アメリカ

アメリカ炎上通信 言霊USA XXL 町山智浩

『週刊文春』に連載されている「言霊USA」(2018年3月〜2019年7月)の69本のコラムを収録。
コアなUSAウォッチャーの著者は、トランプが大統領になって話題が尽きないので、書くことに困らないという。トランプは、平気で嘘をつくが本音を言い、自らの行いは過剰に褒め、敵は徹底的に腐す。利用価値があると思えば、危険な人物であろうと近ずいていく。よく言えば、わかりやすくて邪気がない。悪く言えば子どもで、自己愛性人格障害ともいわれている。
一部のエキセントリックな白人だけがトランプを支持しているわけではない。そもそも白人はアメリカは自分たちの国だと思っている。自分たちは選ばれた人間だと信じている。これ以上有色人種が増えると白人優位のアメリカを維持できなくなるという焦燥感が、トランプ支持する。なにも手を打たなければ、共和党は選挙に勝てなくなる。そこで、顔写真付きの身分証明書なしには投票できない、有権者ID法を取り入れる州がでてきている。黒人をはじめとする有色人種は、免許証を持っている割合が圧倒的に低い。
トランプはもちろんだが、今の共和党には賢さが皆無だ。
ピックアップした「Qanon」「Uninged」「Very Close To Complete Victory.」「Busing」について抄記する。

Image_20200910143501 アメリカ炎上通信 言霊USA XXL

町山智浩
文藝春秋 2019年

QAnon(Qアノン=トランプ支持者が信じる匿名ネット投稿者 2018年9月6日)
Qという匿名(Qアノニマス=匿名者Q)のネット投稿からはじまった陰謀論で、アメリカはディープ・ステートという闇の組織に支配されているという。ヒラリー・クリントンや政府高官が絡んでいて、政財界には小児性愛者ののネットワークがあり、ワシントンのピザ屋で、子どもを売買しているという。2016年にはQAnon信者がそのピザ屋を銃で襲う事件が発生した。
トランプ支持者にはQAnon信者が多い。QAnon信者はそれと戦う正義の味方がトランプだと信じている。

Uninged(タガが外れて 2018年10月4日)
トランプの閣僚で唯一の黒人女性だったオマローサ・マニゴールドが解雇され、オマローサは回顧録『UNHINGED(アンヒンジド)』を出版した。
トランプと著者は、出演していた人気テレビ番組『アプレンティス』以来のつき合いがある。オマローサは大統領制出馬以来、広報を担当してきた。
トランプは極度の健忘症で、前日に言ったことすら覚えていない。「精神的に問題がある」と強調している。 
また、大統領選の遊説で黒人教会に行ったとき、トランプが「ニガー、ニガー」と差別用語を多発し、「(黒人に何をされるかわからないから)俺をひとりにしないでくれ」と懇願したなど、黒人への差別意識を丸出しにする姿も暴露されている。
一方、トランプは「彼女を雇ったのは涙目で哀願してきたからだ」と言っている。まるで小学生だ。

Very Close To Complete Victory.(ほとんど完璧な勝利 2018年11月29日)
アンドリュー・ジャクソン(第7代大統領)は、テネシー州や南部に住んでいた先住民をオクラホマに強制移住させて彼らの土地を白人入植者に与え、絶大な人気を誇った。トランプはジャクソンを尊敬しているという。
テネシー州はバイブルベルトの一部で、キリスト教福音派が全米で最も多い。彼らにとっては、1973年に人工中絶が違憲だとした最高裁判決を覆すことが悲願。トランプによって最高裁判事9人のうち5人が保守派判事が占めることとなった。中絶の再禁止が実現し、同性婚も風前の灯だ。

Busing(公立学校地域格差是正のためのバス通学 2019年7月18日)
民主党の大統領候補レースが始まった。今回は24名が出馬している。
トップはジョー・バイデン、2番がバーニー・サンダース、3番手がエリザベス・ウォーレン、以上4人は70歳以上の年齢。トップ3が70歳代だとは、なんという人材不足。
4番手はカーマラ・ハリスで54歳。6月27日マイアミで行われたディベートの勝者は、カーマラ・ハリスだ。父はアフリカ系のジャマイカ人。母はタミル系のインド人。父は経済学、母は医学、それぞれが博士号を取るためにカリフォルニア大学バークレー校に学んでいる間に出会って結婚した。そして生まれたのがカーマラ。そのご夫婦は離婚、カーマラは母の手で育てられた。
バシングとは、学童が通う学校をシャッフルすることで、貧困地域の子を富裕層の多い地区の学校に通わせ、その逆も行い、格差をなくすこと。
ハリスが小学生だった1973年、バイデンは上院議員として、議会でバシングに反対票を投じたのだ。それを、ハリスは追求した。→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2/町山智浩 /文春文庫 2016年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年
アメリカ炎上通信 言霊USA XXL/町山智浩/文藝春秋/2019年

アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2 町山智浩

2012年の8月から2016年3月まで、『週刊文春』の「言霊USA」に掲載された 74本のコラムを掲載している。おりしも、オバマ大統領の2期目の年から、2016年の初めトランプがいまだ泡沫候補であった頃まである。
アメリカでは、人種差別は永遠のテーマであり、相変わらず銃乱射事件は頻発するし、レイプの件数は驚くべき数字である。女性差別も貧富の差も一向によい方向に向かっていない。著者はそれをローアングルからとらえている。。
巻末の解説は、東京大学とハーバード大に合格したことをウリにしているモーリー・ロバートソン。自分はあまたいる日本の外人タレントの中で本物であり、町山のアメリカ情報も本物であると婉曲にいう。
トランプの白人至上主義について冷静な見解を述べている。つまり、2040年頃には白人が少数派に転じる。いずれ大統領は非白人に寄り添った政治しか許されなくなる。いまアメリカは最後の悪あがきをしているというもの。これは定説ともいえる見解だ。

Photo_20200903124201 アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2
町山智浩
文春文庫 2016年 ✳10

Three Cups of Deceit(偽りのスリーカップス)
いやーショックだ。400万部以上を売り上げ、2006年の全米ベストセラーとなった『スリーカップス・オブ・ティ』が作り話で、著者が詐欺をはたらいていたとは。日本では2010年3月に出版され、早速読んで大いに感激した。
ヒマラヤ山脈のK2峰登頂にを途中で断念したモーテンソンが道に迷って遭難し、パキスタンのコンフェという村の人々に助けられる。モーテンソンは看護師で、後産で死の淵を彷徨う村の女性を救い村人の信頼を得る。村に学校を作ると言ってアメリカに戻り、寄付を集めてコンフェに戻って学校を建てた。9.11で分断されたアラブと西側の架け橋になろうと、その後の学校を建てようとする感動ものだった。
著者が主催する団体に全米の慈善事業家、教育機関、市民団体から巨額の寄付が集まった。しかし膨大の額の使途不明金が指摘されたが、著者は沈黙しているという。

Kids Vote(子供投票)
大統領選の予想のあれこれ。
もっとも当たっている予想は、1940年から続いている「Kids Vote」。過去2回しか外していないという。絵本や教科書を出版するスコラスティック社が主催し、18歳以下の25万人が参加する。親の投票行動が反映するからだろうと言われている。

Taste worth dying for(死ぬ価値のある味)
アメリカでは年間12万人が肥満で死ぬという。
2011年、ラスヴェガスにオープンしたレストラン「ハートアタック・グリル」の店の入り口には、「この店は健康に有害です」と警告文が出ている。ウェートレスは看護婦のコスプレ、客は手術の時に患者が着る服を着せられ、車椅子で店内に案内される。
全部で9900キロカロリーのハンバーガーがメインで、付け合わせはラードで揚げたフライ。ドリンクはメキシコから取り寄せた砂糖たっぷりのコーラ、またはバターたっぷりのミルクセーキ。156キロ以上の人はいくら食べても無料だという。常連客が心臓麻痺で救急車で運ばれたが死んだ。
この店の客が死ぬのは初めてではない。ラスヴェガスの前は店がアリゾナにあったが、29歳の常連客が店の中で心停止した。
「オーナーは言う。たとえ死のうが、好きなものを食べる自由がある!」いかにも、自由を重んじるアメリカだ。→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2/町山智浩 /文春文庫 2016年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年
アメリカ炎上通信 言霊USA XXL/町山智浩/文藝春秋/2019年

トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4 町山智浩

2016年、共和党の大統領候補指名選は、最終的にトランプとフロリダの上院議員テッド・クルーズの戦いになった。お互い「お前の母ちゃん出べそ」的な中学生レベルのネガティブキャンペーンを行った。が、相手の弱点をつくことにおいては、トランプに一日の長があった。その悪口の発信を追求されると、PAD(政治活動委員会)という団体が勝手にやったことだと、それぞれの陣営が責任逃れをした。PADは政治家を勝手に応援する後援会で、個人や企業からの献金で潤っている。潤沢な資金で下品なCMが多量に流されることになった。とういうのが前置き。
本書に収録されているのは、『週間文春』の「言霊USA」に、2015年3月19日号〜2016年間3月17日号の間に掲載されたコラム。
本書のタイトルは、トランプ陣営が支持者集会でローリング・ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』を流したところからきている。歌詞の中でサタンはこう繰り返す。「私がやっているこのゲームの正体がわからなくて、あなた方は困惑しているでしょう?」これは、支持者集会に流す曲じゃない、そんなことはどうでもいいという精神構造が、ヤバイ。
Image_20200829162401 トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4
町山智浩
文春文庫 2018年 ✳︎10

