫人とその息子に話した。アタとの息子の話は省略したが、その他すべてを伝えた。
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高校の英語の副読本にサマセット・モームの作品が使われたことがあった。レストランで支払いするときに、照明が暗く、紙に書かれた数字が見えるか見えないかであると書かれていた。爪の形についても触れられていた。そのふたつの場面が、頭に残っている。副読本は『月と六ペンス』から採用したと思っていたが、本書にそのような場面はなかった。『人間の絆』だったろうか。

月と6ペンス/サマセット・モーム/金原瑞人/新潮文庫/2014年
ジゴロとジゴレット/サマセット・モーム/金原瑞人/新潮文庫/2015年

ザリガニの鳴くところ ディーリア・オーエンズ

1969年、海辺に立つ櫓からチェイスが転落死した。チェイスは村一番の美人と結婚したばかりだった。チェイスの死と湿地に住むカイアの成長の話が、時間を行きつ戻りつしながら語られる。
著者は動物学と動物行動学の博士号をもつ動物学者である。69歳のときに本書を書き上げた。本書は、湿地帯の地形や気候そこに生息する生物の生態を背景に、差別問題、少女の成長の物語、恋愛小説、フーダニットのミステリと多彩な要素をもっている。2019年にアメリカで一番売れた本だという。

カイアはノースカロライナの湿地帯バークリー・コーヴにひとりで暮らしている。家族に暴力を振るう飲んだくれの夫に耐えかねて母親が家を出ていき、姉と兄が出ていった。相変わらず父親は不機嫌で、カイアは父親の顔色をうかがいながら生活している。父親の機嫌のいいときに、ボートの操り方を教えてもらった。そして父親も家に帰ってこなくなった。

Photo_20200801120201 ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ/友廣 純
早川書房
2020年 

村の人びとは、カイアを「湿地の少女」と呼び、嘲りあるいは怖がり、差別した。カイアは1日だけ学校に通ったが、そのあと無断欠席補導員がくると姿を隠すようになった。

カイアはボートを器用に操り、魚を獲って燻製にして、黒人のジャンピンに売って金を手にした。カイアは、ジャンピン妻メイべルから畑で野菜を育てる方法を訊き、種をもらった。メイベルが服や食べ物など生活に必要なの物を用意してくれた。

カイアは漁師の息子であり兄の親友であったテイトと親しくなり、読み書きを教えてもらう。聡明なカイアはテイトが持ってくる本を読み、知識を身につけていった。もともとカイアは貝殻を集めたり、鳥の羽を集めたりするのが好きだった。カモメに餌をやり、生物の生態を観察し、自然の法則を理解していった。
時には隣町の図書館に出向き、テイトが紹介してくれた生物学の専門書を読むこともあった。カイアの味方はテイトとジャンピンとメイベル、それと湿地の生物たちだった。

湿地の研究をする生物学者になる目的で、テイトはノースカロライナ大学に入学し町を離れた。約束した翌年の7月4日に、テイトは現れなかった。カイアは絶望しケイトに捨てられたと思った。
そんなカイアにチェイスは近づき、なんとかものにしようとした。結婚を餌にカイアを騙したのだ。

湿地帯の近くに連邦政府の研究所が建設され、大学を卒業したテイトはそこの常勤の科学員として雇われた。カイアとチェイスのやりとりを見て、テイトは身を引くことにした。

カイアはテイトの勧めで、バークリー・コーヴの湿地帯に生息する貝の生態に関する本を書いた。本は好評を博した。カイアは出版社の要請で、グリーンヴィルにバスで出かけ、担当者と次に出版する本の打ち合わせをすることになった。
カイアがグリーンヴィルのモーテルに一泊した夜に、チェイスが転落死したのだった。

警察はカイアを第1級殺人の容疑者として拘束し、検察側は状況証拠だけでカイアの犯行と断定するのだった。バークリー・コーヴの住民である陪審人たちは、カイアにどのような判決を下すのか。

「ザリガニの鳴くところ」とは、茂みの奥深く生き物たちが自然のままの姿で生きているところという意味である。→人気ブログランキング

ジゴロとジゴレット サマセット・モーム

モームは通俗小説家というレッテルが貼られている。あえてそう呼ばれる作家はモーム以外にそうはいないだろう。通俗小説は、日本でいえば純文学、つまり哲学的な要素をもつ小説より下に見られがちである。最近はそういう考え方が少数派になってきているが、モームが活躍した20世紀前半は、その傾向が強かった。モームは、人間の深層心理を難しい言い回しを使わずにさらりと書いてしまう、その筆さばきに驚くばかりだ。
モームの人物をたたみかけるように表現する。まるでそこに人物がいるようだ。「マウントドラーゴ卿」で、卿を診察する医師について、その見た目を書いている。死神のようではあるが信頼がおける医師が、今まさに診察しようとする姿が浮かんでくる。
ストーリーは二転三転し、思わぬ結末に到達する。まさに通俗作家と呼ばれるにふさわしい。本書はぶっ飛ぶくらい面白い。