Opioid(オピオイド=アヘン類似物質)
2015年7月、日本でトヨタのアメリカ人元常務役員ジェリー・ハンプが麻薬の密輸で逮捕された。彼女が持ち込んだオキシドコンという鎮痛剤は、アメリカでは処方箋があれば手に入る。日本でも同じ方法で手に入るが、処方の条件が厳格である。日本で多く処方されているのは「非麻薬性」オピオイドと呼ばれるヤワなやつだ。
オキシドコンは、オピオイドと呼ばれる強力な鎮痛剤で抑うつ効果がある。ハッピーな気分になる。「-oid」は「〜に見える」「それっぽい」という意味だ。麻薬類似物質の常用者は940万人、総売上2億ドル以上の一大産業なのだ。オピオイド中毒は深刻な問題である。いずれ、ヘロインに手を出すことになる。

Black people can't swim?(黒人は泳げない?)
アメリカでは水泳は義務教育の必修科目ではない。貧乏だったり、共稼ぎや片親の忙しい家庭の子は泳ぐ機会がない。
『アメリカのプールの社会史』は、モンタナ大学のジェフ・ウィルツ准教授がプールにおける人種差別を研究したものだ。奴隷制度の時代、白人たちは黒人が川に入ることを固く禁じた。逃げられてしまうからだ。1920年代、全米各地にプールが作られたが、黒人は入ることができなかった。
現在、市民プールにおける差別は「いちおう」なくなったが、「水泳格差」は存在する。実際、USA水泳連盟とメンフィス大学が2010年に発表したデータによると、黒人の7割は泳げない。白人の少年に比べて溺死事故は3倍も多い。

Don't get ahead of the news,It will run you over.(ニュースの先を走ってはならない。後ろから轢かれることになる。by FOXニュースのキャスター)
全米警官組合はタランティーノの映画を「反警官的」としている、新作西部劇『ヘイトフル・エイト』のプレミアム試写会の、警備や交通整理を一切行わないよう呼びかけた。
デビュー作の『レザボア・ドッグス』(92年)ではギャング同士の次のような会話がある。「人を殺したことがあるか?ポリ公じゃなくて、本物の人間を」。タランティーノは警官が嫌いだってことは明らかだ。

メディア王ルパート・マードック傘下のFOXニュースは、黒人射殺が続く昨今は警察官の味方についている。横領がばれそうになり殉職したように見せかけ自殺した警官を、FOXニュースは英雄と祭り上げてしまった。タイトルはFOXニュースのキャスターが、戒めに言った言葉。

Snitch (密告者、チクリ屋)
麻薬王エル・チャポのアジトに海兵隊が踏み込み、一味はほとんど射殺され、エル・チャポは拘束された。エル・チャポは麻薬密売組織シナロア・カルテルのボス。資産10億ドルといわれアメリカ経済誌『フォーブス』の富豪ランキングに入る。エル・チャポは今まで何回も逮捕と脱獄を繰り返していた。
そのエル・チャポに、素人記者としてたびたび記事を書いてきたショーン・ペンがインタビューした。ペンの記事は当たり障りのない内容で、なんのツッコミも入っていない。
ところがこのダメ記事が役に立った。インタビューの交渉に会話を暗号化する携帯電話を使ったが、アメリカ政府の監視システムに引っかかった。密告者になってしまったショーン・ペンは、命がヤバイんじゃないか?→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか 町山智浩

著者は「リアル・アメリカの伝道師」と呼ばれ、アメリカに関する圧倒的な量の情報を日本に発信し続けている。本書は『週刊現代』の連載コラム『アメリカで味噌汁』を中心に、『サイゾー』『TVプロレス』『クロスビート』などのコラム102編を集めたものである。
文庫版あとがきで、著者は、「アメリカに住むということは、サーカスの見世物を最前列で見るようなもんだ」という、コメディアンのジョージ・カーリンの言葉を紹介している。サンフランシスコの湾を渡った向かいのバークレーに在住。
Photo_20200821142501キャプテン・アメリカはなぜ死んだか