Image_20200704112201 ジゴロとジゴレット
サマセット・モーム/金原瑞人
新潮文庫
2015年 10✳︎

「アンティーブの三人の太った女」The Three Fat Women of Antibes
未婚と寡婦と独身の三人の女はアンティーブで痩せようと努力をしているが、経過は思わしくなかった。そこに寡婦となったリサが加わった。リサはブリッジがうまく決してゲームに貪欲ではないという、三人の女の条件をクリアした。ところが、リサはいくら食べても太らない体質で、バター、生クリーム、フライドポテト、フォアグラ、シャンペンと、三人の前で遠慮することなく食べる。しかもブリッジが強い。ついに、三人はやけ食いに走るのだった。

「征服されざる者」The Unconquered
アネットは道を聞きにきたドイツ軍人のハンスに犯され身籠ってしまう。3か月後、ハンスは絹の靴下を買ってアネットの家を訪れたが、アネットに罵られた。ハンスはチーズと豚肉を持って再び訪れる。父母はハンスを信頼し、ハンスは父母に歓待されるようになる。ハンスはアネットが身ごもったことを知ると、旗色が変わり、アネットを思慕するようになる。アネットはハンスを拒否し続ける。

「キジバトのような声」The Voice of The Turtle
新人小説家と会う羽目になった。無礼で、自己主張が強く、仲間の作家を軽蔑していた。社交辞令でリヴィエラの別荘に誘ったところ、実際にやってきた。イギリスを離れるのは初めてだという。プリマドンナの恋物語を書きたいという。そこで、プリマドンナとの晩餐をセッティングした。出来上がった本を読んでプリマドンナが怒る。罵詈雑言を口にするが目は怒ってない。

「マウントドラーゴ卿」Lord Mountdrago
精神科のオードリン医師には、噂が噂を呼び治療費が高いにもかかわらず、患者が押しよせるようになった。
保守党のマウントドラーゴ卿は40歳前に外務大臣になり3年が経っている。欠点は家柄の伯爵位を鼻にかけることだった。
マウントドラーゴ卿は、公式のパーティでズボンを履いていなかった夢を見たという。翌日、下院のロビーで労働党のグリフィス議員が卿の下半身に目をやり笑ったのだという。次の夢は、議場で演説を始めると、舌を出して歌を歌うグリフィス議員がいたという。
医師は、一連の夢はマウントドラーゴ卿がグリフィス議員を莫迦にし続けたことが原因であるとし、グリフィス議員に謝罪するようにいう。それはできないとマウントドラーゴ卿は医師の要求を突っぱねた。

「良心の問題」A Man with a Conscience
流刑地の中心、フランス領ギニアのサン・ローラン・デュ・マロニは美しい町だ。ここに送られる受刑者のうち2/3は殺人犯である。受刑者に話を聞く。
殺人を冒したことを対して悪いと思ってない。こんなところに送られたと、殺した相手を恨んでいる始末だ。妻殺しの男の述懐がはじまる。

「サナトリウム」Sanatorium
サナトリウムは残酷なところだ。いずれ出てこられる人、死期が間近い人、長年白黒がつかずに暮らす人が、長期にわたって日常を共にする。患者同士が結婚することで、患者たちの死生観に変化をもたらす。

「ジェイン」Jane
ミセス・タワーの義理の妹・ジェインが27歳年下の青年と結婚した。夫のデザインする服を着て髪を切り見違えるようになったジェインのパーティには、有名人が集まってくるようになった。その魅力は奇抜なデザイン洋服の着こなしと話が面白いことだった。その話の中身とは。

「ジゴロとジゴレット」Gigolo and Gigolette
リヴィエラのカジノの出し物で、18メートルの飛び込み台から火を放ったプールに飛び込む技を披露していたステラは、その昔、弾丸娘と呼ばれてサーカスで危険な技を得意としていた老女の言葉を聞いて、怖気づく。→人気ブログランキング

月と6ペンス/サマセット・モーム 金原瑞人/新潮文庫/2014年
ジゴロとジゴレット/サマセット・モーム 金原瑞人/新潮文庫/2015年

ガットショット・ストレート ルー・バーニー

主人公は40歳を超えたシェイク。シェイクは若い娘ジーナに引っ張られて大金を手にしようとするが、ジーナは自由気ままな予測をはぐらかす行動をとる。

刑務所を出たばかりのシェイクは、300キロ先のロサンジェルス行きのバスに乗った。LAに着くと、アレクサンドラがリムジンで迎えに来ていた。
アルメニアで生まれたアレクサンドラは、山岳地帯の部族軍の棟梁に嫁入りしたのが16歳の時。20歳の頃には夫を殺して、近隣の競合部族全員を崩壊させた。その後アメリカに移住し、10年後にはLA中のアルメニア人ギャングを手中にした、美貌の女傑である。