町山智浩
文春文庫
2011年 10✳

アメリカは、ハチャメチャなことが日常的に起こっている国だ。両極端の考えの人がそれぞれ派手な動きをする。白人至上主義が引き起こす人種がらみの事件は尽きないし、宗教は暴走するし、何でもかんでも訴訟を起こす。精神の変調をきたしているやからが銃をぶっ放す。クスリやセックス絡みで暴力事件が起こる。アメリカにはカルト集団がうようよいて、それらが信じられない事件を引き起こす。本書では、そんなサーカスの出し物が次から次へと繰り出される。
本書の特徴は、事の発端となった背景や歴史など、一つのコラムにテンコ盛の情報が詰め込まれていることだ。さらに著者の一見軽いが痛烈な皮肉が込められる。

キャプテン・アメリカは日本人に馴染みが薄いが、コラム「キャプテン・アメリカはなぜ死んだか」で、著者はなにを語っているのか。
アメリカン・コミックのスーパーヒーローであるキャプテン・アメリカの死は、『USAトゥデイ』紙など全米各紙で事件として報じられた。その理由は、キャプテン・アメリカが政治的な存在だからだという。
1941年、真珠湾攻撃が始まると主人公のスティーヴン・ロジャースは軍に志願するが、ひ弱な体で不適格とされる。そこで、超兵士を作る人体実験のモルモットとなる。超兵士となったスティーヴは星条旗を身につけ、キャプテン・アメリカとして、ナチスや日本軍と戦う。大戦後、共産主義と戦うが、すぐにシリーズは休刊する。
1964年、20年間北極の氷の中に閉じ込められていたという設定で現代に蘇る。しかし1974年ニクソンが辞任すると、キャプテン・アメリカもコスチュームを脱いだ。そればかりかヒッピーのように髪を伸ばしノマド(祖国なき者)と名乗ってアメリカを放浪し始める。
結局、再びコスチュームを着たが、アメリカを愛するため政府と対決する。新米のスーパーヒーローと悪漢たちの戦いに一般人が巻き込まれて大惨事が起こり、連邦議会は「超人登録法」を可決した。2007年、スーパーヒーローをすべて政府の管理下に置く法律である。「超人登録法」は、ブッシュ政権のテロ取り締まりのため盗聴や拘束を合法化した「愛国法」のメタファーだ。体制側についたアイアンマンたちに敗れたキャプテンは反政府活動家として逮捕された上に、裁判所の階段で何者かに狙撃され死んでしまう。(07年9月)

真珠湾攻撃がキャプテンが生まれるきっかけだから、日本には受けが悪いわけだ。→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年

公園に行かないか?火曜日に 柴崎友香

著者は、アイオワ大学で催されたインターナショナル・ライティング・プログラム(IWP)に招聘された。期間は2016年8月20日から10週間、参加した作家は33か国から37人。その約3か月間の滞在記を、エッセイ風の連作短編に仕上げた。
英語が堪能でない著者は、英語しか通用しない世界で、生活するだけで相当のエネルギーを費やす。ことさら言葉に思いがいき、英語と日本語の意味のギャップを掘り下げて考察する。

今までにIWPに参加した日本人は、中上健次(1982年、『アメリカ・アメリカ』)、水村美苗(2003年、『日本語が滅びる時』)、中島京子(2009年)、藤野可織(2017年)、そして著者。2018年には、滝口悠生が招聘され、『やがて忘れる過程の途中』というエッセイ集を書いている。(『』内はIWPについての著作)。
中上健次のなんでも吸収しようとする渇望感や、何かを発信しようするエネルギーは、本書にはない。そういう時代はとっくに終わったのだということを知らしめる。

Photo_20200623143801公園に行かないか?火曜日に

柴崎友香
新潮社
2018年

「公園に行かないか?火曜日に」
アメリカの町は自然に従うよりも合理性をとって碁盤の目のように道を通す。アイオワシティもその例に漏れず、急に登りになって直角に曲がったりする。
公園にいかないかと、ラインで誘いがあった。
ぬかるみもありけっこう長く歩いて森を抜けると、スキー場のようななだらかでのっぺりとした斜面に出た。終わりは見えないほど広かった。

「ホラー映画教室」
アイオワ大学は敷地の境界がない。大学が民間の家を買い上げて、町の中に大学の施設があったりする。デイ・ハウスの地下で『シャイニング』を上映するというので、香港から来たヴァージニアと出かけた。会場にたどり着く様子や、女性が夜道を歩くこと、ドアを開ける音など、タイトルらしい出来事が綴られる。

「It would be great!」
アイオワシティには鉄道の駅がないから町の中心をいつまでもつかめないという。
greatは、文脈によって微妙にニュアンスが違う。つまりgreatだけれど、ぜんぜんgreatじゃないことがある。

「とうもろこし畑の七面鳥」「ニューヨーク、2016年11月」「小さな町での暮らし/ここと、そこ」「1969年 1977年 1981年 1985年そして2016年」「ニューオリンズの幽霊たち」「わたしを野球に連れてって」「生存者たちと死者たちの名前」

「言葉 音楽 言葉」
ボブ・ディランのノーベル賞受賞が発表された。なんでボブ・ディラン? ほかにとるべき人がいるのにと、少し議論になった。
何かをするたびに、グレイト! パーフェクト! 大げさだと思っても、英語での生活に苦労している身にとっては、励まされるという奇妙な心境になる。→人気ブログランキング

やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記) /滝口悠生/NUMABOOKS/2019年
公園に行かないか?火曜日に/柴崎友香/新潮社/2018年
日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で/水村美苗/ちくま文庫/2015年
アメリカ・アメリカ/中上健次/角川文庫/1992年

アメリカ・アメリカ 中上健次

1982年秋、著者は、世界の36カ国から作家が集まって3か月を過ごすアイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラム(IWP)に招聘された。
レガノミックスの時代である。レバノンで大量虐殺があり、フォークランド紛争が勃発し、コロンビアのガルシア・マルケスがノーベル賞を受賞した。
Photo_20200612081101アメリカ・アメリカ 
中上健次
角川文庫
1992年

著者は、IWPのプログラムは大した実りがないと判断し、ブルドーザーのようにまわりを巻き込んで突き進む。
文学の討論をするわけでもなく、病院のようなアパートでなまった英語て取り止めのないことを話すのが目的だと知れた。ペチャクチャしゃべるだけだ。
著者は、意欲的に自ら朗読会を催すと、ペチャクチャグループも参加するという。

著者はIWP参加者にインタヴューをはじめた。
インタヴューには、ヨイショのインタヴューと相手を怒らせて腹の中を覗くという方法があるという。インタヴューが5人目になるころには、インタヴューを待ち受けるようになった。
ちょうど、ガルシア・マルケスがノーベル賞を受賞したニュースが飛び込んできて、ラテン・アメリカの参加者たちは、マルケスの受賞に戸惑ったようだった。大家ボルヘスが受賞しないのはなぜかと訝った。

プログラムの最後には、IWPが用意した旅費付きの国内旅行を、車でやってみようと著者は思いつき、中南部アメリカを一人で駆け抜けた。

後半は、20世紀文学の巨匠ホルヘ・ルイス・ボルヘス、ジャマイカ出身のレゲエの先駆者ボブ・マーリーらへのインタビューが掲載されている。
ボルヘスとの対談は、著者がボルヘスを持ち上げたり、何かを引き出そうとしたり、懸命に立ち向かうのだが、ボルヘスは核心をジョークで受け流す。ボルヘスが著者を軽くあしらっているという印象である。

「書くこと」に真正面から取り組もうとするエネルギッシュな中上の本領が垣間見える。→人気ブログランキング

やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記) /滝口悠生/NUMABOOKS/2019年
公園に行かないか?火曜日に/柴崎友香/新潮社/2018年
日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で/水村美苗/ちくま文庫/2015年
アメリカ・アメリカ/中上健次/角川文庫/1992年

『炎の中の図書館』スーザン・オーリアン

ロサンゼルス中央図書館が火事で焼け落ちた。7時間以上燃え続け、110万冊の本が燃えるか損傷した。幸い死者は出なかった。
以前より、中央図書館は消防署から20箇所もの不備の指摘を受けていた。その日(1986年4月29日)も火事が起きる前に火災報知機が誤作動し消防署に連絡している。
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炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火

スーザン・オーリアン/羽田詩津子
早川書房
2019年 ✳︎10

火事が起こった日に、年配の女性は図書館内で金髪で口ひげを生やした青年が足早に歩いてきてぶつかり、青年は動揺しているように見えたが、彼女が起き上がるのに手を貸してくれた。それから大急ぎでドアに向かったと証言した。
その男ハリー・ピークは、火事の後口髭を剃り落とし、友人に放火をほのめかす話をした。ハリーはハリウッド・スターを夢見る虚言癖が著しい人物だった。ハリーは供述をころころ変え捜査を翻弄した。状況証拠からハリーが放火犯であることは間違いないとみられたが、ふたりの宗教家がハリーと一緒にいたと証言した。この宗教者たちの証言もハリーの証言に呼応するように変わったが、起訴はされなかった。

本書は単なる火事の記録ではない。
出火原因の調査の記録、アメリカにおける図書館の歴史、ロサンゼルス市と中央図書館の黎明期から現在に至る歴史、アメリカで公立図書館が果たしている役割、世界の焚書の歴史などが、鋭い分析と明快な文章で綴られている。
著者が直接インタビューした人もしなかった人も、そしてすでに亡くなった人も、多くの人々がいきいきと登場する。
図書館がどれだけ魅力的で希望が満ち溢れている場所かを余すことなく伝え、著者の図書館への愛が行間から滲み出ている好著である。