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ガットショット・ストレート

ルー・バーニー/細美遥子
イースト・プレス
2014年 ✳︎8

 

 

シェイクはアレクサンドラに仕事をもらう。車でヴェガスに行って、相手に車を渡しブリーフケースを受け取り、飛行機でLAに戻ってくるという運び屋の仕事だ。ヴェガスへの途中でトランクに人が詰め込まれていることに気づく。ジーナが手錠をはめられてトランクにいた。
シェイクは相手に車を渡しブリーフケースを受け取るが、悪党の〈クジラ〉は女がいないことに気づき手下にシェイクを探させる。

ブリーフケースの中身が金になる切手らしいと知ったジーナは、シェイクを出し抜いてブリーフケースを持ち出し、金に替えようとする。ジーナが古物商にブリーフケースを持っていくと、中身は切手ではなく包皮だという。価値は最低でも500万ドル、しかし買い手はいないという。

ところで包皮とはなんだ?男性器の皮のミイラ化したものとのことだが、なんでそんなものに価値があるのだろう。マニアにとってはキリスト教にまつわる垂涎の聖遺物で、パナマに住むローランド・ジーグラーなら高額で買うはずだという。

ジーグラーは亡命者で、アルメニア人マフィアに詐欺用の会社作りに手を貸している。大勢の老人を騙して金を奪い取った犯罪者である。連邦捜査官が一旦は捕まえたが、不渡りの小切手を書いて保釈されそれ以降は、見た者も話を聞いた者もいないというお尋ね者である。

そして、場面はパナマ・シティに代わる。パナマ行きの飛行機に搭乗するのは、ジーナから包皮入りのブリーフケースをだまし取った古物商のマーヴィン・オーツ。そしてタッグを組んだシェイクとジーナ。さらにアレクサンドラと〈クジラ〉とその取り巻きの3組だ。そこにパナマ・シティの安いレストランでお見合いの合コンに出席するテッドというオタク男も紛れ込む。

パナマでの包皮入りブリーフケースの争奪戦に加え、偏屈で大金持ちの犯罪者ジーグラーと、誰がどう接触するかが見ものである。

悪党どもが非道の暴力沙汰を繰り広げると思いきや、南国の陽気と大らかさに包まれて暴力はなりを潜め、どういうわけか勧善懲悪の方向でこじんまりとまとまってしまうのは、どうにも期待が外れた。→人気ブログランキング

11月に去りし者/ルー・バーニー/加賀山卓朗/ハーパーBOOKS/2019年
ガットショット・ストレート/ルー・バーニー/細美遥子/イースト・プレス/2014年

11月に去りし者 ルー・バーニー

本作は、『このミステリがすごい 2020年度版』』では6位、『週刊文春』では20位と評価が大きく分かれている。エルモア・レナードを彷彿とさせるノアール小説であり、恋愛小説でもある。ノアール小説は好みが別れるのかもしれない。
1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された。
ニューオリンズの暗黒街のボス、カルロス・マルチェロは、自身とケネディ暗殺を結ぶすべての糸を断ち切るために、暗殺に少しでも関わった人物を次々と殺していく。
実在したカルロス・マルチェロは、ケネディ大統領暗殺の黒幕との疑いがある。
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ルー・バーニー/加賀山卓朗
ハーパーBOOKS
2019年

ケイジャン人のギドリーはダラスで狙撃犯の逃走用の車を手配しただけだった。その車を処分した男が殺された。ギドリーは自分にも魔の手が及ぶと読んで、テキサスを脱出しカリフォルニアに向かおうとする。

一方、オクラホマの田舎町でふたりの幼い娘を抱え、飲んだくれの夫に悩まされているシャーロットは、ある日決断した。義父母と夫を捨てて、娘たちと病気の犬を車に乗せ、ロサンジェルスのおばの家に向かったのだ。
国道66号線のニューメキシコ州に入ったところで、雨に濡れた路面でスリップしてしまい、側溝にタイヤがはまってしまう。
ギドリーは、事故に遭い途方にくれているシャーロットたちの脇を車で通り過ぎるときに、アイディアが浮かんだ。チャーロットたちと一緒に行動すれば、殺し屋の目を欺けるかもしれない。

本来なら絶対に接点を持つことのないふたり、ニューオリンズのマフィアの幹部候補生とオクラホマの主婦が出会い、そこに非情の殺し屋が追跡をするという構図である。殺し屋は、ギドリーに専念する前に、不覚にも手をナイフで貫通させられる創を負ってしまい、その創が治りきらないハンディを抱える。

シャーロットの利発でチャーミングな幼い娘たちの存在が、一服の清涼剤となっている。

本作はアンソニー賞、バリー賞、マカヴィティ賞、ハメット賞の4冠に輝いた。
読後の評価は、20位ではなくて、6位あるいはそれ以上だ。→人気ブログランキング

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