日本とは違い地域における図書館の役割は多い。
地域で問題が起こると、図書館が利用される。工場からメタンガスが流れたとき、自宅を追い出された住民の集まる場所となった。鉛汚染が起きたとき、住民の血液検査の場所となった。
移民国家アメリカでは図書館が、福祉や教育に大きく踏み込んでいる。外国人たちの会話クラスや識字クラスが運営されている。教えるのはボランティア。電話の請求書、学校からの通知、税金関係の申請書が理解できるように手を貸し、読み書きを知らない人には個人的な手紙を読んであげ、返事を書くのを手伝うこともあるという。市民権を得る方法を週に2時間指導している。
今は、ホームレスの溜まり場になっているという。

〈図書館では時間がせき止められている。ただ止まっているのではなくて、蓄えられている。図書館は物語と、それを探しに来る人々の貯蔵庫なのだ。そこでは永遠を垣間見られる。だから図書館では永遠に生きることができるのだ。〉という言葉が印象的だ。→人気ブログランキング

『インディアンとカジノ アメリカの光と影』野口久美子

本書のキーワードは「国家の良心」である。アメリカが、アメリカ全土を所有していたインディアンとの約束(契約)を、どう履行しようとしてきたかである。

インディアンとカジノ (ちくま新書)
野口 久美子(Noguchi Kumiko
ちくま新書
2019年11月 ✳︎10

1990年代以降、カジノを建設するインディアン部族が急増した。現在240の部族が、500以上のインディアン・カジノを経営しており、およそ20年で総収益がアメリカの商業カジノの収益を上回った。インディアン・カジノは、保留地内では州の税制や法制度の適用が制限されるという経済活動上のメリットを生かした、保留地ビジネスである。
インディアン・カジノ時代は、部族がその当然の権利を行使することによって出現した、インデアン史の新しい時代であるという。真に見えてくるのは、それまでに解決されてこなかった、インディアンの圧倒的な貧困であるという。

アメリカはインディアン部族という主権国家群の土地の上に建国された国である。アメリカには、個々の部族を一つの主権国家と承認したうえで、部族から土地の譲渡を受け、その見返りに部族自治を保護するという約束がある。この方針を、インディアン史の権威ウィルコム・ウォッシュバーンは、「国家の良心」と呼んだ。

アメリカ憲法では、部族は国内依存国家という固有の政治的地位を持ち、部族に州法は適応されないこと、連邦政府が部族の政治的地位を保護する責任があることの3点が明確になった。しかし、現実は保留地に閉じ込めただけで、十分な補償は望むべくもなかったのが実情である。

国家を頼りにすることを諦めたインディアンが、貧困から抜け出そうとして考え出されたのが、タバコ産業であり、その次がビンゴ、そしてカジノである。
1977年、フロリダ南部のセミノール部族の保留地にビンゴ場の建設が予定された。1979年、ビンゴ場は予定通りにオープンした。大盛況で6ヵ月で融資を返済する大成功のビジネスとなった。
1980年、カリフォルニア州南部の部族カバゾンが、保留地内にカジノを開いた。州はカバゾン・カジノに営業停止を命じた。しかし最終的にアメリカ最高裁判所に持ち込まれ、1987年、「保留地における部族カジノは州に規制されない経済行為である」との判決が下った。
カバゾン判決以後、カジノ産業に乗り出す部族が急増した。部族は経済的自活の手段を獲得したのである。
1988年、レーガン大統領によって、「インディアン・ゲーミング規制法(カジノ法)」制定された。同法は、インディアン・カジノ産業に連邦と州がどこまで介入できるのか、どこからが介入できないかという点を明確化した。これが「アメリカ(国家)の良心」の今日的な姿であるという。

インディアン・カジノは、連邦政府の責任回避の結果である。アメリカは建国期から部族自治を尊重し、保留地を保護する責任を負ってきたはずである。この「良心」は過去200年以上もの間、司法、行政、立法の指針とされながらも、その元来の意味は有名無実化されてきた。そして、強制移住政策行われ、抵抗する部族を虐殺し、そして保留地政策が行われた。アメリカが保護責任を放棄してきた結果が、インディアン部族に圧倒的な貧困をもたらしたのは間違いないとする。

インディアンとカジノ アメリカの光と影/野口久美子/ちくま新書/2019年
インディアンの夢のあと:北米大陸に神話と遺跡を訪ねて/徳田いつこ/平凡社新書/2000年

ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史 カート・アンダーセン

なぜ、アメリカはドナルド・トランプを大統領に選出するようなとんでもない国になってしまったのか。本書はそれを解き明かすアメリカの精神文化史である。
 
2016年の大統領選が始まったときに、著者は本書を書き出して2年が経っていて、トランプが共和党の予備選で先頭に立ったのには驚きかつぞっとしたが、満足感を覚えたという。それは著者の理論が正しかったことが政治の場で証明されたからだ。大統領になるとトランプは、自分にとって不都合な報道を、すべて「フェイク・ニュース」と呼ぶようになった。大統領就任式の観衆数がメディアの発表と大幅に違った際には、オルタナティブ・ファクト(もう一つの真実)という言葉を使った。このような政治を「ポスト真実」の政治と呼ぶ。ポストには「脱」という意味があり、客観的な事実よりも個人的信条や感情が重視される政治である。


ファンタジーランド(上): 狂気と幻想のアメリカ500年史
ファンタジーランド(上): 
カート アンダーセン /山田美明・山田文


ファンタジーランド(下): 狂気と幻想のアメリカ500年史
ファンタジーランド(下): 
東洋経済新報社
2019年✳10

著者は、アメリカではトゥルーシネス(本当らしく聞こえる嘘)、つまり直感的に物事を真実だと信じることが1960年代に爆発的に広まったと見ている。エリートを嫌悪し、科学的事実を否定し、主観的に物事を判断する傾向である。やがて、この傾向は数世紀にわたって形成されてきたことに気づいたという。
 
ピルグリム・ファーザーズは、プロテスタントのうちの急進派であるピューリタンのそのまた過激な分離派ピューリタンである。著者は、アメリカは常軌を逸したカルト教団によって建設された国であると諧謔的な言い方をする。
 
アメリカは宗教国家である。アメリカ人の70%以上がキリスト教徒で、そのうち70%はプロテスタントである。アメリカ人のうち、天国の存在を信じる人は85%、地獄の存在を信じる人は75%いるという。天国や地獄を信じるということは、取りも直さず悪魔を信じることであり、その他の摩訶不思議な出来事も信じるということである。アメリカ人はどの先進国に暮らす人びとより、はるかに強く超自然現象や奇跡を信じている。

神と進化について、アメリカ人は大体、三つに区分できるという。進化論を信じている人が1/3、神が長い時間をかけ、おそらくは進化を利用して生物を創造したと考えている人が1/3弱、そして人間やそのほかの生物はこの世が始まって以来、現在の形で存在していると確信している人が1/3以上である。
 
アメリカは熱狂的なキリスト教信者と夢想家、あるいは詐欺師とそのカモによって、まるでファンタジーランドのようになってしまったという。アメリカの狂気と幻想は次のような人びとや現象によって作り上げられていったとする。それは、セイラムの魔女裁判(1692年)、モルモン教を創始した(1830年)ジョセフ・スミス、「バーナム効果」で有名な興行師のP・T・バーナム、超越主義を主張したヘンリー・デヴィット・ソロー、異言(学んだことのない異国の言葉を話すこと)、ハリウッド、サイエントロジー、陰謀論、ウォルト・デズニー、伝道師のビリー・グラハム、ロナルド・レーガン(選挙演説でハルマゲドンという言葉を繰り返し使い、政治日程を妻のナンシーが占星術で決めていた)、絶大な人気を誇るトーク番組の司会者オプラ・ウィンフリー、トランプなどである。さらに、ワクチン不要論やホメオパシー。礼賛、銃へのこだわりやドラッグ依存、カルト的プロテスタント教団の隆盛などがある。インターネットの登場は、はびこる狂気と幻想により一層の拍車をかけた。

アメリカ人が一時的に道を外しただけならいずれ正しい道に戻ってくるが、もはやこの傾向はアメリカ国民のDNAに深く刻み込まれているという。現在、トランプの支持率はおよそ40%、共和党内では9割に達する。矛盾が持つ力で最も恐ろしいのは、繰り返し矛盾に接すると、真実を重視する感覚が鈍ることだ。次もトランプだろうか?

ちなみに、トランプはドイツ系移民の子孫であり、著者の祖先はピルグリム・ファーザーズの次にアメリカにたどり着いた清教徒であるという。

ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史/カート・アンダーセン/山田美明・山田文/東洋経済新報社/2019年
食の実験場アメリカーファーストフード帝国のゆくえ/鈴木透 /中公新書/2019年
ノマド― 漂流する高齢労働者たち/ジェシカ・ブルーダー/鈴木素子/春秋社/2018年
アメリカ/橋爪大三郎×大澤真幸/河出新書/2018年
ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち/J.D.ヴァンス/関根光宏・山田文/光文社/2017
ルポ トランプ王国―もう一つのアメリカを行く/金成隆一/岩波新書/2017年
沈みゆく大国アメリカ/堤未果/集英社新書/2014年
ルポ 貧困大国アメリカII/堤未果/岩波新書/2010年
沈黙の時代に書くということ―ポスト9・11を生きる作家の選択/サラ・パレツキー/山本やよい/早川書房/2010年
アメリカン・デモクラシーの逆説/渡辺靖/岩波新書/2010年
現代アメリカ宗教地図/藤原聖子/平凡社新書/2009年
ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて/松尾理也/新潮社新書/2006年
小説のアメリカ 52講ーこんなにおもしろいアメリカン・ショート・ストーリーズ秘史/青山南/平凡社ライブラリー/2006年
古きよきアメリカン・スイーツ/岡部史/平凡社/2004年
インディアンの夢のあと―北米大陸に神話と遺跡を訪ねて/徳井いつこ/平凡社新書/2000年

『食の実験場 アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ』 鈴木透

著者はアメリカの食の歴史を3期に分けている。
第1は、イギリスの植民地時代から独立革命までのアメリカの形成期。白人入植者の食を支えたのは先住インディアンと黒人であった。第2は、19世紀後半から20世紀半ばにかけての産業社会の形成と工業国化の時期。食事に時間をかけないという発想がファーストフードの誕生につながった。第3は、1960年代以降の産業社会のあり方に対する抵抗と反省。ヒッピー文化や菜食主義者たちの影響によるオーガニックへ向かう動き。

イギリスの植民地時代、北部の白人入植者は先住インディアンの影響を受け、パンプキンパイ、コーンブレッドや七面鳥料理が生まれた。南部では黒人の影響を受けた米を使う料理が出現する。南部の家庭料理であるフライドチキンは、スパイスによる味付けは黒人から、揚げるという料理法は白人から受け継いでいる。
フランス人はミシシッピー川河口近くのニューオリンズを中心に住み着き、クレオールと呼ばれるフランス人と黒人の混血の人口が増えていった。
クレオール料理の代表はガンボーと呼ばれる雑炊のようなスープ。海産物、肉やソーセージ、トマトや玉ねぎ、豆など、あり合わせの材料で作ることが多いが、オクラでとろみをつけることが特徴的だ。米やオクラはアフリカ的だし、トマトやスパイスは先住民の影響があり、海産物を加えることはブイヤベースからきていてフランス的でもある。ガンボーは、アフリカ、先住インディアン、フランスの混血創作料理なのである。
クレオール料理のもう一つの代表ジャンバラヤは、トマト味のスパイシーなピラフで、具材はガンボー同様決まりはない。

食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ (中公新書)
鈴木 透 ✳︎10
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工業国となっていくアメリカには、1890年代から1910年にかけて、主としてヨーロッパの低開発地域から移民が大量に流入した。イタリア系やユダヤ系、北欧系などが 中心で、エスニックフードの多様性が増した。
ドイツの惣菜を扱う店デリカテッセンが普及し、ハインツ社がケチャップを開発した。
ハンバーグはドイツの港ハンブルグから名付けられた。それをパンに挟んだハンバーガーは、1904年のセントルイスでの万国博覧会で誕生したいわれている。
ドイツのフランクフルトから持ち込まれたソーセージをパンに挟んだホットドッグは、コニーアイランドの遊園地で売られた。こうしてドイツの食が野外の手軽なフィンガーフードに応用されアメリカ独自の食文化へと発展していった。
自動車時代の本格的な幕開けとともに、本来食事を取ることができない場所や時間帯に食事を可能にする新たなタイプの外食産業・ファーストフードをアメリカに作り出した。

飲み物についてもアメリカならではの特徴がある。独立革命期に生じた紅茶離れは19世紀に入っても続いた。ラム酒と紅茶を飲むことは反愛国的行為とみなされた。現在、アメリカの一流ホテルで紅茶を頼むとティーパックが出てくるという。

飲料水の確保が困難だったため、植物の根で作ったアルコール分の低いルートビアが飲まれた。医薬品であった炭酸水を瓶に詰めることに成功したのはコカコーラ社である。アメリカにおける炭酸飲料は、病人の飲み物であったことや製造に薬剤師が関わっていたこと、ドラッグストアで売られていたことから、飲む薬としての性格をもっていた。ちなみにペプシコーラの名称はペプシンという消化酵素からきている。

ヒッピーたちは、効率優先からの脱却と多様性の復権を実現する、有機農業や自然食品を追い求めた。さらにヒッピーたちは有機栽培やヘルシーからエスニックにつながっていった。そこから生まれてきたのがカリフォルニアロールである。
いまアメリカの食が向かっているのは有機栽培の野菜を使った健康食だ。創作料理の最前線ではビーガンの影響がある。

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